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老後に友だちを増やしたい時は「スポーツの話」が効く理由

2025.04.11

 社交的な交流において政治や宗教の話はタブーともいわれているが、ではどのような話題が無難なのか。もちろん興味関心は人それぞれだが、人的交流においてスポーツの話題はなかなか有効であることが新たな研究で報告されている。特に高齢者おいてメモリアルな“名勝負”の話題は交流を活発に促進するという。

高齢者はスポーツをテーマに話すといい?

 最近ではたとえば2023年の「ワールド・ベースボール・クラシック」での日本チームの優勝は野球ファンの間では後々も語り草になるだろうが、そのような歴史的な“名勝負”はそれぞれのファンにとっていくつもありそうだ。

 そしてこうしたスポーツの話題は共有している者同士ならなおのこと話が弾むものになるだろう。思い出の多い高齢者においてもスポーツの話題は格好の“話のネタ”になることが新たな研究で示されている。

■スポーツの思い出話には社会的利益がある

 南オーストラリア大学の研究チームは、孤独や社会的孤立に対処するために、高齢者のスポーツの思い出や経験を活用するコミュニティ回想プログラムである「Sporting Memories」を実施しており、参加した高齢者の経験と効能を調査している。

 調査をまとめた研究成果が2024年7月に「Frontiers in Public Health」に掲載され、思い出を振り返る手段としてスポーツの話題を活用することは、参加者にとって身近なことと考えられ、社会的利益があることが報告されている。

 身内や友人知人などが減り、人間関係が希薄になった高齢者は、孤独、うつ病、社会的つながりの欠如などを経験することがあり、高齢者の社会的孤立と孤独の増加に対処するプログラムとアプローチが必要とされている。

■スポーツの話題なら誰もが疎外感を感じない

 これらの課題に対処することを目的とした取り組みの1つがこの「Sporting Memories」プログラムで、65歳以上の人々(その多くは認知症患者)を歴史的なスポーツイベントについて話し合うことで積極的に結びつける試みが行われている。

 65歳以上の16名(女性4名、男性12名)が参加者した調査では、過去のスポーツイベントを話題にして「何でも自由に話せる」「疎外感を感じない」「共有して学ぶ機会」という3つのテーマに則した話し合いが行われ、その後に参加者は、話し合いでどのように社会的つながりを築けたか、安全で受け入れられていると感じたか、お互いについてより多くを学んだかを振り返って報告した。

 調査の結果、このプログラムによって参加者はほかの人と思い出を共有したり新たなことを学んだりする機会が与えられ、認知機能と社会参加が刺激されたことが突き止められている。研究チームによれば、高齢者が思い出を共有でき、新しい友情を育むためのグループ環境を提供することで、高齢化の課題の解決に役立っているということだ。

友達が増える「ノスタルジア戦略」とは?

「Sporting Memories」プログラムはもともとイギリスで開発されたもので、認知機能の変化、孤独、うつ病などを抱えながらスポーツに興味を持つ人々に参加を促すことを目的としている。2019年に南オーストラリア州にライセンス供与されたことで現在、同州内の7つのコミュニティに提供されている。

 参加者の中には、社会的に孤立していたり​​孤独だったりする人もいれば、不安やうつ病に苦しんでいる人や、軽度の認知機能障害を抱えている人などもいるのだが、グループでの話し合いに加えてゲーム、クイズ、ゲストスピーカーのスピーチ、スポーツ観戦など、さまざまなアクティビティを通じて人的交流を促している。

 過去のスポーツイベントの“名勝負”の話題は、特に共有する者同士であればすぐに話が盛り上がり、親交を温めることができるのだろう。スポーツの話題に事欠かない高齢者はいつまでも話し相手に恵まれそうである。

■懐かしい思い出を共有すると仲良くなれる

 懐かしい思い出を共有することで友人知人の数が維持、あるいは増えることは別の研究でも示されている。スポーツイベントに限らず、過去の思い出を振り返り、他者とノスタルジーを共有することで高齢になったとしても友人が増えるというのである。

 京都大学とニューヨーク州立大学バッファロー校の合同研究チームが今年3月に「Cognition and Emotion」で発表した研究では、懐かしさを感じやすく、その懐かしさを他者と共有する者は長期的には親しい友人の数が多くなることが報告されている。

 アメリカとヨーロッパの約1500人を対象に行われた3つの調査から、懐かしさを感じやすい人は人間関係を維持するためにより多くの努力をし、長期的には親しい友人の数が多くなる傾向が確かめられた。

 加齢に伴って親しい友人の数は減少する傾向があるのだが、今回の研究では高齢者であっても懐かしさを感じやすい人は、7年間の調査期間中に親しい友人の数を維持していたことも確認された。

■孤独を感じたくないなら昔話に浸ろう

 ノスタルジアを感じることで、人的交流の欲求が増すことが示唆されており、過去の大事な思い出を振り返る人ほど、人間関係の重要性を再認識し、それを維持する努力をする傾向があり、そしてこの努力が友人の維持と増加に繋がっていることになる。

 もちろん過去の思い出に浸ってばかりもいられないのが現代の社会生活だが、話し相手や友人を増やしていきたいのなら“ノスタルジア戦略”はかなり有効であるようだ。

そして高齢者であればあるほど“昔話”は自然に受け止められるというアドバンテージもある。少し先の未来で誰かと2023年の「ワールド・ベースボール・クラシック」の話で盛り上がることがあるとすればなかなか愉快なことかもしれない。

※研究論文
https://www.frontiersin.org/journals/public-health/articles/10.3389/fpubh.2024.1424080/full

※参考記事
https://www.unisa.edu.au/media-centre/Releases/2025/blast-from-the-past-sports-reminiscence-hits-loneliness-out-of-the-park/

文/仲田しんじ

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