今や生活になくてはならない通信だが、5Gのさらに先にある『Beyond 5G』では、どのような社会が実現するのか。そんな少し先の未来を、ひと足早く体験できるイベント『Beyond 5G ready ショーケース』が、大阪・関西万博にあわせて開催される。
5Gの先に見据える『Beyond 5G』とは何か?
イベントの詳細を紹介する前に、まずは『Beyond 5G』について紐解いていこう。
『Beyond 5G』とは、5G の先にある、次世代の情報通信基盤であり、2030年代の暮らしを支える重要なインフラである。従来の移動通信(無線)の延長線上で捉えるのではなく、有線・無線や陸・海・空・宇宙等を包含した統合的なネットワークの事を指す言葉だ。
様々なAI やデータセンターなどを連携させて、多様なユーザーと場所を問わずにつなぐことが可能になる、「低遅延」・「高信頼」・「低消費電力」の通信基盤だ。
今後のAI社会において、あらゆる産業や社会活動の基盤になるものであり、2030年代の暮らしを支える重要なインフラと考えられていて、国や様々な企業により、その実現に向けた技術開発が行われている。
「Beyond 5G」が支えるAI社会の未来像
今、急速に発展を遂げているAIは、2030年代には社会のありとあらゆるところに、ごく当たり前に活用されているだろう。
たとえば人手不足が深刻な物流業界では、AIを駆使して効率化を進めるとともに、自動運転やドローン、ロボットを活用した無人化を目指している。また医療分野では、高解像度なライブ映像とロボットによる遠隔手術が可能になるほか、ウエアラブルセンサーでのバイタルデータの取得や、それをもとにしたAI診断が身近なものになる。
さらに農業では自動走行の無人トラクターやドローン、土木、建設の現場では重機の遠隔操作が普及。これまで熟練者の技術や経験に頼るほかなかった領域も、AIによって、多くの人に開放される可能性がある。
来るべきAI社会では、PCやスマートフォンのようなデジタルデバイスだけでなく、センサーやロボット、ドローン、自動車まで、ありとあらゆるものがAIにつながり、様々な情報が瞬時に処理されて、反映される。
一方で現在、生成AIをはじめとするAIはその多くが大規模データセンターで処理されていて、増大する消費電力などの課題がクローズアップされている。AI社会を実現するには、データセンターの分散や、省電力化を実現しつつ、オール光ネットワーク(APN)やHAPS、衛星通信などの新しい技術を用いて、物理的な距離にかかわらず、シームレスかつ確実に安全につながる環境が必要不可欠だ。そのための次世代情報通信基盤こそ、『Beyond 5G』というわけだ。
大阪・関西万博会場で期間限定の体験イベントを開催
『Beyond 5G』は、これからAI社会を生きる私たちが今知っておくべき、重要なキーワードと言える。とはいえまだ目の前にないものだけに、どれだけ説明されてもそれを具体的にイメージするのは難しいだろう。そこで「百聞は一見に如かず」である。
2025年5月26日(月)~6月3日(火)まで、大阪・関西万博会場で開催される『Beyond 5G ready ショーケース』はまさに、『Beyond 5G』を実際に見て、体験できる、絶好のチャンスだ。
大阪・関西万博会場内のEXPOメッセ「WASSE」《North》に設けられる、『Beyond 5G ready ショーケース』の特設会場では、次世代の情報通信『Beyond 5G』がもたらす未来社会や最先端の技術を、大きく3つのゾーンで体験することができる。
3つのゾーンに分けられた『Beyond 5G ready ショーケース』特設会場のイメージ。
ゾーン1のプロローグシアターでは、通信の歴史から『Beyond 5G』がもたらす未来への変遷を、没入感ある180度スクリーンで紹介。またゾーン2では、『Beyond 5G』を構成する技術や、実現する世界の一端を体験できる。
以下に紹介するのが、ゾーン2で体験できるコンテンツの一部だ。
「リモートムーンオペレーション」
VRゴーグルを装着し、地球から月面基地のロボットを遠隔操作して、月面作業を行う。リアルタイムのような遠隔作業体験ができる没入型体験ブース。
「HAPSリカバリー」
成層圏の無人航空機を利用して、上空から広範囲にわたる通信サービスを提供するHAPS。災害によって通信が途絶した地域に、HAPSを操縦して通信の復旧を行う作業が体験できる。
「オーシャンクリーニング」
海中ロボットを地上から遠隔制御し、海洋環境を維持する体験ができるシアター型体験ブース。
さらにゾーン3には、オール光ネットワークや無線アクセスネットワーク、空飛ぶ基地局HAPS、水中・海洋での無線通信等、『Beyond 5G』を構成する様々な開発中の技術が展示され、最先端の技術とそれらの今後の展望について、詳しく学ぶことができる。
未来を先取りできる、貴重な機会を有効活用しよう
『Beyond 5G ready ショーケース』は大阪・関西万博会場内のEXPOメッセ「WASSE」《North》にて、2025年5月26日(月)~6月3日(火)まで、期間限定で開催される。大阪・関西万博へ行くなら、この機会にあわせて足を運ぶことをおすすめする。
なお、2025年5月26日(月)~10月13日(月)まで、オンラインで体験できる、バーチャルイベントも展開される。大阪・関西万博会場と共通のコンテンツを、一部バーチャルでも体験することが可能だ。PCやスマホからブラウザ一つで簡単にアクセスできるので、こちらもあわせてチェックしたい。
AIがさらに社会に浸透する2030年代、産業は、暮らしは、どのように変貌を遂げているのか。そんな未来を紐解く『Beyond 5G』を実際に体験できる、数少ない機会をぜひ有効に活用してほしい。
文/太田百合子