
物理的な各種証明書との〝合体〟が進むマイナンバーカード。2025年の春に想定されている大きなトピックスは、マイナンバーカードの一部機能が『iPhone』やAndroid端末にも実装されること。これにより、マイナンバーカードを持ち歩かなくてもよくなりそうだ。これらの詳細を、関連情報に造詣が深いライター小山が解説する。
2025年春以降はマイナ保険証機能もスマホに〝合体〟?
今春以降に〝マイナ機能〟が搭載される『iPhone』は電子証明書の仕組みが使えようになる。技術的には「オンライン資格確認」にアクセスする「マイナ保険証」の機能を使えるようになる模様だ。
「マイナ保険証」は、医療機関の受付にある専用カードリーダーが、マイナンバーカード内の電子証明書を読み取って「オンライン資格確認」と呼ばれる保険情報にアクセスする仕組み。これにより、本人確認を安全に行ないつつ、最新の保険資格情報を医療機関が取得できるわけだ。
ただし現在、医療機関に置かれているマイナンバーカード用リーダーはスマホに対応しておらず、スマホ側の電子証明書を読み込ませるためには、対応のリーダーを別途用意しなければならない。
『iPhone』で「マイナ保険証」を使えるようになった場合、生体認証を行なった後に保険情報にアクセスできるようになる模様。Android端末も〝マイナ機能〟をフルに搭載することで、同様の利用方法になる想定だが、当面は電子証明書用の暗証番号を入力し、本人確認を行なうことが考えられる。
マイナンバーカード機能のスマホ搭載では、スマホのウォレット機能で利用することが考えられている。QUICPayのような「スマホ決済」を普段から利用している人にとっては、悩まずに使いこなせることになるだろう。
スマホ用リーダーは、医療機関に置かれているマイナ保険証のリーダーにつないで運用する想定。当初は一部の医療機関で国が実証を行なう模様だ。
〝マイナ機能〟スマホ搭載の対応端末や利用手続きについてギモンを解決!
Q. 搭載されるのは『iPhone』だけ?
A. Android端末も搭載予定。すでにAndroid端末ではスマホ用電子証明書搭載サービスが2023年5月から開始されている。
『iPhone』に搭載される予定なのは、電子証明書に加えて、基本4情報(氏名/住所/生年月日/性別)、マイナンバー、証明用写真という情報だ。Android端末では、そのうちの電子証明書の搭載がスタートしており、デジタル庁が順次発表している対応モデルにおいて、すでに本人確認などで使われている。
Q. Android対応端末の場合、どのようにすればスマホ用電子証明書サービスを利用できる?
A. マイナポータルアプリを起動して申請すればOK
手順は以下のとおり。マイナポータルアプリの画面下から「メニュー」→「スマホ用電子証明書を申請する」の順に選択。あとは「署名用電子証明書」と「利用者証明用電子証明書」について各暗証番号を入力してマイナンバーカードを読み込めば申請が完了し、順次利用可能になる。
Q. 安全性はどう確保されている?
A. 基板に埋め込まれたICチップ「GP-SE」に格納しているので安心
GP-SEは、国際規格に準拠したセキュアエレメント(ICチップ)。OSとは異なる領域に情報が保管され、マルウェアなどがアクセスして情報を盗むことはできない。安全性の確立された仕組みで各種機能を活用するのも安心。
〝マイナ機能〟スマホ搭載のココがメリット〈1〉
カード認証なしにマイナポータルにアクセス!
『iPhone』とAndroid端末のほぼ全機種は、マイナンバーカードの読み取り機能を搭載し、国や地方自治体の公共サービスを利用可能な「マイナポータル」アプリへアクセスできる。税、保険、子育て、年金などに関する様々な情報を確かめるのも、オンラインで行政手続きをすませるのも実に簡単だ。今年の春に〝マイナ機能〟がスマホに搭載されることで、マイナンバーカードの読み取りが不要に。マイナポータルアプリへのアクセスがよりスムーズになる。
現在は「マイナポータル」にログインするたびに暗証番号を入力し、マイナンバーカードをスマホのリーダー部にタッチする必要がある。「マイナポータル」の利用に備えて常にマイナンバーカードを持ち歩き、使うたびに取り出すのが面倒……。
スマホ用電子証明書搭載サービスに対応するAndroid端末では「マイナポータル」へのログイン時にマイナンバーカードの読み込みは不要。今春には『iPhone』でも同様に利用できる。暗証番号の代わりに生体認証によるログインも設定可能だ。
〝マイナ機能〟スマホ搭載のココがメリット〈2〉
本人確認だけでなく年齢確認への対応に期待大!
今春以降には電子証明書以外にも基本4情報(氏名/住所/生年月日/性別)や顔写真といった、マイナンバーカードの券面記載情報も『iPhone』やAndroid端末で保管できるようになる。マイナンバーカードと同様に、対面での本人確認がスマホですむようになるのは便利だ。同機能は「Apple Wallet」や「Google Wallet」のアプリ上に実装される見込み。「20歳以上かどうか」「当該市の住所かどうか」など、特定の情報だけを提出する機能の実装も期待されている。
上記のような手順で、厳格な本人確認もスマホだけでOKに。「名前だけ送信してチケット購入者名と一致するかどうかを確かめる」「フェス会場で酒を提供できる年齢なのかをチェックする」といった特定の用途に使えるのもメリット。マイナンバーカードのように券面に記載された住所を見られる不安もない。
ユーザーがどこでも使えるようになるためには店舗側の対応も不可欠
詳細は明らかではないが、店舗側はPCなどに汎用のカードリーダーをつなげば、本人確認が可能になる模様。デジタル庁の認証アプリをインストールしたタブレットやスマホも同確認に対応すると考えられ、スマホ同士をタッチして済ませられる可能性もある。
取材・文/小山安博 イラスト/中谷聖子(asterisk-agency) 編集/田尻健二郎