
@DIME読者の皆さんは4月9日に開業した大注目の施設「虎ノ門ヒルズ グラスロック」にもう足を運んだだろうか? 虎ノ門ヒルズの再開発事業完結編ともいうべきグラスロックだが、編集部が特に注目したいのが「magmabooks」だ。丸善ジュンク堂書店が“新スタイルの書店”と位置付ける「magmabooks」に、さっそく迷い込んでみよう!
コンセプトは「知は熱いうちに打て。」本好きが本好きに進める編集型書棚に注目!
「本が売れない」との出版界からは嘆き節は日増しに高まるばかりだが、手に取ってページをめくるアクションは他に変えがない、そう感じる人はまだまだ多い。雑誌から出発した『DIME』もまた、書店やコンビニ店頭で、皆さんをワクワクさせ続けているのだから。
出版と同様、本や雑誌との出会いの場である書店もまた、変化を求められている。独自の提案性や人が集う場所としてのホスピタビリティをまるごと含め、シン・ショテンの姿が模索されているのだ。
「magmabooks」はそんな現在地点における、丸善ジュンク堂書店からのひとつの回答として生まれた書店である。
コンセプトは「知は熱いうちに打て。」。つまりは、知的好奇心による欲望に正直であれ、そしてその正直さにまっ正直に応える書店であれ、ということだろう。
「magmabooks」はグラスロックの2~3階に展開する。2階は本との出会いを探索できる「知の森 – Forest of Knowledge」とされ、過去~現在~未来のそれぞれを指し示す書籍がテーマごとに並べられる。入口直後のラックにある、さまざまな「問い」をしおりに記した「問い散歩」という仕掛けも、本棚の森を巡る仕掛けとして用意している。
問い散歩の栞とテーマが掲げられたフラッグ。栞片手にフラッグを探しつつ本に出合う、という趣向だ。
たとえば、「地球は何かの実験場なのか?」という問いに対しては『敗者の生命史38億年』『誕生・進化・流転の全記録地球史マップ』『AI2041 人工知能が変える20年後の未来』が提案されている。この問いは丸善ジュンク堂書店社員が担っており、定期的に更新される。「本好きが本好きに進める編集型書棚」と言えるだろうか。
この「知の森に迷い込んだ」ような2階にくらべると、3階はおなじみの「書店」だ。本はきちんとジャンルごとに並べられ、「この本が欲しい」と決まっている人には利用しやすい。新刊や話題の本、ビジネスや自己啓発など、虎ノ門というエリアらしい単行本がずらり並べられるし、意外? それとももちろん? だが、マンガやコミックスも扱う。ただしスペースは限られるため、やはり話題のものが厳選されて置かれる。
2~3階をつなぐ階段にも作家たちの言葉がデコボコと踊る。われらが江戸川乱歩先生の「うつしよは夢 世の夢こそまこと」も。
「magmabooks」の本以外のトピックというと、ギャラリースペース「magmaspace」と、創造力のための集中とリラックスを追求した空間「magmalounge」がある。後者は没入する「FOCUS」(区割りワークスペース)と緩和する「CALM」(靴を脱いで上がる薄暗がりの瞑想スペース)が用意されており、利用は1時間あたり1800円から各種利用メニューがある。利用者はドリンクやスナックがフリーとなるあたり、蔦屋書店の「SHARE LOUNGE」を連想する人もいるだろう。
「magma」について丸善ジュンク堂書店の野村育弘取締役 は、
「フツフツと知的欲求が沸いてくるイメージからの命名です。ここに来て本と出会うことによって、人の潜在意識が引き出される、そんな場になればと思って作り上げました。まだわれわれ自身が手探りで進めている段階ですので、これからも変わってゆくと思います」。
本の森に迷い込む
特に2階のテーマ配列は丸善ジュンク堂書店が「やりたかったこと」そのものなのだろう。デコボコに続く本の迷い道くねくね。通常の書店棚や図書館棚のタテヨコまっすぐな並びとは全く異なる、カーブをもったオーガニックな書棚に本が収まる。先が見えず一見不便に感じるが、実はカーブがあると視覚が広がり、より背表紙が目に入る、つまり本の認知につながるのだという。
「本じゃないといけないと思う人が利用しているのが今の書店。新刊や実用書を求める一般利用者に加え、先の「本好き」の方たちのニーズに叶うコンセプト書店が、ここmagmabooksです」(野村取締役)。
オープンしたばかりのmagmabooksには文具・雑貨コーナーもあり、いささか総花的に見えなくもないが、今後変化してゆくための「はじめの一歩」の段階であるが故だろう。丸善ジュンク堂書店としても手探りなのだ。
書店は本を買うために利用する道具である。しかしmagmabooksは、利用するためのトリセツがない書店でもある。“本好き”を自認するアナタからまず、【magmabooksの本の森】に迷い込んでいただきたいぞ!
〇店舗情報
https://www.toranomonhills.com/gourmet_shops/6835.html
文/前田賢紀