
〝光る背面〟を特徴とするスマホを展開するNothing Technologyは、設立からわずか4年という短い期間ながら、日本市場でも特徴的なデザイン、高いコストパフォーマンスから、注目を集めている。昨年発売されたNothing Phone(2a)では、おサイフケータイ機能にも対応するなど、日本ローカライズにも積極性を見せている。
スケルトンデザインを踏襲しながらサイズ&強度アップ
そんなNothingは、最新端末「Nothing Phone(3a)」を発表。すでに予約を開始しており、4月15日に発売となる。SIMフリー(オープン市場)向けモデルは、メモリ8GB+ストレージ128GBモデルが5万4800円、メモリ12GB+ストレージ256GBモデルが5万9800円と、近年のミドルレンジスマホとしては、手に入れやすい価格が注目だ。
加えて、Nothing Technologyとしては初となるMNO取り扱いとして、楽天モバイルでも取り扱われる。楽天モバイル限定カラーも用意されており、合わせて初めてeSIMにも対応することで、販促力を強めている。では、最新端末の魅力についてまとめていこう。
Nothing Phoneシリーズの最たる特徴が、背面のスケルトンボディ。今回もデザインは踏襲されており、独創的な配置のLEDライトも引き続き採用された。ただし、カメラが3眼レンズになったことで、Nothingらしいデザインに落とし込むのには工夫が必要だったとのこと。また、背面素材がガラスになったことで、本体強度が向上している。
ディスプレイは6.77インチで、前モデルから大型化。時代の流れに沿ったアップデートともいえるだろう。本体サイズはアップしており、質量は約201gと比較的ヘビーだが、薄型化されているのに加え、コーナーに丸みが付いているため、全体的にシャープにまとめられている印象を受ける。そのほか、ディスプレイはフルHD+の有機ELで、最大輝度は3000ニト、リフレッシュレートは120Hzとなる。
本体カラーは、ブラック、ホワイトの2色に加え、楽天モバイル限定でブルーが展開される。ブラック、ホワイトは従来のNothing Phoneらしさがあり、スケルトンデザインと相まって、メカニカルな印象だが、ブルーは一味違う、ポップさとメカっぽさの融合がいい。ブルー狙いで、楽天モバイルの契約をしても、個人的には後悔しないと感じているほどだ。
5万円台のミドルレンジスマホとしては異例の3眼カメラを搭載
Nothing Phone(3a)は、5万円台で購入できるスマホながら、超広角カメラ、望遠カメラを含む、3眼構成のカメラを有するのも、1つの大きな特徴だ。他社製品を見ても、一桁万円で、望遠カメラを持つスマホは、ほとんど見かけないため、お買い得感の強い仕様といえる。
具体的なカメラスペックとしては、メインカメラと望遠カメラが5000万画素、超広角カメラが800万画素となる。望遠カメラは2倍光学ズーム、4倍インセンサーズーム、30倍ウルトラズーム(デジタルズーム)に対応しており、多様な撮影パターンが楽しめるように進化。UXも、Nothingらしいシンプルさは維持しながら、よりクリエイティブな人でも楽しめるように、細かな設定ができるようにアップデートされている。
近年のハイエンドスマホの中には、有名カメラメーカーとコラボするなど、とにかくカメラ機能にこだわり抜いた製品もある中、Nothing Phone(3a)は、そこまで極端に機能を突き詰めているわけではない。とはいえ、近年はミドルレンジモデルにおいても、機能のベースが向上しており、〝普通に〟きれいな写真が撮影できる。
色味もパキっと表現されており、スマホらしい、しっかりとAI補正のかかった、見栄えのする写真が撮影できる。メインカメラには、光学手ブレ補正と電子手ブレ補正、望遠カメラには、電子手ブレ補正が搭載されているので、夜景撮影などにも使いやすい。
望遠カメラを使った際、フォーカスが若干合いにくいシーンがあるのが、使っていて少々気になったポイント。2倍光学、4倍インセンサーズームでも、メインカメラとそん色のない、きれいな写真が撮影できるだけに、長く使っていると、微妙にストレスを感じる部分かもしれない。
直接のカメラ機能ではないが、新たにNothing Phone専用の写真アプリが実装されているのも特徴。こちらもNothingらしいシンプルなデザインになっているので、メーカーファンは待望といえるかもしれない。
Nothing OS 3.1を搭載! 新搭載の「Essential Space + Key」は今後に期待
初期搭載OSはNothing OS 3.1。従来モデルと同様に、Android OSをベースとしたものを搭載しており、シックなデザイン、独自のフォントが使える。わかりにくさを感じるシーンもあるが、意思を持って統一されたデザインは、他のメーカーにはない魅力がある。
Nothing Phone(3a)の特徴に、電源ボタンの下に搭載された「Essential Key」がある。これは、ボイスメモやスクリーンショット、メモなど、日常的にスマホに残すちょっとしたタスクや、「あとでこれをやろう」という記録を、「Essentia Space」という場所にまとめて残すというもの。さまざまな方法で記録を残すと、各アプリに記録が散らばってしまうため、これを「1か所にまとめてしまおう」という発想からなる。
近年のスマホは、最先端のAI機能を搭載し、パーソナライズ化、ユーザー個人のアシスタント化を目指すものが多い。Essential Spaceは、AIに頼り切った機能ではないが、発想としては、スマホをアシスタントとして便利に運用できる期待感がある。
一方、こういった独自機能は、「結局いままで使っていたアプリのほうが使いやすい」という評価を下されるケースもある。特に近年のメモ、ボイスメモ、写真といったデータは、アカウントと紐づけられ、クラウドで共有できるものが多いため、PCやタブレットともシェアして確認しやすいという魅力がある。Essential Spaceには、この壁を突破する使い勝手が求められるというわけだ。
個人的には、Essential Spaceを使わないとできない、特別便利な〝なにか〟を求めたくなっているが、独創的なデザインから、熱量の高いファンが多いNothingだけに、Essential Spaceを使い倒し、Nothingのシステムにどっぷりとハマるユーザーが出てくる可能性も感じられる。何より、実装されたばかりの新機能なので、今後のアップデートにも期待したい。
安価なミドルレンジスマホでも日常使いは快適なNothing Phone(3a)
冒頭でも触れた通り、Nothing Phone(3a)には、メモリ8GB+ストレージ128GB、メモリ12GB+ストレージ256GBの2モデルがある。昨今のスマホとして、ストレージ128GBは少々物足りなさを感じるが、ミドルレンジスマホとして、価格を抑えるための構成と考えれば、納得感はある。
搭載チップセットはSnapdragon 7s Gen 3 5G。ミドルクラスのチップセットだが、普段使いには問題ないスペックで、軽いゲームアプリ程度であれば、安定して動作する。
バッテリーは5000mAhで、50W急速充電に対応。そのほか、おサイフケータイ機能やeSIMにも対応しており、日常使いをするスマホとして、どんどん洗練されてきている印象を受ける。
このように、実機を触りながら構成を確かめていくと、Nothing Phone(3a)のコスパに驚かされるシーンが多い。カメラ機能、処理性能がその最たる例だろう。比較的低価格で提供をしながら、独自のデザインやOS、Essential Spaceといったチャレンジングな機能を搭載しており、スマホ市場をかき回してくれる存在としてのワクワク感がある。
楽天モバイルでの取り扱いにより、いよいよ本格的に日本市場で存在感を示しだしたため、今後さらに躍進していく可能性もあるだろう。端末の良し悪しとプロモーションによる知名度アップは、必ずしも比例しないが、コスパを武器に、より広くNothingの名が知れ渡っていくことに期待したい。
文/佐藤文彦