
任天堂の新型ゲーム機『Nintendo Switch 2』が2025年6月5日に発売される。公開情報を見る限りでは、2世代前の『Wii U』から『Nintendo Switch』のような大きな世代交代ではなく、性能を強化した正統進化型のモデルという印象だ。その背景にある任天堂の意図、そして『Nintendo Switch 2』がゲーム業界で果たす可能性とは。
Switchユーザーを手放さないための正統進化
『Nintendo Switch(Switch)』が2017年3月に発売されて以来、実に8年ぶりの後継機となる『Nintendo Switch 2(Switch 2)』。その詳細が公式配信「Nintendo Direct: Nintendo Switch 2」で発表された。商品名に含まれた〝2〟というナンバリングが示す通り、基本コンセプトは『Switch』を継承しており、モニターサイズや解像度、処理性能といった本体性能が大きく強化されている。まさに正統進化といえる内容だ。
任天堂のゲーム機といえば2006年発売の『Wii』や『Switch』のように斬新なコンセプトが注目されることが多かった。そうしたイメージからすると、『Switch 2』の方向性は地味に見えるかもしれない。しかし、60分におよぶ紹介動画や、公式サイトに掲載された「開発者に訊きました」の開発者インタビュー記事からは、ただの正統進化にとどまらない、任天堂の明確な意思が感じられる。
まず驚いたのが、『Switch』のタイトルを『Switch 2』でも遊べるように、1タイトルずつ動作確認を行なっている点だ。中にはグラフィックの向上や新要素を加えた「Nintendo Switch 2 Edition」として再登場する作品もある。これまでにも『Wii』と『WiiU』のように互換性を持たせた例はあったが、互換性の無い新機種でここまで丁寧に対応するのは異例だといえる。
動作検証では、1タイトルごとにゲームの起動から実際にゲームをプレイして確認しているそうだ。
この方針をとった背景には、コロナ禍の巣ごもり需要で急増した『Switch』ユーザーをできる限り引き止めたいという狙いがあるのだろう。コロナ禍に突入した2020年当時、『Switch』は発売からすでに3年が経過していたが、そのタイミングで新たに購入したユーザーの多くは、普段あまりゲームをしないライト層だった。複数のゲームハードを渡り歩く経験が少ないライト層にとって、操作感が大きく変わる新型機は、購入のハードルになりかねない。
見た目や使い勝手がほぼそのままで、かつ旧作も遊べる『Switch 2』は、ライト層にとっても買いやすいハードだといえる。
過去の失敗から学んだ「ソフトの初速」重視の姿勢
「Nintendo Direct: Nintendo Switch 2」を生配信で見ていた筆者の率直な感想は「紹介タイトル多すぎ!」だ。紹介されたローンチタイトルは移植タイトルを含めて18本。これは据え置き型ハードとして過去最多であり、60分の放送時間の大半がタイトル紹介に費やされたことからも、任天堂の本気度がうかがえる。
これは、かつて『Wii』から『Wii U』へ移行した際の苦い経験を踏まえた対応とも考えられる。『Wii U』のローンチタイトルは10本と『Wii』の16本に比べると少なかった上、発売以降のタイトル展開も乏しく、なかなかキラータイトルに恵まれなかった。
今では信じられないが、『Switch』発売直前の公開情報では、名作と名高い『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をはじめとしたローンチタイトルに加え、ハードの売上に貢献してきた複数の大作タイトルも告知されていた。しかし、それでも市場の反応は冷ややかなものだった。それほど『Wii U』の不振は任天堂のブランドに大きく影響を与えていたといえる。
今回の発表ではとにかく「遊べるゲームが豊富」であることが強調されていた。スタートダッシュの重要性を強く意識した内容で、同じ轍は絶対に踏まないという任天堂の意思が感じられるものだった。
22年ぶりの新作となった『カービィのエアライダー』は、桜井政博氏がディレクターを担当することで話題になった。
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