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あたかも〝彼らがいる〟かのような体験を!JTBに聞く「アニメツーリズム」人気の舞台裏

2025.04.11

様々な作品の舞台、ロケ地を訪れる「コンテンツツーリズム」は昨今、旅行スタイルとして定着してきた。なかでも、脚光を浴びるのが「アニメツーリズム」だ。先がけと言われる『らき☆スタ』の埼玉・鷲宮神社、『ガールズ&パンツァー』の茨城・大洗など、過去の事例も様々で、新たな観光客需要をつかむための地域活性の施策として期待する自治体も多い。

さらに、コロナ禍が落ち着いて以降で高まりつつある、訪日外国人を相手にした “インバウンド需要”に応じた新たなマーケットとしても注目される。観光庁による2023年の「訪日外国人消費動向調査」では、訪日外国人旅行消費額が5兆3065億円でコロナ禍以前の2019年比で9.9%増加。訪日時に「映画・アニメ縁(※ゆかり)の地を訪問 」したのは7.5%で、次回に同様のことをしたいと答えたのは10.9%だった。

その翌年のデータとはなるが、日本政府観光局によると2024年の訪日外国人観光客数は過去最多の3686万9900人 といわれ、その数字を考えても、コンテンツツーリズムないしアニメツーリズムのビジネスとしての可能性は大きい。

では、その最前線ではどのような動きや課題があるのか。近年、アニメ『鬼滅の刃』などの人気アニメにゆかりある旅行企画に注力する、大手旅行会社・株式会社JTBのエンタテイメント事業部で事業部長を務める柳澤太一さん、アニメツーリズム担当の桐谷奈緒美さんに「Anime Japan 2025」ビジネスデイの会場でお話を伺った。

あたかも「“彼らがいる”かのような」アニメツーリズムに欠かせないもの

――JTBは、毎年「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」を選定する一般社団法人アニメツーリズム協会にも参加しています。いつごろから、アニメツーリズムに力をそそぎはじめたのでしょうか?

柳澤さん まず、エンタテイメント事業部が設立されたのが2018年で、音楽、スポーツなど、様々なジャンルを問わないIP(知的財産)コンテンツと連動したツアーを企画してきたんです。その一環としてアニメでの取り組みも強化してきまして、全国の観光地や自治体との連携も図りながら、パッケージツアーなどを企画しています。

じつは、過去にアニメとタイアップした国内ツアーを企画したこともあったのですが、完成度に課題を感じていたんです。本腰を入れて、アニメツーリズムとして大々的に掲げられるようになったのはここ数年で、コロナ禍も落ち着き、しっかりと企画を組み立てられるようになったのは2023~2024年にかけてです。

株式会社JTB エンタテイメント事業部 事業部長の柳澤太一さん

桐谷さん 弊社としては旅行の枠にとどまらず「人と人との交流」を創る方向へとシフトしているのもあります。作品の世界へ没入できるのとあわせて、ファンの方々が旅行先でつながれる仕掛けづくりは意識しています。アニメを中心に、エンタメコンテンツと旅をかけ合わせて、顧客により深い体験や価値を提供できている実感はありますし、IPコンテンツを保有するコンテンツホルダーとの接点も広げて、地域活性に取り組む自治体とも手をとりながら、アニメツーリズムを盛り上げていきたいと思っています。

株式会社JTB エンタテイメント事業部 アニメツーリズム担当 桐谷奈緒美さん

――いわゆるアニメのようなジャンルでは、ファン目線での企画づくりが重要な印象もあります。実際、社内で担当される方々の熱量はいかがでしょうか?

柳澤さん アニメツーリズムを管轄するエンタテイメント事業部では、約60名ほどのスタッフがいまして「好きなエンタメジャンルを持ちなさい」と、全員に伝えています。社員の“推す”作品への愛情からツアーの企画が実現したケースもありますし、単に聖地と定めて交通手段と旅行先の宿泊施設を決めるだけではなく、作品にふれた温度感も大切に、社員自身が「ファンとして本当に行きたい」と思う企画づくりを徹底していますね。

桐谷さん 自分の“推し”ではない作品であっても、ファンの方々の気持ちに寄り添って「こんな企画があったらうれしいよな」と想像しながら、企画をすすめるのが大切だと感じています。じつは、私もアニメが大好きなんです。例えば、スケートボードがテーマのTVアニメ『SK∞ エスケーエイト』で舞台の沖縄を巡ったツアーを企画した際には、ファン心から訪問先の観光地にキャラクターの等身大パネルを設置するようにして、あたかもその場に“彼らがいる”かのような体験を演出しました。

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オーバーツーリズムとも背中合わせで「持続可能」も課題に

――旅行会社としての役割では、IPコンテンツを保有するコンテンツホルダー、各自治体との間にいるイメージでしょうか?

柳澤さん まさしく、そのイメージです。全国47都道府県にある弊社の支店が、自治体とのネットワークを生かして、コンテンツホルダーとの接点を作るのが役割となります。

桐谷さん アニメツーリズムについては当初、こちらから提案してもコンテンツホルダー側がとまどうケースもありました。市民権を得られたのがここ数年ほどの印象で、元々あったIPコンテンツを有する企業とのネットワークも生かして、徐々に信頼関係を構築できるようになってきたのが現状の感覚です。

――過去に取り組んだ、アニメツーリズムの事例も教えていただきたいです。

柳澤さん 例えば、アニメ『鬼滅の刃』とコラボレーションした企画では、作品内で登場する温泉をヒントに、2023年には神奈川県の湯河原、2024年には群馬県の伊香保、同県の草津や栃木県の鬼怒川で、首都圏の各温泉地で約半年間にわたってのイベントを作りました。

『ご注文はうさぎですか?』の海外ファンミーティング『ご注文はフランス旅行ですか?』の様子

桐谷さん 『ご注文はうさぎですか?』という作品では、アニメ10周年記念企画として、2024年12月に、作品に出てくる街のモチーフと言われるフランス・コルマールへのツアーを手がけて、現地では登場キャラクターのココアを演じる声優・佐倉綾音さんのファンミーティングを実施しました。またツアー参加特典として、原作者のKoi先生描きおろしの特製リーフレットも用意しました。

オリジナルのノベルティは作品への没入感をもたらすために、欠かせない要素なんです。TVスペシャルアニメ『五等分の花嫁*』の舞台となったハワイに行った2025年始のツアーでは、登場キャラクターの上杉風太郎が書いたしおりを再現して、参加していただいた方々に特典として配布しました。

JTBが企画したノベルティの数々。アニメだけではなく、ゲーム『ペルソナ』シリーズの企画に関連したものも

――国内の事例では特に、旅行先の自治体との連携も実現にあたっては欠かせないと思います。作品への理解を深めていただくなど、アニメツーリズムを形にする上での苦労や課題もあるのでしょうか?

柳澤さん コンテンツや企画がどれほど魅力的でも、交通インフラなど、現地の受け入れ体制が整っていなければ難しいのは事実です。ただ、切実に「人を呼びたい」と願う地域や、観光地として「閑散期に新たな観光客を呼びたい」と考える地域では、提案に前向きに応じてもらえる感触はあります。

桐谷さん 作品を理解していただくのも、高いハードルですね。実際「作品の舞台となっているんです」と説明しても、アニメ自体を見たことがなければ肌感覚として伝わりづらいですし、どのように広げていくのかは、企画する側の課題でもあります。

――インバウンド需要も期待されるアニメツーリズムの担い手として、今後の展望も伺えればと思います。

柳澤さん アニメツーリズムは日本独自の魅力を持つコンテンツですし、やはり、インバウンドへの対応は強化していきたいです。多言語での情報発信は現状にある課題で、海外での拠点を活用しきれていませんし、のびしろのある日本発のジャンルないしカルチャーを支える立場でありたいとは思っています。

桐谷さん 昨今、オーバーツーリズム(観光客の集中によって起きる観光地への悪影響)の問題も指摘されていますし、このジャンルであっても「持続可能なアニメツーリズム」の実現が、大きなテーマとなっていると思うんです。個人で楽しむ方もいるアニメの聖地巡礼を一過性に終わらせるのではなく、現地に何度も足を運んでもらえる仕組みを各地域の方々と一緒に作っていくのが理想ですし、全国の風景や文化が、アニメを通して再発見されていくように、弊社として取り組んでいきたいです。

取材・文/カネコシュウヘイ

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