
TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は、2025年4月11日、進化型GRヤリスを世界初披露した。同日より注文を受け付け、5月6日より販売を開始する。
また、東京オートサロン2025でコンセプトモデルを披露し、モータースポーツで得た知見を織り込んだメーカーオプション「エアロパフォーマンスパッケージ」を同時に発表。2025年秋以降の発売を予定している。
このGRヤリスは、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を通して生まれた、TGRのクルマづくりの象徴となるモデル。2020年9月の発売開始以降もTGRは、GRヤリスを用いてFIA世界ラリー選手権、スーパー耐久シリーズや全日本ラリー選手権など、様々なモータースポーツへの参戦を継続している。レースやラリーといった極限の環境だからこそ発生するトラブルは、GRヤリスを「もっといいクルマ」へ進化させるチャンスとなるため。
車両を限界まで追い込んでくれたドライバーへ「壊してくれてありがとう」を合言葉に、不具合発生時の走行データや操舵フィーリング、壊れた部品にどんな傷や異物がついているか、そしてその原因まで徹底的に追及し、改善を重ねることで、GRヤリスを鍛えてきた。TGRは、今後もGRヤリスでの参戦を通し、多様なドライバーとともに、GRヤリスを継続して進化させていくとしている。
進化型GRヤリスの主な特徴
■GAZOO Racing Direct Automatic Transmission(GR-DAT)の進化
2024年発表のGRヤリスで初登場した、GR-DATの性能にさらに磨きがかけられた。2ペダルならではの操作性と、走りの両立を狙い、主にスポーツ走行時のギヤ段の選択制御に細かな改良を加えることで、性能のレベルアップが図られている。
その中でもスポーツ走行時のドライバー操作に対する応答性を改良。Dレンジ走行中のパドル操作でダウンシフト可能な車速領域を拡張(2速→1速)、パドル操作から変速開始までの時間を短縮、さらにマニュアルモードではスポーツモード選択時、レッドゾーン付近でのダイレクト感を向上。スポーツ走行時の応答性を高めた。
またアクセル全開加速におけるシフトアップタイミングの最適化。エンジン回転数の上昇が遅くなる登坂勾配では、シフトアップタイミングを少し遅らせることでシフトアップ後も高出力を維持する。
■クルマとの一体感の進化
シャシー部品の締結ボルトの一部に締結剛性の高い特別なボルトを採用。ステアリング操作に対する応答性と直進安定性を向上し、クルマとの一体感を進化させた。
ボルト頭部サイズを拡幅(リヤサスペンションメンバー×ボディ)
ボルトフランジにリブ形状を追加(フロントロアアーム×ロアボールジョイント)
ボルトフランジの厚みアップ(リヤショックアブソーバー×ボディ)
■ショックアブソーバー及びEPSチューニングの最適化
「クルマとの一体感の進化」におけるボルトの変更や、その他一部のボルト類の締結トルクアップに合わせて、サスペンションセッティングを再適合。ショックアブソーバーの減衰力を調整することで、コントロールと乗り心地の両立が図られた。
また、EPSチューニングでは、ステアリングのリニア感(ステアリングを切った量に対し、1:1で操舵感が得られる感覚)の向上を目指し、プロドライバーの大嶋選手とともに何度も改善を繰り返した。
グレードごとに異なる特性が与えられており、RZ“High performance”用は、サーキットを攻め込むことを念頭に、限界域での速さとコントロール性を追求。RZ用は、ワインディングからサーキットまで幅広いシーンで極めて俊敏なGRヤリスのハンドリングパフォーマンスを引き出す。
■GR-DAT搭載車のフットレスト拡大
AT車のフットレストの面積を拡大することで、踏み込み時の操作性を向上しています。
■縦引きパーキングブレーキ 全グレードオプション設定に拡大
2024年発表のGRヤリスでは、FIA世界ラリー選手権や全日本ラリー選手権参戦で得た知見を活かした縦引きパーキングブレーキをメーカーオプションとしてRCグレードに設定してきたが、同モデルより全グレードで選択可能になった。
■Toyota Safety Senseを全車標準化
RCグレードにメーカーオプション設定としていたToyota Safety Senseを、RZ“High performance”、RZと同様に全車標準装備とした。
エアロパフォーマンスパッケージ(メーカーオプション)
妥協することなく調整を重ねた計6アイテムすべてを同時装着することで、効果を最大化するエアロパフォーマンスパッケージ。GRヤリスの冷却性能と空力性能を、さらに向上させることができる。
スーパー耐久シリーズや全日本ラリー選手権を戦っているからこそ気づけた課題に1つひとつに向き合い、プロドライバーとともに理想を追い求めた。RZ“High performance”、RCにメーカーパッケージオプションとして、2025年秋以降の設定を予定している。
■ダクト付きアルミフード
全日本ラリー選手権参戦車において先行で開発し、GRMNヤリスに採用したカーボン製フードと同形状のダクト付きアルミフードを設定。高速走行中、エンジンルーム内の熱をダクトから放出し、冷却効果を高める。
■フロントリップスポイラー
スーパー耐久シリーズで学んだ高次元の空力バランスを実現するために、フロントリフトの発生を抑え、フロントの接地感と空力バランスを高め、車両のトータルリフトバランスを向上させた。
当初はこのフロントリップスポイラーを除く5点のアイテムを検討していたが、プロドライバーの大嶋選手からのフィードバックを受け、より高次元のバランスを目指し、最終的にこのフロントリップスポイラーを追加採用することになった。
■フェンダーダクト
ホイールハウス内に溜まる空気を後方へ放出させることで、ノーズダイブ時のステアリングフィールや、コーナー入り口での操縦安定性を向上させる。
■燃料タンクアンダーカバー
スーパー耐久シリーズ参戦車両の安全燃料タンクの下部をフラット形状にするアイデアを採用。ボディ下部の空気の流れを最適化し、空力性能を高める。
■可変式リヤウイング
大型のリヤウイングは高速域での操縦安定性に寄与し、またブレーキング時のスネーキング現象を抑制する。可変式のため、サーキットなどの走行シーンに応じてウイングの角度を変え、走りを楽しむことができる。
■リヤバンパーダクト
リヤバンパーにおけるパラシュート効果を抑制し、Cd値を低減。過酷なレース条件下であるスーパー耐久シリーズの現場で、空力負荷によりリヤバンパーが外れたことを起点に、モータースポーツ特有の厳しい環境に対応するため開発された。
【メーカー希望小売価格】
RZ“High performance”(8AT) 5,330,000円(税込)
RZ“High performance”(6MT) 4,980,000円(税込)
RZ(8AT) 4,830,000円(税込)
RZ(6MT) 4,480,000円(税込)
RC(8AT) 3,910,000円(税込)
RC(6MT) 3,560,000円(税込)
【主要諸元】
全長:3,995mm
全幅:1,805mm
全高:1,455mm
ホイールベース:2,560mm
車両重量:1,280kg(GR-DAT搭載モデルは1,300)
エンジン:直列3気筒インタークーラーターボ
総排気量:1.618L
最高出力:224kW[304PS]/6,5006,500
最大トルク:400Nm[40.8kgfm]/3,250~4,600rpm
タイヤ(フロント・リヤ):225/40ZR18 ミシュラン Pilot Sport 4S
関連情報:https://toyotagazooracing.com/jp/gr/yaris/
構成/土屋嘉久