
2024年よりDIMEにて連載中の「マンガでわかる生成AI」の原作を担当している、アステリア株式会社、および生成AI協会(GAIS)のエバンジェリスト 森一弥です。
本コラムは読者の皆さんにとって身近な生成AIツールや新機能を、実際に森が触ってみてご紹介するコーナー。前回取り上げたのは、Googleの「NotebookLM」でした。まだご覧になっていない方は、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね!
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中国発の汎用AIエージェント「Manus」とは?
さて、生成AI関連のニュースを日頃から見ていると、中国系の企業やオープンソースプロジェクトの活躍に目を見張るようになってきました。
高機能なサービスが多いのかな? と思う一方で、会社で使うにはセキュリティなどのリスクも考えなければなりません。
そんな微妙な感じではあるんですが、今回は「Manus(マヌス)」を取り上げてみたいと思います。
2025年3月に発表されたばかりですが、ネット上では「AGI(※汎用人工知能:人間のように自律的に判断して課題解決するAIのこと。まだ実現されていない技術)」にだいぶ近づいているんじゃないかと話題になっているんです。
Manusは、ユーザーからの依頼を受けると、Manus自身がタスクに分解して、実行計画を立て、順番にこなします。Manusはこれを「汎用AIエージェント」と呼んでいます。
例題として挙がっている「ユースケースギャラリー」をみると、旅行の計画や、株価の分析、保険の比較などができるようです。
無料で試すことができるのですが、招待コードをもらうかウェイトリストに登録して待たないと使えないので、まだ触ったことがない人も多いはず。
実際、私もダメ元でウェイトリストに登録してみたのですが、次の日には使えるようになったので、試してみるハードルは高くはありません。
「Manus」ウェイトリストに登録する方法
出典:「Manus」Manus AI ~ トップページの「Manusを試す」からウェイトリストに登録
ウェイトリストに登録するには、メールアドレスと自分が使用したいユースケースの入力が必須です。
ユースケースはそこまで詳細に書く必要はないと思いますが、最新技術を無料で試させてもらえるわけですし、嘘を書いたり「ああああ」とかで埋めるのはやめましょう。作っている方たちをリスペクトして使いたいものです。
入力してからしばらくすると、許可されたメールが届きます(私は翌日ぐらいに届きました)。メールに記載されたリンクからサービスを使います。
「Manus」を実際に使ってみた
出典:「Manus」Manus AI ~ ログイン後の初期画面
ログインした初期の画面はChatGPTなどと同様で、入力欄が大きく表示されています。ここにManusに依頼したい内容を書き込むと、自律的に判断して色々とやってくれます。入力欄の右下には星型のアイコンとともに「1000」と書かれていますが、スマホゲームでもよくある「スタミナ」みたいなものですね。
Manusでは「クレジット」と呼んでいますが、これは無料で使える回数に関連する数字で、依頼内容に応じて消費されます(1000回依頼できるわけではありません)。
早速、なにか依頼してみましょう! ということで、家族でゴールデンウィークに行く海外旅行について計画してもらうことにしました。30代の両親と、小学生の子どもの3人という想定です。
出典:「Manus」Manus AI ~ バックグラウンド実行に伴ってブラウザへの通知許可が求められる
プロンプトを入力すると、ブラウザの通知許可がポップアップされ、バックグラウンドでの作業が可能なことが表記されました。Manusへの依頼は即時回答されるわけではなく、時間をかけて丁寧に調べてくれるため、常に開いている必要はなく、終わった際に通知してくれます。Manusに依頼をかけて、ちょっと仕事の休憩をするのも良い使い方かもしれません。
出典:「Manus」Manus AI ~ タスク実行中の様子
ブラウザを閉じずに進めてみると、Manusが自分で判断して、台湾旅行の基本情報を調べ始めました。
ネットを検索している様子が伺えます。どうやら検索キーワードは「台湾 ゴールデンウィーク 気候 天気 5月」のようです。検索キーワードをManus自身で作り、日本のゴールデンウィークが5月であることも理解した上でリサーチを進めてくれているようです。天候や入国審査、通貨や時差など、旅の基本情報もしらべてくれました。
その後、Manusから質問が来ました。
ブラウザを閉じていたらどういう動作になったのかはわかりませんが、特に訪問したい観光スポットや興味について聞かれました。「台湾といえば、故宮博物館かな?」と考えて「博物館に興味があります」と伝えてみます。
出典:「Manus」Manus AI ~ タスク中に質問されることもある
すると、Manusが引き続き調査を続行してくれました。どんなタスクを行っているのか? どんな手順で行っているのか? は、画面を見ていれば確認できます。
実は途中でエラーが発生した旨のメッセージが表示されて不安になったんですが、そのまま進んでくれました。基本情報の調査から、旅行計画書を作成するまで、8つのタスクをこなし、PDFで21ページの結構なボリューム感のあるドキュメントが、およそ30分弱かかって完成しました。
出典:「Manus」Manus AI ~ 出力結果はMDとPDFでダウンロードできる
出来上がった旅行の計画書は、マークダウン形式のファイルか、PDFでダウンロードすることができます。中身を見ると、旅行計画以外にも、簡単な中国語の挨拶や、観光スポット、グルメ情報なども載っています。イメージが分かるような写真は網羅されていませんでしたが、情報量だけ見ると、ガイドブック級です。
「Manus」で生成した結果を検証してみた
生成AIで作成したものは「ハルシネーション」と呼ばれる、事実と異なる情報が入り込んでしまうことがあります。というわけで今回は、アステリアで働く台湾通のTさんに、実際にManusが生成した内容についての意見を聞いてみました。
Tさん
ネット上での口コミがよく、人気のあるスポットで7日間の行程をぎゅうぎゅうに組み立てる、ということに集中してる感じですね。各スポットを抽出する視点などは素晴らしいですが、このスケジュールで活動したら2日で息切れすると思います!
子供が疲れやすい、行列でスムーズに店に入れないこともある、みたいなことは考慮されていないので、どうしても余白がない。そのあたりはもう少し質問を重ねればブラッシュアップされるかも。台北はとても雨が多いエリアなので、もし雨だった場合はどうする? とかの案も出してくれたらベストです。
なるほど。調査は優秀だけど、計画をまとめるには現実的じゃない部分もあるようですね。確かにガイドブックに書かれているところを全部網羅する計画なんて、なかなか無理がありますもんね。
さて、今回の台湾旅行の計画のプロンプトを実行し終わると、クレジットは「551」になってました。つまり、この調査で「449」クレジット消費したことになります。
これくらいの調査だと無料で2回実行できる程度ということになります。
執筆時の2025年4月現在、ベータ版の表記がありますが、有料版だと月額39ドルからです。
出典:「Manus」Manus AI ~ 有料版の価格(2025年4月現在)
今回は Manus を使って、旅行計画を立ててみましたが、いかがでしたでしょうか。
汎用AIエージェントの用途は色々と考えられますし、今後精度や性能の向上はどんどんあると思います。サンプルの「ユースケース」を眺めてみてみるのも何かのヒントに繋がるかもしれません。
アイデアや気づき、思わぬ発見などあるかもしれませんよ?
さすがにビジネス活用はリスクを考慮する必要があるとはおもいますが、プライベートで利用し確かめてみてはいかがでしょう? 新しい技術に積極的に触れてみるのも、きっと良い刺激になるでしょう。
森 一弥(もり かずや) https://twitter.com/dekiruco
アステリア株式会社 ノーコード変革推進室 エバンジェリスト。 テレワーク推進の波に乗り、某有名SFアニメの聖地である箱根に移住。アニメや漫画、甘いものとかっこいいクルマをこよなく愛す、気ままな技術系エバンジェリスト。 AIやブロックチェーンなど先端技術とのデータ連携を得意とし、実証実験やコンサルティングの実績も多数。見聞きしたことは自分でプログラミングして確かめた上でわかりやすく解説することが信条。 現在は AI や IoTなどの普及啓発に努め、生成AI協会(GAIS)のエバンジェリストとしても活動中。