
ロマンチックラブイデオロギーという言葉をご存知だろうか。社会学の用語で、簡単に言えば「恋愛で結ばれた者同士が結婚して家族を作るのが当然だし、そうあるべき」という考え方のこと。
現在では当たり前、と思われる考え方だが、前近代では恋愛は感情、結婚は家制度や生活制度として、全く別のものとして捉えられていた。
これに対して「恋愛結婚を当然」とするロマンチックラブイデオロギーは、恋愛への憧れが広がった19世紀のヨーロッパで生まれと言われている。
その後、20世紀に多くの国々で標準的な考え方になったロマンチックラブイデオロギーだが、現在は大きな「揺らぎ」を見せているとの指摘がある。
そこで、既婚者向けコミュニティサイトを運営するレゾンデートルは、婚と幸せ、既婚者の人生の在り方を改めて考えるヒントとして、ロマンチックイデオロギーを切り口にした「恋愛感情と結婚」に関するアンケート調査を実施。
本稿は、その3回目の結果報告として、「恋愛結婚に対する考え方」「恋愛のゴールは結婚であるべきと考えるか」「これまでの恋人数」について、都道府県別の違いを調べている。
結婚するなら恋愛結婚? ─ 都道府県・地域別回答
「恋愛感情と結婚に関する調査(ロマンチックラブイデオロギー調査)」の第1報(レゾンデートル調べ)では、36.2%の人が「結婚するなら恋愛結婚が良い」、30.9%の人が「どちらかと言えば恋愛結婚が良い」と回答した。
合計すると67.1%になり、若者の恋愛離れ、草食化が指摘される昨今でも、いまだ多くの人が「恋愛結婚が良い」と考えていることがわかった。
また都道府県別の回答結果をみると、地域差が大きいことも判明。強い意志を感じる「結婚するなら恋愛結婚が良い」(「どちらかと言えば」の回答を除外)と回答した割合の高い都道府県の上位10位を紹介する。
サンプル数が少ないため、あくまでも参考に留まるが、石川県は旧加賀藩の頃から温和で穏やかな一方、保守的な国柄と言われており、その反映かもしれない。サンプル数が多い、鹿児島県、福岡県、広島県は妥当性が高い結果と言えるが、確かに情に厚い気風がありそうだ。
一方、「必ずしも恋愛結婚でなくても良い」と回答した人が多かった都道府県上位10位は下記のとおり。「恋愛結婚でない方が良い」との回答結果で比較しなかった理由は、回答割合が低かったこと、この回答を選ぶには特殊な事情がありそうだったためだ。
青森県が圧倒的に高いのは、県内の結婚状況を反映した結果かもしれない。
最後に、「結婚するなら恋愛結婚が良い」「どちらかと言えば恋愛結婚が良い」両方の回答を合わせた結果を、地方別に紹介する。サンプル数が高くなるため、妥当性が高い結果になるはずだ。
西高東低がはっきり出た結果となった。西日本の人が「恋愛結婚の方が良い」と考える割合が高いこと、東日本では特に北海道・東北地方の人が低いことがわかる。気風の違いと言えそうだ。
恋愛のゴールは「結婚」なのか ─ 都道府県別回答
「恋愛至上主義」時代とよばれる1980~1990年代(※1)ですら、大人になってからの恋愛は結婚を意識するものという共通認識があった。逆に言えば、「結婚する気はないけど付き合う」のは邪道という意識があったのだ。
※1 木村絵里子「1980 年代の『恋愛至上主義』」、高橋幸・永田夏来編『恋愛社会学: 多様化する親密な関係に接近する』(ナカニシヤ書店、2024年)
では、令和時代はどうかというと、「恋愛感情と結婚に関する調査(ロマンチックラブイデオロギー調査)」の第2報(レゾンデートル調べ)では、「恋愛のゴールは結婚」との考え方に5割以上が賛同し、恋愛と結婚を結びつける傾向が令和の今も強いことが判明した。
ただし、都道府県別にみると地域差が生じており、「恋愛のゴールは結婚であるべきか?」との質問に「賛成」「やや賛成」と答えた賛成派が多い都道府県上位10位、「やや反対」「反対」と答えた反対派が多い都道府県上位10位を、それぞれ紹介したい。
賛成派が最もの和歌山県は、江戸時時代には徳川御三家の一つ、紀伊藩のあった県。保守性よりも、楽天的で陽気、豪放な県民性とされているが、倹約家が多いことでも有名なので、その辺りが関係しているのかもしれない。ただしサンプル数が少ないため、あくまで参考ということをご理解いただきたい。
続いて、反対派が最も多いのは山形県、次いで兵庫県となった。兵庫県はサンプル数が多いため、妥当性が高い結果になるが、江戸時代末期の開港地で古くから外国人居留地を抱える神戸の開放的な気風が影響しているかもしれない。
これまでの恋人の数は? ─ 都道府県別回答
「恋愛感情と結婚に関する調査(ロマンチックラブイデオロギー調査)」の第2報(レゾンデートル調べ)で紹介した「これまでの恋人数」の都道府県別の回答状況をお伝えする。
サンプル数が高いところをみると、岡山県で「恋人1人以下」(青+水色)の割合が全国平均よりかなり高いこと、岡山県、広島県、福岡県で「恋人4人以上」(ピンク+紫)の割合が全国平均よりかなり高いことが目を引く。岡山県は、恋愛に積極的な人、消極的な人の両方が多いということか。
なお、東日本と西日本で比べると、ほとんど差がないのが興味深いところで。当然ながら全国と比較してもほぼ同じ割合になる。
つまり、独身者・既婚者を含む20代~50代男女の「これまでの恋人数」はグラフのような状態であり、「これまでの恋人数は1人以下」、「これまでの恋人数は2~3人」、「これまでの恋人数は4人以上」でちょうど3等分されるようだ。それぞれ「非モテ」「普通」「モテ」などと言われるのかもしれない。
調査概要
調査タイトル/恋愛感情と結婚に関する実態調査(ロマンチックラブイデオロギー調査)第3報
調査期間/2024年12月19日~30日、2025年1月31日~2月14日
調査対象者/20~59歳の男女4,000人(男性2,000人、女性2,000人)
調査方法/インターネット(セルフ型アンケートツールFreeasyを利用)
エリア/全国
調査機関/レゾンデートル株式会社
<調査対象者について>
男女、各年代とも均等なサンプルになっている。回答者は全都道府県におおむね人口と相関する形で分布しており地域的な偏りはない。
関連情報
https://raisondetre-inc.co.jp/
構成/清水眞希