
ここ数年の猛暑を受け、厚生労働省では、2025年6月1日から事業者に対して熱中症対策を義務化する。熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、状況に応じ、迅速かつ適切に対処することで、熱中症の重篤化を防ぐのが狙いだ。
「WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で連続1時間以上または1日4時間以上の実施」が見込まれる作業が対象となる予定。
対策を怠った場合は、6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられる可能性もある罰則付きであることからも、国を挙げての熱中症対策への本気度がうかがえる。
そんな暑い季節を少しでも快適に過ごせるようにと、「ワークマン」から世界初となる着る方が涼しい「XShelter」が登場した。どれくらい涼しいのか新製品の展示会で体験してきた。
熱中症の4大リスクを軽減する「XShelter 暑熱軽減ウェア」
世界初の暑熱軽減構造の素材を使用した「XShelter 暑熱軽減ウェア」
熱中症対策は喫緊の課題だということはわかるが、なにをどのように取り入れるべきなのか、事業者のみならず、自分自身や家族についても手探りという人は多いだろう。
「ワークマン」では、地球温暖化により災害級の猛暑が続く中、少しでも熱中症患者を減らすため、「日本赤十字看護大学付属災害救護研究所」の災害対策スペシャリストの知見も取り入れ、開発を行っている。
普段着が防災製品を兼ねることを考慮し誕生したのが、「XShelter 暑熱軽減ウェア」だ。昨年秋に発売した「XShelter」同様、災害時にエアコンが使用できない環境下でも熱中症のリスクを軽減できるという世界初のウェアだ。いわゆる作業用のアイテムだけでなく、普段着用のパーカーやキッズウェアも展開する。
XShelter 暑熱軽減ウェアについて説明する株式会社ワークマン 専務取締役 土屋哲雄さん。
「秋冬に出したXShelterとは、糸から異なっていて、1から開発したシリーズです。2年の年月をかけて、熱中症の4大リスクである気温・湿度・輻射熱・風に対応できるよう、14の機能でカバーする新素材で、世界初になります。」(土屋さん)
断熱機能と気化熱機能のある2本の糸を撚って使用したり、UVカット効果のためカーテンなどに使用されているのと同じ酸化チタンを配合したりするなど機能満載でありながら、風が吹くと飛んでいきそうなくらい薄く、軽いアイテムがラインアップされている。
「冬物は20万着完売しました。通常のアイテムは、2万点程度製造しますが、このシリーズは自信があるため、春夏は、47万点作ります。」(土屋さん)
キッズ用なども含め約10アイテムと型数が多いとはいえ、強気の生産と言えるだろう。UVカット効果は、以前からほとんどのアイテムに施されていたため、声高に言ってこなかったそうだが、世の中がUV効果と言い始めたため、消費者に分かりやすいようUVについては、グレード分けして表記している。
外の環境からシェルターのように我々を守るという「XShelter」シリーズ。着たほうが暖かいというのはイメージしやすいが、着たほうが涼しいというのは、どのような感覚が気になり体験コーナーに足を運んでみた。
暑熱体験ルームで「XShelter」を体験
暑熱体験ルーム内は45度超え。
まずは、暑熱体験ルームへ入り、温度と感覚を体験。LEDフィラメント電球48灯と100V250Wのハロゲン電球8灯を使用したルーム内の温度計は、45度あたりであることを確認。
猛暑の屋外以上の温度設定ではあるが、長時間作業をしているとこれくらいの感覚かもしれない。焼けこげるのではないかという暑さだった。
XShelter 暑熱フーディー 3色展開 サイズ:S/M/L/LL/3L 2,900円(消費税込み)を着用して体験ルームへ。
一旦、外に出て、「XShelter 暑熱軽減フーディー」を着用。汗をかいた想定で、左側の袖に水のミストをかけて、再びルーム内へ。
ライトの方を向いていると顔が暑かったため、背中を向けて両手を広げて立ってみると、ミストをかけた左腕の方が涼しく感じる。これと同じように、暑さで汗をかいたときには気化冷却で涼しく感じるそうだ。
暑さは軽減されても「涼しい」というのは大げさではないか?と思ったが、フードをかぶると、驚くほど暑さを感じなくなった。頭って、こんなに暑くなるのだと改めて実感。しかも、着用している感覚がないほど薄くて軽い。この薄さで遮熱性の高さにも驚いた。
デジタルサーモメーターで計測すると腕の部分の温度が低いことがわかる。
新素材の14の機能
新素材のもつ14の機能の説明と体験コーナー。
「XShelter 暑熱軽減フーディー」を体験後、世界初という新素材の14の機能がどのようなものなのか学べるコーナーへ。ワークマンラボのスタッフが、体表面温度の変化や汗をかいた場合の持続冷感の結果について説明してくれた。
表側には、外部エネルギーを軽減化できる特殊酸化チタン融合ポリエステル糸を採用し、紫外線や近赤外線から守り、衣服内を快適にする。
裏側には、多層疎水性ポリプロピレン糸を使用することで、内部の水分を拡散し、気化冷却により生地の温度を下げるという。
汗をかくことでマイナス9度とは、かなり暑さが軽減されることがわかる。透湿度、肌離れ、速乾性や紫外線カットのほか、UVチェッカー機能もあり、紫外線を浴びていることを「見える化」して、自分自身や子どもの熱中症対策にも役立つ。これは、助かるシーンが多いのではないだろうか。
「着る冷凍庫」もさらに進化
昨年も人気だったペルチェベスト PRO2が進化して登場。価格は、昨年と同じ19,800円(消費税込み)
着る方が涼しいという意味では、昨シーズンも人気だった「着る冷凍庫」と呼ばれている「ペルチェベスト PRO2」が、さらに進化していた。
ベストについている冷却プレートが3か所から5か所に増え、バッテリーパワーはそのままに小型化し、フル充電で3時間弱使用可能。
ワークマン史上最多の5つのペルチェが搭載されている。
重々しい見た目だが、着用すると意外にも重さを感じない。バックルで調整するだけでなく、肩にあるダイヤルムービングアジャスターでペルチェの位置調整ができ、より体にフィットした。屋外での作業やレジャー時に、涼しく過ごせそうだ。
「前のペルチェを外せば、ゴルフのときも使えますよ。」(土屋さん)
確かに、クラブを構えたときに前方のペルチェは気になるかもしれないが、体験コーナーでは、「このままでも気にならないかも。」との声も聞かれた。フィット感があり、見た目以上に違和感がないということだ。
ちなみに、ペルチェの表面温度は、マイナス約3度から約49度まで設定可能で、寒いときにはヒーターに早変わりする冷暖房服だ。
ビジネスシーンにも取り入れられるアイテムも
(右)XShelter 暑熱半袖ポロシャツ 4色展開 サイズ:M/L/LL/3L 1,900円(消費税込み)/(左)XShelter 暑熱ショートパンツ 3色展開 サイズ:M/L/LL/3L 2,500円(消費税込み)
オフィスでのクールビズ化もあり、カジュアルスタイルで出勤できる企業も多い。ビジネスシーンでも着られる暑熱半袖ポロシャツなども展開され、通勤時の酷暑対策にも役立つ。
そんなデイリーに活躍するだけでなく、災害時にも活用できる防災製品でもある「XShelter 暑熱軽減ウェア」は、日本気象協会推進「熱中症ゼロへ(R)」プロジェクト公式アイテムだ。今夏も猛暑予報のため、熱中症対策は必須と言えるだろう。対策アイテムのひとつとして、「XShelter」シリーズはチェックしておきたい。
ワークマン
https://workman.jp/
取材・文/林ゆり