
咋年12月、JR東日本は中長期ビジネス成長戦略を発表。その中で、Suicaのセンターサーバー化計画を公表した。これにより、タッチ&ゴーに代わる新方式の改札の導入や新しいSuicaアプリの開発が発表された。
新Suica構想
具体的には、自動改札機でのタッチ動作が不要のウォークスルー改札、位置情報等を活用した改札の2方式が今後開発される。JR東日本によると、これらはそれぞれ別のもので、前者は都市部など利用者の多い駅で導入される見込み。顔認証やBluetooth、超広帯域無線通信のUWBといった技術の利用が検討される。
後者の位置情報等を活用した改札は、利用者の少ない駅での導入が想定され、改札機のない駅でもシームレスな入出場が可能になる。これ以外にも、マイナンバーカードとの連携や運賃が割引となるサブスク商品の導入などを視野に入れている。この新Suica構想の着地点について、JR東日本広報はこう答える。
「あらゆる世代が利用できる生活のデバイスとして、個々に応じた体験価値を創造し、〝心豊かな生活〟を実現することがSuicaのゴールです。鉄道をはじめとした移動、買い物のための決済だけでなく、地域の生活に必要なものをすべてSuicaで実現することで、DXされた当たり前の日常を提供していきたいと考えております」
気になるのは、構想を実現するうえで欠かせない「個人情報の保護」である。これに関してJR東日本は、Suica利用者の移動情報をまとめたレポート『駅カルテ』から個人が特定できる情報を排除し、個人情報を利用されたくない人へのデータのオプトアウト対応などを徹底するという。
「今後、タッチしない改札において位置情報データを活用する場面では、入出場に必要なデータのみ取得するなど利用目的の達成に必要な範囲での取得と利用を予定しています」とJR東日本広報。
7~8年前からすでに構想されていたというSuicaの大改革は今後10年以内に順次着手されていく。
【DIMEの読み】
ウォークスルー改札の技術方式に関する模索・検討はこれから。1日の乗降者数世界一の新宿駅や池袋駅などで新改札が有効に機能するか否かは、今後の実証実験を通して判断されるだろう。
未来のSuicaはタッチ不要!
改札前でSuicaを取り出す手間や、改札のない駅での入出場管理の煩わしさが一気に解消される、新Suica構想の目玉改革。ただし、〝タッチしないSuica〟の普及がいつ頃になるかは未定だ。
マイナンバーカードとの連携で行政サービスがもっと身近に
各地域に根差したサービス「ご当地 Suica(仮称)」を2028年にリリース予定。マイナンバーカードと連携し、行政申請や給付金の受け取りなどがSuica上でできるしくみに。
Suicaの利用データを活用すればあらゆる生活が「自動化」される!?
利用者の移動や生活スタイルをデータベース化できるのはSuicaならでは。これを活用すれば、旅行時に新幹線の到着タイミングでタクシーを呼んだり、帰宅時に合わせてお風呂を沸かしておいたりすることもできる。ついに近未来の生活が実現するかもしれない。
取材・文/澤田真一 編集/井田愛莉寿 ※イラスト提供:JR東日本