Xモードも健在
今回のプロトタイプ試乗では、スバル自慢の停車時、または20km/h以下で使用可能な状態にして、40km/h以下で作動する脱出用のXモードを試す機会もあった。XモードOFFでは前に進まないような滑りやすく左右輪が異なる路面を台とローラーで再現し、一部のタイヤが浮いてしまう、空転してしまうような悪路を模したシーンなのだが、XモードをONにしたとたん、ブレーキをつまみ、対角線の駆動力を得ることで、なんなく前に進むことができたのである。先代フォレスターとクロストレックにあり、レイバックにないXモードは、フォレスターの本格SUVとしての資質を、電動4WDではなくメカニカルなAWD(4WD)の採用(踏襲)とともに、オンロードからオフロードまでの走破性を含め、高めてくれるひとつの切り札と言っていい。
ただ、11.6インチの縦型大型ディスプレーのXモード操作画面でONにするのだが、トップ画面上部には、画面左に「SNOW/DIRT」中央に「NORMAL」右に「DEEP SNOW/MUD」という表示があり、路面に合わせて選ぶことになるものの、中央の「NORMAL」がXモードのノーマル!?と誤解してしまい兼ねないのがちょっと気になった。「NORMAL」とはXモードOFFを意味するからである。
ちなみに、凍結路や圧雪路でスタート時にタイヤが空転してしまうシーン場面では「SNOW/DIRT」。タイヤが深い雪に埋まった場面やぬかるみにはまった時などは「DEEP SNOW/MUD」を使用すればいい。タイヤに十分なトルクが伝わり、なんなく脱出し、走り出すことが可能になる。道なき道を行くようなアウトドア派、雪道走行の機会の多いユーザーにとって、Xモードはまさに神器と言っていい機能なのである。
そんな新型フォレスターのプロトタイプをサーキットで走らせた印象をまとめると、
(1) エクステリアの正統派SUVとしてのカッコ良さと存在感。
(2) 11.6インチの縦型センターディスプレイを含むインテリアの上質さ。
(3) 日本の道でも大きすぎないサイズの維持(先代比で全長と全幅のみ+15mm。最小回転半径も不変)。
(4) 先代にないアイサイトXを含む運転支援機能&安全装備の充実。
(5) プレミアムとX-BREAKに備わるストロングハイブリッド機構による静かでスムーズな走行性能、しっとり上質な乗り味の実現。
(6) SPORTのよりトルキーで軽快・爽快かつ、18インチタイヤによる乗り心地にも優れた走りのテイスト。
(7) 全グレードに共通する安心感と安定性たっぷりのメカニカルAWDによるオールラウンダーな走行性能。
(8) ストロングハイブリッド車のWLTCモードで18.4~18.8km/Lというスバルの正統派SUV史上最上の燃費性能。
ということになるだろうか。
この時代ゆえ、先代モデルに対しての価格アップは避けられないところだが、先代になかったストロングハイブリッド(AC100V/1500WコンセントがOPで用意される)やアイサイトX、デジタルマルチビューモニターの採用を始め、インフォテイメントシステム、ナビゲーション機能をETC2.0とともに標準装備した上での価格設定ということになる。なお、今回はあくまでサーキット路面におけるプロトタイプの試乗印象であり、一般道、リアルワールドでの市販車の試乗記は、改めてお伝えしたい。
文/青山尚暉