
ウェザーニューズは、2025年3月31日までのスギ・ヒノキ花粉の飛散状況と最新見解をまとめた「第五回花粉飛散予想」を発表した。強い寒波によって飛散の始まりが遅れ、症状は西ほど「つらい」人が多い傾向にあるなど、同社リリースをベースに、その概要をお伝えする。
第五回花粉飛散予想
■現在の飛散状況:西からヒノキ花粉の飛散が増加、東北ではスギ花粉が本格飛散
現在、九州から東北でスギ・ヒノキの花粉が飛散している。九州から関東ではヒノキ花粉が本格的に飛散しており、北陸の一部や長野ではスギ花粉の飛散が減少して、ヒノキ花粉の飛散が増えてきている。
東北ではスギ花粉が本格的に飛散している状況で、北海道のシラカバ花粉はまだ飛散が始まっていない。
■今後の飛散予想:西・東日本では4月中旬までヒノキ花粉が本格飛散
今後は、まず九州から関東では4月中旬までヒノキ花粉の本格飛散が続く予想だ。東北南部ではスギ花粉が減少し、まもなくヒノキ花粉の飛散量が上回る見込み。
スギ花粉に比べると総飛散量は少なくなるが、4月下旬にかけてヒノキ花粉が本格的に飛散する見通しだ。東北北部ではスギ花粉の本格飛散が4月下旬まで続く予想となっている。
これからシラカバ花粉の飛散シーズンを迎える北海道では、4月下旬以降に各地でシラカバ花粉が飛び始める。本格飛散は道南や道央で4月下旬から5月上旬、道北から道東では5月上旬から中旬で、ちょうどゴールデンウィークと重なる見通し。5月下旬には飛散量が少なくなる見込みだ。
今シーズンの飛散状況について
■飛散時期:強い寒波で遅い飛散開始、3月に入って一気に飛散ピーク
2025年は1月下旬から3月にかけて気温の変動が大きく、スギ花粉の飛散開始もその影響を受けた。1月下旬は暖気が流れ込み、西・東日本で気温が平年より高くなり、この暖かさの影響で福岡県や三重県、静岡県で平年(※1)より10日以上早くスギ花粉の飛散が開始した。
※1 花粉飛散の平年:2015〜2024年の過去10年平均
2月に入ると断続的に強い寒波に見舞われ、日本海側を中心に大雪となる日があった。2月上旬は寒気の影響で西日本を中心に気温が平年を下回った日が多かったため花粉はあまり飛散せず、2月中旬に一時的に寒さが緩んだタイミングで九州や四国、関東を中心に飛散開始となった。
暖気が流れ込み全国的に季節先取りの暖かさとなった2月下旬から3月上旬には近畿から東海、北陸、東北の広いエリアでスギ花粉の飛散が始まり、既に飛散が開始していたエリアでは本格飛散シーズンに突入。飛散開始は東日本で平均3日程度、西日本では平均5日程度、平年より遅くなった。
その後3月中旬にかけて断続的に暖気が流れ込み、2月下旬以降に飛散開始となった近畿や東海、北陸、東北でも3月中旬までに本格飛散シーズンに入り、飛散のピークを迎えた。
今年は気温の変動が大きかった影響で、飛散開始から本格飛散開始までの期間(日数)の地域差が大きくなった。飛散開始が早かった福岡県や三重県、静岡県では20〜30日程度だった一方で、広島県や福井県、宮城県などでは飛散開始の翌日に本格飛散開始となっている。
なお、平年は飛散開始から本格飛散開始までは1週間程度かかるが、今年は全国平均(北海道除く)で9日程度だった。
飛散時期による花粉症の発症時期への影響を調べるため、スマホアプリ「ウェザーニュース」で調査(※2)を実施したところ、「例年通り」と答えた人が最も多く53%、次いで「早かった」が32%、「遅かった」が15%。2024年と比べると、「早かった」は9ポイント減少し、「例年通り」は5ポイント、「遅かった」は4ポイント増加した。
※2 スマホアプリ「ウェザーニュース」にて「今年の花粉症、症状が出た時期はどう?」と質問し(選択肢:“早かった”“例年通り”“遅かった”“花粉症ではない”)、“花粉症ではない”の回答を除いて集計(調査日:2025年4月5日、回答数:9962)。
今年は気温の変動が大きく、急に暖かくなる日があれば、急に冷え込む日もあるなど、気温が安定しない日が続いた。この気温の不安定さが、スギやヒノキの花粉の飛散開始時期やピークに影響を与え、結果として花粉症の症状が出始める時期にも個人差が生じたと考えられる。
■飛散量:西日本を中心に前年比で大幅増、東京都など関東南部は2月の低温の影響で前年比減
ウェザーニューズ独自の花粉観測機「ポールンロボ」による観測では、2025年2月1日から3月31日までの全国の花粉飛散量は前年同時期の138%となった。特に前年の飛散量が少なかった西日本では全域で前年を大きく上回り、福岡県では500%を超えている。
一方、東北では前年を下回った地域が多くなった。前年の飛散量の反動が今年の飛散量に反映された結果と考えられる。
関東南部では飛散量が前年を下回り、東京都の飛散量は前年の64%だった。2月の寒波の影響で飛散開始および本格飛散のタイミングが遅れた影響によるものと考えられる。
花粉症の症状のつらさはどうだったのか、スマホアプリ「ウェザーニュース」のユーザーから寄せられた症状報告を集計した(※3)。
※3 スマホアプリ「ウェザーニュース」の「花粉飛散情報」において、2025年2月1日~3月31日に花粉症のユーザーから寄せられた症状報告(のべ90,739通)のうち、“とてもつらい”“つらい”の回答を合計して割合で表示
集計の結果、エリアごとで異なる傾向が見られた。症状がつらいと感じた人の割合を2024年と比較すると、東北北部は減少した一方で、北陸・長野や中国・四国、九州では約10ポイント増加しており 、花粉症の人にとって過酷な春となったようだ。
期間全体の花粉飛散量は、特に西日本を中心に2024年より多く、症状がつらいと感じる人が多かったと考えられる。関東南部は前年比で飛散量が少なくなったが、症状がつらいと感じた人は前年と同程度だった。
今年は強い寒波の影響で飛散開始が遅れ、対策を開始する時期も難しいシーズンだったと考えられる。
関連情報
https://weathernews.jp/pollen/
構成/清水眞希