
3月、筆者は長年使い続けていたiPhone SE2から16eに機種変更した。
16eはApple Intelligenceを利用できる機種で、多くのテクノロジーメディアはその角度から16eをレビューしているようだ。しかし、筆者がこの16eを初めて手に取って驚愕したのは内蔵スピーカーである。筆者の鈍感な耳でも、SE2との明確な違いを聞き取ることができる。それほどのパフォーマンスなのだ。
これ、もしかしたらBluetooth接続の外部スピーカーなど必要としないのでは……?
「自宅にプレーヤーを置かない時代」が到来
筆者が中学生の頃は、音楽といえばCDで聴くものだった。MDは既にあったが、それはどちらかといえばポータブルプレーヤー向けの製品だった。
もしかしたら、自室にデュアルスピーカーのCDプレーヤーがあった筆者はその面で恵まれていたのかもしれない。ただし、それから何十年も経った今では大きなプレーヤーなど部屋のどこにも置いていない。プレーヤー自体がスマホに集約されてしまい、スマホ内蔵のスピーカーだけで音楽を聴いたり動画を視聴したりすることもザラだ。
ただ、iPhoneにしろAndroid機種にしろ「スマホに内蔵のスピーカー」ではいささか貧弱という現実も。だからこそ、Bluetoothで接続する外付けスピーカーが続々開発されているのだ。
しかし繰り返すが―—iPhone 16eに関しては外付けスピーカーなど必要ないかもしれない。SE2を5年も使ってきた筆者にとっては、そう思えるくらいに素晴らしいサウンドなのだ。
“バード”の演奏を16eで聞いてみた
YouTube Music派の澤田がとりあえず検索したのは、アルトサックス奏者のチャーリー・“バード”・パーカーの定番曲『Billie’s Bounce』。
バードは35年にも満たない短い生涯の間に、ジャズそのものを「少人数で作る芸術」にした男である。
それまでのジャズは、大人数のバンドが楽譜通りに音を奏でるスタイルだった。が、そのような既成音楽に飽きた者がライブハウスの閉店後に「最初は楽譜通りに演奏するが、あとはコード進行だけを守った“自由な演奏”を行う」というルールを作った。それが現代のモダンジャズにつながるビバップジャズの始まりだ。
その中心人物のひとりがバードだった。
が、同時に彼は15歳の頃からヘロインを常習していた。これは本人が秘密にしていたことでも何でもなく、むしろバードの天才的演奏を聴いた者が「ヘロインは音楽の才能を開花させてくれる。バードがそれを証明している!」と間違った解釈をしていたほどだ。
バードが肺炎で落命した際、検視した医師は彼を60代の老人だと思い込んでしまったという。
そんなバードの息遣い、リズム進行をよく確認できる『Billie’s Bounce』を16eで聴いてみると、彼のサックスだけでなくベースとドラムが曲を下支えしていることがわかる。それがバードのサウンドをさらに昇華させている。「そんなの当たり前じゃないか」と言われそうだが、SE2で同じ曲を聴くとベースとドラムが何十mも後方にいるように聞こえてしまうのだ。
SE2のスピーカーは「ペラペラの紙」だが、16eのそれは「立体模型」である。そのくらいの差があると断言してもいいだろう。
『映像の世紀』の音楽を堪能
さらに筆者は、Amazon Prime VideoでNHKの『映像の世紀バタフライエフェクト』を視聴してみた。もちろん、これもSE2と16eの聴き比べである。
『映像の世紀』自体、挿入曲に相当なエネルギーを注いでいる番組である事実はこの検証で改めて確認することができた。他の回と主題が大きく被っている回、主題とはあまり関連性のないエピソードを引き延ばす回も少なくないが、一方で音楽が大きく関係する回はいずれも良作である。
16eでそれらを視聴してみると、目より先に耳が映像に反応する。この番組の音楽担当は、本当に良い仕事をすると画面を見ながら感心してしまう。……てか、我が家のテレビ(もうすぐ購入から20年を迎えるロートル)よりもいい音を出すんじゃないか16e!?
機種変大成功!
残念ながら、16eの内蔵スピーカーのパフォーマンスを伝えているメディアは筆者の調べた限り少ない。やはり、「音」という文章では描写の難しい要素を伝えなければならないからだろう。
しかし、同業者の仕事に口を出すわけではないが―—それは非常にもったいない!
人類は、常に音楽と共にある。それはAIが大進化を遂げた今でもそうだ。音楽は、我々の生活と切り離すことはできない。「生活に密着したレビュー記事」を書くとしたら、やはり音楽は無視できない要素なのだ。
このスピーカー性能は、音楽を聴く以外にもカーナビ代わりとして16eを利用する場面でも大いに重宝するはず。ナビ音声をはっきり聞き取ることができれば、それが安全運転に直結するからだ。
賛否両論ある16eだが、筆者は心の底から「機種変してよかった!」と叫びたい。
文/澤田真一
Apple Intelligenceか?Geminiか?どんどん便利になる「AIスマホ」の活用術
「AIスマホ」なるものが普及しているようだ――。 ガジェットマニアではない一般市民は、現状をそのように認識しているだろう。しかし、AIを使ったプラットフォームや...