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トランプ関税で米国は自滅する!?OECDの試算で経済へのマイナス寄与はEUの0.17%、日本の0.35%、中国の0.1%に対し米国は0.72%

2025.04.08

現地時間2025年4月2日、アメリカのトランプ大統領はホワイトハウスの中庭にあるローズガーデンにおいてトランプ関税の詳細を公表した。

市場の事前予測としては、比較的穏当なものに留まるとの見方が大勢を占めていたが、予想外に厳しい相互関税の発表にネガティブな驚きが広がり、世界の金融市場に激震が走ることになった。

そんなタリフマン(=関税男)を自称するトランプ大統領の有言実行に市場では動揺が広がる中、三井住友DSアセットマネジメント チーフグローバルストラテジスト・白木久史 氏からトランプ関税による世界経済への影響と、今後の株式市場の展望に関するリポートが届いたので概要をお伝えする。

1:トランプ関税にリスクオフで反応する金融市場

トランプ大統領は注目の関税措置について、世界各国からの輸入品に一律10%の関税を課すとともに、中国や日本など対米貿易黒字の大きい国々に対して高率の相互関税を課すと発表した。

今回発表された関税措置が実施されると、日本からの輸入品には24%、中国については既に実施済みの20%と34%の追加関税の合計で計54%の関税が課されることになる。

一律関税の導入や高率の相互関税の実施に対して市場では懐疑的な見方が少なくなかったこともあって、予想外に厳しい内容を受けて世界の金融市場はリスクオフで反応した。

4月3日の東京市場で日経平均株価の終値は前日比▲2.77%の下落となり、ニューヨーク株式市場でS&P500種指数の終値は前日比▲4.84%の大幅安。また、外国為替市場では米ドルが対主要通貨で全面安の展開となり、米ドル円レートは一時145円台前半まで急落する場面も見られた。(図表1)。

2:「米国の自滅」に身構える金融市場

トランプ大統領は米国株の大幅調整について「想定の範囲内」と冷静を装っているが、関税を課される諸外国以上に米国株や米ドルが大きく売り込まれてしまったことに、内心では少なからず苛立っているのかもしれない。

というのも、トランプ大統領は今回のローズガーデンでのイベントを「解放の日(Liberation day)」と銘打ち、「米国を再び豊かにする(Make America Wealthy Again)」と息巻いていたからだ。

相互関税の発表を受けて米国に対する売りが広がったのは、一連のトランプ関税がそのまま実行に移された場合、メキシコのような例外を除けば、米国経済が最も大きい影響を受ける可能性が高いことが原因。

経済協力開発機構(OECD)の試算によれば、米国が一律10%の追加関税を世界各国に課した場合、世界経済全体に及ぼす影響は3年間の累積で▲0.27%、OECD加盟国平均で▲0.50%、EU▲0.17%、日本▲0.35%、中国▲0.1%のそれぞれマイナス寄与となる一方、米国経済については▲0.72%の下押し要因になると予想されている(図表2)。

単純計算にはなるが、OECDの試算をベースに24%の関税が課された場合の日本経済への影響は3年累積で▲0.84%(幾何平均で年率▲0.28%)、中国(54%の関税)は3年累積で▲0.54%(同年率▲0.18%)となる。

一方、三井住友DSアセットマネジメントの試算によれば、今回発表された一律関税と相互関税が額面通りに実行された場合、米国経済には約▲1.5~▲2%の下押し圧力が生じることになりそうだ。

こうした静的な分析は国際商品市況や為替市場への影響を織り込まないため、米国経済への影響が過剰に出る傾向がある点には注意が必要だ。

■米国GDPは輸入品の値上がり影響を直接受ける個人消費が約7割を占める

その一方で、仮に金融市場が米国の「自滅」を織り込む動きを強めていった場合、米株安による逆資産効果で個人消費が押し下げられ、ドル安による輸入物価の上昇によりインフレ圧力も高まることとなり、米国経済への悪影響は増幅されることとなりかねない。

仮に、今回発表された一律関税及び相互関税がトランプ流のディールに持ち込むためのブラフに留まらず、その額面通りに実行に移された場合、最も割を食うのは輸入品の値上がりの影響を直接こうむる個人消費がGDPの約7割を占める米国経済ということになるだろう。

そして、米株安、ドル安に見られる金融市場の反応は、こうした「米国の自滅」への警鐘とすることができそうだ。

3:日本株投資へのインプリケーション

平均的な市場の動きから大きく逸脱した変動を引き起こすようないわゆる「テールリスク」について、市場はひとたび事が起きると素早く調整して悪材料を織り込み、イベント通過後は回復に向かうことが多い。

例えば、1990年8月の湾岸戦争、2020年3月のコロナウイルスのパンデミック、そして、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻などは、いずれも世界経済や金融市場に大きなインパクトをもたらした出来事だが、市場は開戦などイベントの発生時に急速に最悪シナリオを織り込み、その後は相場が底割れすることなく時間の経過とともに正常化へと向かっている。

もし、今回のトランプ関税もこうした前例に倣うなら、「解放の日」というイベントを通過したことで市場のボラティリティもピークを迎え、今後は徐々に落ち着きを取り戻していく展開を想定しておいた方が良いかもしれない。

ちなみに、ベッセント財務長官はトランプ大統領による発表後に、「報復措置がなければ、今回発表された関税率が上限になる」とコメントしている。

■米国経済への深刻な影響を避けつつ関係国との「ディール」を模索?

もし、本気で米国と事を構えようという酔狂な国が続々と現れるような事態でも起きない限り、4月3日の下落で日本の株式市場は、トランプ関税にまつわる「最悪シナリオ」を相当程度織り込んだ可能性が高いのではないか。

また、「アメリカファースト」を掲げ、バイデン政権下でのインフレ高進を声高に批判して大統領選を勝ち抜いたトランプ大統領が、みすみす「米国の自滅」につながるような関税政策をそのまま長期にわたり実施し続けると考えるのも、少々無理があるように思われる。

米国のインフレに影響を与えかねないカナダ産石油製品への関税が25%から10%に引き下げられたように、今回発表された「関税の上限」をスタートラインに米国経済への深刻な影響を避けつつ関係国との「ディール」を模索する動きが本格化すると、関連するニュースフローは株式市場にとってリスクオンの材料となる可能性が高そうだ。

4月3日の株式市場の調整を受けて、TOPIXの12カ月先予想株価収益率(PER)は約13.3倍まで低下して、過去10年の平均値である約14.6倍を大きく下回っている。

ちなみに、過去のマーケットを振り返るとTOPIXの12カ月先予想PERは12倍台が底値圏となっており、バリュエーション面から見た日本株の下落余地はかなり限定的に思われる(図表3)。

もし、ベッセント財務長官が言うように今回発表された税率が「関税の上限」となるのであれば、現在の日本株は関税にまつわる「最悪シナリオ」をかなりの程度織り込んだ、ポジティブなニュースフローに反応しやすい状況にあるのではないだろうか。

まとめとして

今回発表されたトランプ関税が全て実施された場合、最も割を食うのは皮肉にも米国自身となるかもしれない。アメリカファーストを掲げて大統領に返り咲いたトランプ大統領だが、みすみす「米国の自滅」を招くような関税政策に邁進(まいしん)すると考えるのは、少々無理があるように思われる。

「解放の日」という一大イベントを通過した金融市場ですが、こうした悪材料は素早く価格に織り込まれることが多く、イベント通過後の市場は徐々に正常化、リスクオンへと向かうことが少なくない。

今後、相互関税をテコに米国の国益を踏まえた「ディール」が関係国と模索されることになりそうだが、関連するニュースフローは割安感の高まった日本株にとってリスクオンのきっかけとなりそうだ。

関連情報
http://www.smd-am.co.jp

構成/清水眞希

 

 

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