
読者の皆様は、177が3月31日でサービスを終了したことはご存じだろうか?
177、これはNTTの天気予報サービスである。ネットがない時代、リアルタイムの天気予報をチェックするにはこの177しか手段がなかった。もちろん、今は違う。天気予報アプリというものが登場し、我々はいつでもどこでも天気を確認することができるようになった。
今回はリニューアル間もない『tenki.jp』アプリのサブスクプラン『tenki.jpライト』に加入し、その使い勝手を試してみたい。177の終了を不安に感じる人もいるかもしれないが、現代のアプリがその補完をしてくれるのか……という検証が今回のテーマである。
複雑な気候を抱える島国・日本
日本列島は、極めて複雑な地形を有する地域である。
したがって、同じ本州でも太平洋側と日本海側とではまったく気候が異なる。たとえば、筆者の住まいでもある静岡県は「雪が降らない」ことで有名だ。山間部へ行けば降雪もあるが、平野部で雪が降ることは確かに稀である。
しかし、静岡県という場所は複数の工場を抱えている。東京や名古屋が大雪に見舞われると、静岡県下の物流が停止してしまうのだ。
そのような理由から、静岡に住まいを持つと静岡の天気だけでなく東京、名古屋、人や携わっている業種によっては山梨や長野の天気予報を同時にチェックしなければならない。
というわけで、ここは文明の利器を大いに活用してみよう。
「プッシュ通知」は心強い親友
tenki.jpライトは3月26日から『tenki.jpライトプラン』に代わって導入されたプランで、月額180円で利用できる。
このサブスクプランの特典は、以下の通り。
・現在地の雨雲の接近プッシュ通知
・天気予報の地点を20ヶ所まで登録
・広告の非表示
・新しい機能のアーリーアクセス
筆者が最も気になるのは、やはり「現在地の雨雲の接近プッシュ通知」だ。
筆者は一時期、バックパッカーとしてインドネシアに沈没していたことがある。この時の生活で特に驚いたのは、「インドネシアのニュース番組では天気予報コーナーがない」という点。画面下の右から左に流れる表示には各地の天気予報が飛び込んでくることはあるものの、それをわざわざニュースとは違うコーナーを組んで報じることはない。
インドネシアの気候は、日本人の目から見れば実に大まか。乾季になれば雨はほとんど降らず、雨季でも午前中にスコールがやって来るというもの。その上、台風は来ない。天気予報をチェックしなくとも、特に困らないのだ。
しかし、日本の気候はそうではない。午前中に一時雨、その後は晴れ間が見えるものの夕方5時から再び小雨が降り、そこから翌日明け方にかけてだんだんと雨足が強くなる……という具合の繊細な移り変わりだ。日常的にバイクに乗っている筆者にとって、tenki.jpのプッシュ通知はもはや日常に欠かせないものとなってしまった。
最大20ヶ所の天気予報をチェックできる
また、天気予報の地点を20ヶ所まで登録できる機能も非常に心強い。
筆者は地元の他、東京と名古屋と大阪、そして18歳まで過ごした神奈川県相模原市の天気もチェックできるよう地点登録している。スワイプひとつでそれぞれの地点の天気を比較でき、またこのアプリのUIは非常に見やすく文字通り「一目で」天気を把握することができる。
1時間前の状況から48時間後の予報まで閲覧できる雨雲レーダーも、アプリの利便性に華を添えている。これからの行動計画を立てる上で、雨雲レーダーは必要不可欠。これだけ繊細な天気予報アプリが配信されている日本に生まれてよかった! と心の底から感じるほどだ。
そして、tenki.jpライトはサービスを終えた177を大きく上回る情報量を我々に提供してくれるということは、改めて言うまでもないだろう。残念ながら、177はその意義や歴史的使命を完全に終えてしまったのだ。
天気予報に全振りする国民
終戦後の日本は、天気予報の精度向上に巨額の資金を投じた稀有な国である。
日本人は気象レーダーやアメダス、スーパーコンピューターだけでなく、ひまわりという名の気象衛星を開発し、それを打ち上げるためのロケットも作ってしまった。他国では軍事レベルに相当する精度の気象情報を、日本人は民間向けに開放している。「気象衛星なんて税金の無駄遣いだ!」などという声は、少なくとも筆者は一度も聞いたことがない。世界最先端の気象観測システムの構築と発展に膨大な金を投じ、またそれに対して国民の多くが理解を示している……というより、「当然」と考えているのだ。こんな国は他にはないだろう。
新興国では今、「農地に設置できるポータブル気象観測ステーション」を取り扱うスタートアップが続々登場している。これは農地のある場所の天候や気温を正確にモニタリングし、収穫量の増大につなげようというコンセプトの事業だが、言い換えれば個人では正確な天気予報を得ることが難しい国や地域が多く存在するということだ。
日本は世界一と言っても過言ではない気象観測システムを備えた国。それ故に、日本製の天気予報アプリはiOSにプリインストールされている天気アプリよりも遥かに情報が豊富で、しかも見やすい。この分野では、外資の出る幕はないと言ってもいいだろう。
詳細な情報を提供してくれる天気予報アプリは、これから始まるGWの行楽には欠かすことのできないものである。
【参考】
tenki.jpライト
文/澤田真一
NTTの「177」が終了!70年続いた天気予報サービスが幕を閉じる理由
70年の歴史を持つNTTのテレホンサービス「177 天気予報サービス」が、2025年3月31日で終了する。 インターネット世代なら「あぁ、そんなサービスもあった...