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トランプ大統領の交渉術「マッドマンセオリー」が世界経済を動かす理由

2025.04.12

2025年4月3日、ホワイトハウスでの演説を経て、トランプ大統領は突如として「トランプ関税」を発表しました。この政策は、全世界の国・地域に一律10%の関税を課すとともに、アメリカとの貿易黒字が大きい国々に対しては、非関税障壁を含む上乗せ措置を適用するというものです。世界中で大きな議論と市場の混乱が巻き起こっています。

そこで今回はトランプ関税に軽く触れながら、トランプ大統領が採用しているとの見方もされる「マッドマンセオリー(狂人理論)」の概念と、その戦略がどのようにして世界経済の動向に影響を及ぼすのかに焦点を当てて解説していきます。

マッドマンセオリーの理論的背景

【計算された「狂気」の演出】

「マッドマンセオリー(狂人理論)」とは、指導者があえて自らを予測不能かつ危険な存在として演出することで、相手に「この人物は本気で破壊的な行動に出るかもしれない」という恐怖心を抱かせ、交渉を有利に進めようとする戦略です。古くは、リチャード・ニクソン大統領が冷戦期に採用した外交戦略に端を発し、核兵器の使用をほのめかす発言などで相手国に不安を与え、譲歩を引き出そうとした事例が知られています。

この戦略の本質は、実際には計算されたものであり、突発的な行動の裏側には綿密な戦略が隠されています。指導者は、自身の発言や行動をあえて常軌を逸したものに見せかけ、相手に「一体何が起こるかわからない」という不確実性を強く印象づけるのです。こうした「計算された狂気」は、交渉相手にとってリスクが大きすぎると判断させ、最悪の事態を避けるために譲歩させる効果を狙っています。

【トランプ大統領とマッドマンセオリー】

トランプ大統領は、その予測不能な発言や行動でしばしば国際社会に衝撃を与えてきました。SNSでの突発的な発言や、記者会見での強硬な姿勢、さらには突然の政策転換といった手法は、まさにマッドマンセオリーの典型的な要素を備えています。彼は「アメリカを守るためには、相手国に恐れを抱かせることも必要だ」と繰り返し主張し、その結果、相手国は「トランプ大統領の次の一手が読めない」という不安とともに交渉に臨むことを余儀なくされるのです。

こうした戦略は、短期的にはアメリカ国内の産業保護といった成果を上げる可能性がありますが、同時に国際社会との信頼関係を大きく揺るがすリスクもはらんでいます。特に、今回のような大規模な関税措置は、各国が自国の利益を守るために対抗策を講じるきっかけとなり、結果として世界経済全体の不確実性と不安定さを助長する恐れがあるのです。

マッドマンセオリーが世界経済に与える影響

【金融市場の反応と不安定化】

トランプ大統領が突如として大規模な関税を発表したことは、即座に世界中の金融市場に波紋を広げました。株式市場では主要指数が急落し、為替市場においてはリスク回避の動きが強まり、各国通貨の変動が激しくなっています。投資家たちは、今後の米国の強硬な貿易政策が新たな貿易摩擦や対抗措置を引き起こすのではないかという懸念から、資産の安全性を確保するためのポジション調整を急いでいます。

このような市場の混乱は、トランプ大統領のマッドマンセオリー的アプローチがもたらす「予測不能なリスク」に起因していると考えられます。投資家は、交渉の行方や各国政府の反応が読めない状態に不安を覚え、短期的な資産売却や安全資産へのシフトが進む結果、金融市場全体のボラティリティが増大しているのです。

【国際貿易とサプライチェーンへの影響】

今回のトランプ関税は、特に日本をはじめとする主要貿易国に大きな衝撃を与えています。日本に対しては24%という非常に高い関税率が設定されるため、日本企業は輸出入の見直しやサプライチェーンの再編を余儀なくされる可能性が高いです。これに伴い、製造業やハイテク産業、さらには自動車産業など、多くの企業が生産拠点の再配置や新たな輸送ルートの模索を進める必要に迫られるでしょう。

また、関税措置が広範に適用されることで、世界中で貿易摩擦が一層激化する懸念もあります。各国は自国の産業保護のために、報復関税や非関税障壁といった対抗措置を打ち出す可能性があり、これが連鎖的に広がると、国際貿易全体の停滞を招くリスクが高まります。結果として、グローバルなサプライチェーンが混乱し、各国の経済成長に悪影響を及ぼすことは避けられない状況です。

【政治的緊張の高まりと国際信頼の低下】

マッドマンセオリーは、短期的には相手国に対する強いプレッシャーを与える効果があるものの、長期的には国際社会との信頼関係を著しく損ねるリスクも孕んでいます。トランプ大統領の強硬な政策は、かつて同盟国であった国々にも不信感を抱かせ、これまで築かれてきた国際協調の枠組みを脅かす要因となっています。

実際、今回の関税措置に対しても、日本をはじめとする多くの国が強い反発を示しており、外交的な対話よりも対抗措置によるエスカレーションが懸念されています。このような状況が続けば、世界経済は貿易戦争や政治的対立による不確実性の中で、より大きな混乱に陥る可能性があると警告する専門家も少なくありません。

米国民が直面する困難

【消費者物価の上昇と生活コストの増大】

トランプ大統領の関税政策は、アメリカ国内産業の保護を狙っているとされる一方で、逆に米国民にとっては大きな負担となるリスクも孕んでいます。まず、関税によって輸入品の価格が上昇すれば、日常生活に欠かせない消費財や電子機器、衣料品などの価格が高騰する可能性があります。これにより家計の負担が増大し、消費意欲の低下やインフレーションの加速といった副作用が生じることが懸念されます。

【産業全体への悪影響と雇用不安】

また、報復関税や対抗措置によって、アメリカが主要な輸出市場である国々との貿易関係が悪化することは、国内産業にとってもマイナスとなる可能性があります。特に農業や製造業など、海外市場に依存しているセクターでは、輸出が減少することで雇用の不安定化が進む恐れがあるのです。これにより、地域経済全体に悪影響が及び、雇用情勢がさらに厳しくなる懸念も指摘されています。

【サプライチェーンの混乱による生活基盤の不安】

さらに、国際貿易の停滞やサプライチェーンの再編が進むことで、医薬品や日用品などの供給にも遅延や不足が発生する可能性があります。特に新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、生活必需品の安定供給は国民の生活基盤に直結するため、このような混乱が現実化すれば、米国民の日常生活に大きな不便をもたらすこととなるでしょう。

今後の展望とシナリオ

【戦略の短所と長所のジレンマ】

トランプ大統領の採用するマッドマンセオリー的なアプローチは、確かに短期的には交渉のテーブルにおいて相手国に譲歩を迫る効果を発揮するかもしれません。しかし、その反面、予測不能な政策転換が続くことで、国際的な信頼が失われ、長期的な経済成長や安全保障に深刻な悪影響を与えるリスクが高いことは否めません。市場はすでに、そのリスクを織り込む形で不透明感を増しており、今後のグローバルな経済環境がどのような方向に向かうのか、各国の政策対応と協調の模索が急務となっています。

【投資家と企業への示唆】

今回の「トランプ関税」の発動は、世界経済全体に大きな衝撃を与えるとともに、企業活動や投資判断におけるリスク管理の重要性を改めて浮き彫りにしました。企業は今後も突発的な政策変更に備え、サプライチェーンの多角化や現地生産の強化、さらにはリスクヘッジのための金融商品を活用するなど、柔軟な対応策を講じる必要があります。また投資家としても、各国の政治情勢や経済指標に注視し、変動の大きい市場環境に対応できるポートフォリオ戦略を検討することが求められるでしょう。

おわりに

2025年4月3日に発表された今回の相互関税は、トランプ大統領が意図的に行なっているとも言われる「マッドマンセオリー」の一端を担うものであり、世界経済に対して深刻な影響を及ぼす可能性があります。全世界に一律の関税と、特に貿易黒字国に対する追加措置という強硬な政策は、短期的にはアメリカの国内産業保護につながるかもしれませんが、長期的には国際的な信頼関係の破壊や貿易摩擦の激化、さらには市場の不確実性増大という重大なリスクを伴います。

今後、各国政府や国際機関、企業は、こうした予測不能な政策変動に対してどのように対応するのかが問われることになるでしょう。

国際協調の重要性を再認識し、対話を通じた問題解決の道を模索する一方で、各国は自国の経済安全保障を確保するためのバランスを如何に保つかが、今後の大きな課題となることは間違いありません。

いずれにせよトランプ大統領の大胆な関税政策とその背後にある「計算された狂気」の戦略は、グローバル経済が抱える不確実性の象徴とも言えるでしょう。市場は既にその影響を受け、各国の経済政策は新たな調整を迫られている状況です。

今後、どのような形で国際協調が再構築され経済の安定化が図られるのか、世界中の注目が集まっているのです。

文/鈴木林太郎

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