DIME MAGAZINE
令和5年の刑法改正により性犯罪規定に性的同意の条項が盛り込まれた。法律に定める性的同意の内容や、性犯罪に繋げないための性的同意の取り方についてまとめた。
目次
2023年（令和5年）の刑法改正により、性的同意のない性交等やわいせつ行為は「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪」として明確に処罰の対象となった。
社会通念的にも同意のない性交等やわいせつ行為が認められないことは自明だが、日本の場合、性についてオープンに話し合う場や機会が少なく、恋人同士や夫婦間でも「性的同意とは何か」「どのような例が性的同意のない状態に該当するか」「相手への性的同意の取り方」などを話し合ったことがない人も多いだろう。
本記事では、改正後の刑法を参考に法律が定義する「性的同意のない状態」とはどのようなものを指すか、恋人やパートナー、配偶者と性的関係を持つ場合の同意の取り方について解説する。
性的同意を主眼に据えた新たな法律が施行。改正のポイントは？
性的同意を条文に盛り込んだ刑法の新しい規定は、2023年（令和5年）6月16日に成立し、同年7月13日から施行された。
性的同意とは何かを考える上で、改正後に新設された「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪」における「不同意」の考え方が参考になるはずだ。
■従来の「強制性交等罪」は性的同意を重視した「不同意性交等罪」に
改正後の刑法では、「強制性交等罪」「強制わいせつ罪」がなくなり、代わりに「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪」が新設された。
従来の法律では、「暴行又は脅迫を用いて」とのみ定義されていた犯罪成立の要件は、「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪」への改正によって、同意のない性行為が犯罪であることと、不同意（＝性的同意がない状態）とは何かが、より詳しく定義されている。
■法律（刑法）が定義する「性的同意」の「ない」状態とは？
改正後の刑法では、以下の1.または2.の状態によって性交等やわいせつな行為をした場合に「不同意性交等罪」や「不同意わいせつ罪」が成立する。
1.以下のいずれかを原因として、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせること。あるいは相手がそのような状態にあることに乗じること
・暴行または脅迫
・心身の障害
・アルコールまたは薬物の影響
・睡眠その他の意識不明瞭
・同意しない意思を形成・表明・全うする時間を与えない（例：不意打ち）
・予想と異なる事態に直面しての恐怖や驚愕（例：フリーズ）
・虐待に起因する心理的反応（例：虐待による無力感・恐怖心）
・経済的または社会的関係上の地位に基づく不利益への憂慮（例：祖父母と孫、上司と部下、教師と生徒など立場ゆえの影響力によって不利益が生じることへの不安）
2.わいせつな行為ではないと誤信させること、人違いをさせること、または相手がそのような誤信をしていることに乗じること
上記に該当する状態での性交等やわいせつ行為は、法律上「性的同意が取れていない」として処罰の対象となる。
性的同意を考える上で「アウトの例」として押さえておきたいポイントと言えるだろう。
※参考：
参考資料 「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」等（概要）（法務省）【PDF】
■性交同意年齢も「16歳未満」に引き上げ
なお、刑法改正により性交同意年齢も従来の13歳未満から16歳未満へと引き上げられた。上記の、1.と2.のいずれに当たらない場合でも、相手が16歳未満の子どもである場合は、「不同意性交等罪」「不同意わいせつ罪」が適用（相手が13歳以上16歳未満で行為者が5歳以上年長の場合も適用）されるため、あわせてチェックしておこう。
普段の生活で意識したい性的同意の取り方とは
法律に触れるような行為はしたことがなくても、恋人やパートナーとの普段の生活において性的同意をどのように取ればいいのか悩む人も多いはず。
性的同意の取り方と、性的同意を取る際に活用できるツールについて解説する。
■性的同意とは何か
性的同意とは、セックスに限らず、すべての性的な行為（ボディタッチ、キス、ハグなども含む）に対して、お互いが積極的したいと望んでいるかを確認することを指す。
例えば、「一人暮らしの相手の部屋に入ったら性行為はOK」「付き合って3か月くらいしたら性行為をするのが普通」といった思い込み・決めつけにとらわれず、相手がその行為をしたいと思っているかを確認しよう。
「性的同意を取ることは相手を一人の人間として尊重する行為である」という認識を共有すること、イエスやノーをお互いにきちんと伝えられる関係性を築くことも、性的同意に含まれると言えるだろう。
■性的同意が取れているかのチェックリスト（参考：京都市男女共同参画センター）
京都市の男女共同参画推進協会では、性的同意が取れているかを確認するためのチェックリストを公開している。
以下の1.から10.のいずれかに該当する場合は、性的同意が取れていない可能性が高い。
1.二人きりでデートに行くことは、性行為を前提としている
2.キスをしたら、性行為をしてもいい
3.相手がイヤと言っていても、「イヤよ、イヤよ、も好きのうち」なので、性行為をしていい
4.相手がイヤと言ってなかったら、性行為もOKのサインである
5.酔った勢いで、性行為に及ぶのはしかたがない
6.互いに成人していれば、性行為の際に同意を求める必要はない
7.家に泊まるのは、性行為をしてもいいというサインだ
8.付き合っていれば、性行為をするのは当たり前だ
9.同じ相手に、毎回、性行為の同意を取る必要はない
10.ナイトクラブに来る人は出会いや性的交遊を求めて来る人が多いので、性行為に際して同意を取る必要はない
※引用：「性的同意を取るって、どういうこと？ チェックはいくつ入りますか？」ウィングス京都 GENDER HANDBOOK（公益財団法人 京都男女共同参画推進委員会）
■性的同意の取り方と伝え方
日本ではまだなじみが薄い「性的同意」だが、世界的には性行為の前にお互いの同意を取ることは必須であり、今後は国内にも浸透していくことが予想されるため、同意の取り方や断る場合の伝え方を覚えておきたい。
こちらから性的同意を取る際は、自分がセックスをしたいこと、相手が嫌な場合はしなくても良いことなどを伝えよう。
また、性行為を断ったら嫌われるのではないかという不安から相手が断れないケースがあるため、セックスをしなくても嫌いにはならないこともあわせて伝えられると良いだろう。
相手からの性行為の確認を断る場合は、最初に、今はセックスをしたくないという意思を伝えた上で、例えば「キスならOK」「ハグならいい」などの代替案を出すほか、愛情がないからセックスをしないのではないという気持ちを伝えるようにしたい。
性についてはっきり口にする習慣がない場合、最初はハードルが高く感じる人もいるだろうが、恋人や夫婦のコミュニーケーションの一環として「性行為への同意を取ること・取られること」「性行為を断ること・断られること」に関するスキルも身に付けられると、より相手とのパートナーシップを深められるはずだ。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文／編集部
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