
Macシリーズの中でも、ノートPC型で、薄型、軽量という特徴を持つMacBook Air。2025年3月には、上位モデルとそん色のない、M4チップを搭載した最新モデルが発売された。
Macシリーズといえば、2020年に発売されたMacBook Pro、Mac miniより、アップルが自社開発をしたMシリーズのチップセットを搭載し、高い処理性能や省電力性を特徴としている。今回のMacBook Airには、Mシリーズとしては、4世代目のチップを搭載するというわけだ。
M1チップは、2025年4月になった現時点でも、現役で活躍できる高性能。実際筆者も、Windows PCと使い分けているとはいえ、M1チップ搭載のMacBook Airを今でも使い続けており、特別性能面に不満を感じていない。筆者のように、M1モデルや、それ以前のインテルモデルを使っているユーザーからすると、最新機種に買い替えるべきなのかという疑問を抱き始めるタイミングではないだろうか。
では、MacBook Air(M4)は、M1モデルやインテルモデルから買い替えるべきデバイスなのか。実機で比べていこう。
ハードウエアのアップデートポイントは?
では、MacBook Air(M4)とMacBook(M1)の違い、進化ポイントについて、まずはハードウエアの進化ポイントを見ていこう。
■フラットデザインのMacBook Air(M4)は新色「スカイブルー」が魅力的
使っていてわかりやすく違いを感じるのが、本体デザインと、ディスプレイについて。
本体サイズ自体は、幅30.41cmは共通、奥行はM4モデルが21.5cm、M1モデルが21.24cmとほとんど変わらず、質量もM4モデルが1.24kg、M1モデルが1.29kgと、体感できるほどの違いはないが、高さ(厚さ)はM4モデルが1.13cm、M1モデルは0.41~1.61cmとなる。つまり、M4モデルはフラットなデザイン、M1モデルは少しカーブが付いたデザインとなっている。
どちらが優秀というわけではないが、フラットなデザインのほうが、〝整っている感〟があるため、よりクールな印象を受ける。内部にパーツを格納しやすいといった事情があるのかもしれないが、個人的には、高級感も出るため、フラットデザインを気に入っている。
MacBook Air(M4)として、新色「スカイブルー」が出たのもポイント。シルバーっぽさもあるメタリックな色合いだが、光の当たり方によって、見え方が変わってくる。MacBookシリーズの特徴である、メタリックな質感はそのままに、パステルな色合いが選べるようになったのは、歓迎するべきだろう。軽量モデルというコンセプトにも、ブルーの質感はよく合っているように感じる。
インターフェイスは、M4モデルがThunderbolt 4(USB-C)ポート×2、M1モデルがThunderbolt 4/USB 4ポート×2となる。基本的には、USB-Cポートが2つという立て付けで共通だが、M4モデルには充電専用のMagSafeポートが搭載されているため、充電以外の用途で、2つのUSB-Cポートをフル活用できるというメリットがある。また、M4モデルより、2枚の外部ディスプレイと接続し、メインディスプレイを含めた、計3枚のディスプレイに出力できるようになっている。
■カメラの高画質化で新機能にも対応
ディスプレイ上部、ノッチ部分に格納されているWebカメラは、M4モデルで、12MPにグレードアップ。1080p HDビデオ撮影にも対応した。パッと見ただけで、画質の違いは如実に感じられる。
新しいカメラを搭載することで、新たにセンターフレーム機能と、デスクビュー機能に対応した。センターフレーム機能は、Web会議の際に、ユーザーが画面の中心に映るように、自動的に調節してくれる機能。ノートPC型のMacBook Airは、本体を屋外に持ち出すといった機械も多いため、逐一本体をセットする位置を調節しなくて済むのは、便利なポイントとなる。
デスクビュー機能もWeb会議時に役立つ機能で、MacBook Air(M4)を置いているデスク上を、映し出せる機能。手書きのメモなどを共有する際に便利な機能となっている。
■ディスプレイサイズはほぼ同じだけど見えかたには違いがある
ディスプレイはM4モデルが13.6インチ、M1モデルが13.3インチなので、こちらもサイズ的な違いはほぼ感じない。ただし、M1モデルは上部に分厚いベゼルがあるのに対し、M4モデルはノッチデザインを採用しているので、表示領域がより効率的に確保できている印象だ。
iPhoneと同様に、MacBookにおいても、ノッチデザインは賛否の分かれるところだろう。一部分が飛び出て見えるため、画面が欠けているように感じるシーンがあることは否めない。一方で、各種メニューやアイコンがノッチの両脇に配置されるため、無駄がないデザインにも感じる。個人的にも、最初はノッチデザインに違和感があったが、使っていくと、あまり気にならなくなってきている。
ディスプレイ解像度は、M4モデルが2560×1664、M1モデルが2560×1600となる。解像度に大きな差はないが、M4モデルがLiquid Retinaディスプレイなのに対し、M1モデルはRetinaディスプレイとなっているため、発色にはかなり差があるように感じる。ディスプレイ性能による映像体験という意味でも、M1モデルからM4モデルへの乗り換えは、充分価値があるだろう。
■キーボード、バッテリーの基本性能はほぼ変わらず
キーボードはバックライト付きのMagic Keyboardで、M1モデルからM4モデルになっても、ほとんど違いはない。形状は違うが、キーボードに組み込まれたTouch IDも、変わらずに利用できる。
細かなポイントでいえば、スペースキーの左右に配置されている「英数」「かな」という印字が、「ABC」「あいう」に変更されている。とはいえ、基本的な使い方は変わらない。
バッテリー性能もほぼ変わっておらず、M4モデルは、最大15時間のワイヤレスインターネット、最大18時間のビデオストリーミング再生に対応。ただし、ただし、リチウムポリマーバッテリーのサイズは、M4モデルが53.8Wh、M1モデルが49.9Whで、微妙に異なる。また、M4モデルのみ、70W以上のUSB-C電源アダプタによる、高速充電に対応している。
細かな仕様が異なるバッテリー性能だが、実働時間として極端に差を感じるシーンはない。ただし、隙間時間にMacBook Airを充電したいという人は、急速充電に対応している最新モデルが適しているだろう。
どっちでもApple Intelligenceは使えるけど動作性は別物
アップル関連で今世間をにぎわせているのが、「Apple Intelligence」の日本語対応だ。2025年4月1日より、対象のデバイスをアップデートすることで、待望のAI機能が使えるようになった。
MacBook Airシリーズでいうと、M1チップ以降のモデルがApple Intelligenceに対応しているため、筆者の手元にある、M1モデルでも、アップデートで利用できるようになっている。インテルチップを搭載したMacBook Airを使っている場合は、最新のAI機能を堪能するという意味でも、買い替えのタイミングとみるべきかもしれない。
個人的に、MacBook Airで使っていて便利だと感じるApple Intelligenceの機能は、作文ツールと通知要約機能、そしてSiriのアップデート。では、それぞれの機能についてチェックしていこう。
■文書作成が楽になる作文ツール
作文ツールは、ユーザーが書いた文章を校正したり、文体を編集してくれる機能。文体は「フレンドリー」「プロフェッショナル」「簡潔」から選べるので、状況に応じて使い分けられるのもポイントだ。
1から新しい文章を作成する場合は、「作文」をクリックし、指示を出せば、ChatGPT経由で文章を作成してくれる。ChatGPTを使うためのアカウントを別で用意する必要もなく、応答速度もかなり早い。筆者の場合は、ビジネスメールを作成するシーンなどで多用している。
■知らない間に便利になっている通知の要約機能
通知の要約機能は、自分からあえてAIを使う意識がなくても、気づけば便利になっているという類の機能。メールやチャットアプリで通知が届く際、アプリごとだけでなく、内容ごとに通知がまとめられるので、パッと通知欄を確認したときに、どのような話が平行して進んでいるのかがわかりやすい。また、使っていくほど、ユーザーにとって重要な通知が前に出てくるようになるので、重要なメールを見落とすリスクが低減できる。
通知欄や、メールアプリの受信ボックスでは、件名の下に、本文の内容を要約した文章が表示されるため、メールを開かなくても、どのような内容のメールなのかが、ある程度把握できるようになっている。
■Siriはよりかしこく、人間らしく進化
Siriは、より自然な言語での会話ができるように進化。デスクトップから直接アクセスでき、そのままChatGPTを使うこともできるので、ブラウザアプリを立ち上げ、Googleなどで検索をするといったひと手間を省けるのが魅力的だ。カレンダーに登録したスケジュールなど、パーソナルな情報を確認できるのも特徴となる。
ハードウエアの着実な進化と快適なAI機能を求めるなら買い替えもあり
MacBook AirのM1モデルとM4モデルを使い比べていくと、MacBookの中で、薄型軽量モデルというコンセプトが引き継がれているのに加え、M1時点での完成度が高いことから、アップデート自体は控えめに感じる人もいるだろうと想像できる。
ハードウエア的な進化点で見ると、特にディスプレイ性能の違いが、かなり大きいと個人的には感じる。また、Webカメラのアップデートも如実なので、Web会議を多用する人にとっては、魅力的に映るはずだ。
Apple Intelligenceの機能に関しては、M1モデルでも利用できるため、直接買い替えの動機には至らないようにも思う。一方で、M1モデルからM4モデルは、処理能力が最大2倍となっており、各AIの動作速度に違いが出てくる。
特にM1モデルは、メモリ容量が8GBスタートとなっているが、M4モデルの最小構成である16GBメモリと比較しても、動きの快適さにはかなり違いが出る。AI機能は、頻繁に使っていくことで、パーソナライズ化が進み、どんどん便利になっていくものである一方で、使用頻度が高ければ高いほど、ちょっとした性能の違いで、効率に差が出てくる。そのため、MacBook Air(M1)モデルユーザーの中でも、メモリ8GBを選択したユーザーは、買い替えを検討してもいいタイミングだと感じている。
取材・文/佐藤文彦