
一過性脳虚血発作や軽症脳卒中後10年間は脳卒中リスクが高い
一過性脳虚血発作(TIA)や軽症脳卒中を経験した後は、少なくとも10年間は本格的な脳卒中の発症リスクが高いままであることが、新たな研究で明らかになった。カルガリー大学(カナダ)のFaizan Khan氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に3月26日掲載された。
米国脳卒中学会(ASA)によると、TIAは脳への血流が一時的に途絶え、神経症状が生じる状態を指す。通常、閉塞の原因となる血栓は自然に溶解するか除去され、症状は短時間で治まる。
TIAが恒久的なダメージを引き起こすことはないが、脳卒中を発症する前兆である可能性はあるという。TIAの症状は、体の片側の脱力、しびれ、麻痺、ろれつが回らない、他人の話を理解できない、片目または両目の視力障害、めまい、激しい頭痛などで、脳卒中の症状に似ている。
今回の研究では、TIAまたは軽症脳卒中経験者を最低1年以上追跡して脳卒中リスクについて検討した38件の研究を対象に、TIAまたは軽症脳卒中経験者における脳卒中の年間発生率および最長10年間の累積発生率が評価された。解析対象者の総計は171万1,068人(年齢中央値69歳、男性の割合の中央値57%)だった。
解析の結果、TIAまたは軽症脳卒中発症後、最初の1年間の脳卒中の年間発生率は100人年当たり5.94件、2年目から5年目までは1.80件、6年目から10年目までは1.72件であると推定された。また、5年間と10年間の脳卒中の累積発生率は、それぞれ12.5%と19.8%だった。
研究グループによると、TIAまたは軽症脳卒中後90日間は脳卒中リスクが高いことを示した研究結果に基づき、現行の診療では脳卒中後90日間に焦点が当てられているという。Khan氏は、「われわれにとって驚きだったのは、90日を超えてもリスクが高いままであることだ。
二次予防クリニックのほとんどが、TIAや軽症脳卒中の発症後、最初の90日間だけ患者を追跡していることを考えると、本研究結果により、この高リスク状態の持続に対する関心が高まることを期待している」と語った。
論文の上席著者であるカルガリー大学医学部のMichael Hill氏は、「これらの結果は、医師が、TIAや軽症脳卒中をより深刻な脳卒中の警告サインとしてとらえるべきことを示唆している。今こそ、このことに注意を払って適切な対策を講じ、それを維持すべきだ」と語っている。(HealthDay News 2025年3月28日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2832005
構成/DIME編集部
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