
ハイエンドスマホが年々、着実な進化を遂げているのはいうまでもない。近年はAI機能で各社がしのぎを削っているが、多くのユーザーにとって、程よい機能性と、価格のバランスに優れるのは、ミドルレンジクラスのスマホだろう。
特に昨今は、半導体不足や物価上昇、円安といったさまざまな要素から、ハイエンドスマホの値上がり率には、目を見張るものがある。これまで上位モデルをチョイスしてきた人の中にも、そろそろミドルレンジスマホに乗り換えることを検討している人もいるはずだ。
数年前のハイエンドモデルから、最新ミドルレンジスマホへの乗り換えは、個人的にはありだと考えている。技術の発展により、ミドルレンジスマホのベースが向上しており、「これくらいで十分」といえるモデルが増えているのも、乗り換えを推奨する追い風となっている。
ミドルレンジスマホとしては、いわずとしれた人気シリーズであるiPhoneからは、新たに「iPhone 16e」が発売されたばかり。従来のiPhone SEシリーズとはコンセプトが若干異なり、販売価格も上がったが、ミドルクラスの端末として、アップルの体験を提供するという意味で整えられた端末となっている。
一方、Androidスマホのミドルレンジスマホとして、人気を博しているのが、Google Pixel Aシリーズ。4月16日には、最新の「Google Pixel 9a(以下Pixel 9a)」が発売される。従来通り、上位モデルとそん色ない処理性能やAI機能を備えることから、今回も注目の1台だ。
本記事では、そんなPixel 9aの魅力や特徴を、iPhone 16eと比較しながら検証していく。
Pixel 9aでもデザイン刷新! ミドルレンジスマホは持ちやすさ重視の時代
Pixel 9aは、従来のPixelシリーズで採用されていたカメラバーのデザインを刷新し、出っ張りの控えめなカメラユニットを採用している。ディスプレイサイズは6.3インチで、比較的小さめになっているため、持ちやすさに秀でたデザインが魅力だ。
控えめなカメラという意味では、iPhone 16eも共通になっており、ディスプレイは6.1インチ。本体サイズ、厚みは、若干Pixel 9aのほうが大きく、分厚いが、極端な違いではない。握りやすい程度のサイズ感で、使いやすさを重視すると、6.1~6.3インチ程度に収まるのだと思わされる。
Pixel 9aのディスプレイは、シリーズ史上最も明るく、前モデル比で35%アップした、最大輝度2700ニトとなる。最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートを備えているのも特徴。iPhone 16eどころか、iPhone 16ですら、リフレッシュレートは60Hzにとどまっており、常時表示ディスプレイにも非対応(Pixel 9aは対応)していることを考えると、ディスプレイスペックとしては、Pixel 9aのほうが優れているといえる。
そのため、動画視聴やアプリゲームだけでなく、SNSやWebページのスクロールといった、ちょっとした動作であっても、上位モデルとそん色ない滑らかさを感じられるのが、Pixel 9aの特徴となる。
また、本体カラーはPixel 9aがIris(新色)、Peony、Porcelain、Obsidianの4色、iPhone 16eはブラック、ホワイトの2色展開となる。ブラック、ホワイトといったシンプルなカラーリングが売れ筋であるのは否定しないが、選択肢が用意されているのは純粋にうれしく思う。
上位モデルとそん色のないAI機能を廉価モデルにも搭載
Pixel 9a、iPhone 16eに共通する大きな特徴が、上位モデルとそん色ないAI機能が利用できる点。Pixel 9aでいえば、グーグルのGemini、iPhone 16eでは、4月より日本語対応したApple Intelligenceが、ほぼフル機能で使える。
アップルのApple Intelligenceは、他社から実装が遅れ、周回遅れ気味ではあるものの、これからのスマホにおいて、AI機能は切っても切れない、重要な競争軸。グーグル、アップルの両社が、ミドルレンジ端末においても、自社AI機能を実装しているのは、それぞれが持つAIプラットフォームのユーザーを獲得していくための競争をしているためともいえるだろう。
Pixel 9aでは、音声でGeminiと会話ができるGemini Liveや、消しゴムマジック、かこって検索、通話スクリーニングといった、多数のAI機能が利用可能。これまでPixelシリーズに搭載されてきたAI機能がしっかりと搭載されている。
いまさらではあるが、個人的に多用しているため、改めて紹介したいのがボイスレコーダーでのリアルタイム文字起こし機能。会議や説明会といったシーンで、ワンタップするだけで、会話内容を自動的にテキスト化してくれるため、重宝している。
専門用語、固有名詞などの認識は難しい部分があるが、それでも日本語の精度は体感で8割~9割程度と非常に高い。物珍しさから使うのではなく、「AIが便利だから使う」というステージまで仕上がっている印象だ。
iPhone 16eで使えるApple Intelligenceには、Siriや作文ツール、ジェン文字やImage Playgroundなどがある。Pixelと比べると、エンタメよりの、生成AIとしての機能も多い印象で、使い手を選ぶ機能も多いが、通知の要約や優先通知など、さりげなくユーザーをサポートしてくれるAIも豊富に用意されている。
執筆時点(2025年4月上旬)では、Apple Intelligenceが日本語に対応して間もないこともあり、グーグルのAI機能にアドバンテージがあるように感じるが、パーソナライズ化こそがAIの魅力でもあるように、使っていくうちに、ユーザーの情報を蓄積していき、適したサポートができるようになっていくと考えられる。
いずれにせよ、AIはまだまだこれから成長の余地がある領域であるため、早くからミドルレンジスマホでも、フル機能が利用できるという意味で、Pixel 9aとiPhone 16eの存在意義は大きいだろう。
ミドルレンジスマホでもカメラ性能には大きな違いがある
Pixel 9aは48MPのメインカメラと、13MPの超広角カメラを搭載。Pixel Aシリーズとしては初となる、マクロフォーカスを搭載している。一方、iPhone 16eのアウトカメラは、48MPのシングルレンズだ。
どちらも、Pixelらしい、iPhoneらしい写真の撮影ができ、AIによる補正も強く入る。AF速度も速く、安定しているため、サッときれいな写真が撮影できるのが特徴だ。夜景やポートレートといった特定のシーンにも強く、汎用性の高い、スマホらしいカメラだと感じる。
仕上がりは、Pixel 9aは青み(白み)が強く、iPhone 16eは赤みが強い。シリーズに共通する特徴ではあるが、Pixel 9aは、ご飯を撮影すると、鮮明ではあるが、派手さがなく、あまり映えない印象もある。とはいえ、画質は好みの分かれるところなので、深く考えなくてもいい部分だろう。
48MPカメラを使い、光学相当の2倍ズームも、両モデルで利用できる。ミドルレンジスマホであるために、望遠カメラは非搭載だが、高精細な2倍ズーム撮影ができるため、よほど望遠カメラにこだわりがなければ、多くの人が満足できるはずだ。もちろん、AI補正を使い、2倍以降のデジタルズームでも、ある程度きれいな写真が撮影できる点も、無視できないポイントだ。
となると、違いはやはり超広角カメラの有無となる。Pixel 9aの超広角カメラは13MPということもあり、メインカメラと比較すると画質は落ちるが、ゆがみも少なく、使っていて不満を感じることはない。
超広角カメラは、集合写真を撮る際や、風景を広い画角で撮影したいシーンに重宝する。近年は、ミドルレンジクラスのスマホにおいても、超広角カメラが非搭載のモデルをあまり見かけないこともあり、iPhone 16eを使っていると、どうしても物足りなさを感じてしまうのも事実だ。Pixel 9aの超広角カメラは、iPhone 16eの存在が相まって、よりありがたみが出ているとも感じる。
自社開発チップを搭載しているけど性能は?
Pixelシリーズ、iPhoneシリーズの共通点に、自社開発チップセットを搭載している点があげられる。Pixel 9aにはGoogle Tensor G4、iPhone 16eにはA18 Bionicが採用されている。
Google Tensorシリーズは、ベンチマークスコアを追求するのではなく、グーグルのAI機能を過不足なく使用することにこだわられたチップセットとなっており、処理スピード的には、最上級とはいえない。そのため、普段使いにおいてはストレスを感じないものの、ヘビーなアプリゲームなどには不向きだと感じる。
A18 Bionicは、iPhone 16とほぼ同じ仕様になっており、高性能といえる仕上がり。iPhoneシリーズ特有の〝最適化〟のおかげもあるが、アプリゲームなども基本的にはサクサクと快適に動作する。ここは、スマホの使い方によって、使用感が分かれるポイントだろう。
販売価格には約2万円の違い
それぞれの公式ストアでの販売価格は、Pixel 9aが7万9900円~、iPhone 16eが9万9800円~となる。いずれもストレージは128GBスタートとなっているため、Pixel 9aが約2万円安いといって差し支えないだろう。
そもそものOSが違うため、直接価格で比較するべきではないのかもしれないが、ミドルレンジスマホにおいて、2万円という違いは大きいように感じる。特に256GBモデルを選んだ際、Pixel 9aは9万4900円に収まるのに対し、iPhone 16eは11万4800円と、10万円をオーバーしてしまうので、どうしても選びにくさを感じてしまう。
逆にとらえれば、Pixel 9aは、7万9900円スタートながら、2眼カメラや最新のAI機能を、コンパクトで持ちやすい筐体にうまくまとめられており、なかなかお買い得なスマホだと感じる。グーグルのサービスを享受するという意味でも、Pixel 9aは、スマホデビューや他社スマホからの乗り換えにぴったりな端末だろう。
文/佐藤文彦