意外に抵抗なく受け入れてもらえて、ひと安心
義母が入居している施設へはドアツードアで4時間だが、コロナ感染予防のため、面会時間は15分に限られている。短い時間で要領よく説明しなくてはならない。
袋から取り出して実物を見せると「おや、意外に小さいんだねえ」と驚いた様子。「テレビ電話」と言う言葉から、小型テレビサイズをイメージしていたのかもしれない。
義母には、こちらからかけると自動的につながるので、何もしなくていいことを伝え、義母からかけたい時の操作方法をやってみせた。義母は何度か念を押して確認した後、すんなり理解してくれて「これならできそう」と安心した様子。
事前に愛猫の写真を仕込んでおいたアルバムにはあまり興味を示さなかったが、逆に「使うのはこの『家族と話す』だけ、あとは無視していいから」とよりシンプルに伝えることができたのが、よかったのかもしれない。
意外なことに、アルバムよりも喜んでくれたのが、使わない時に自動的に切り替わるデジタル時計表示。「大きくて見やすいねえ」と大喜びだった。目が見えにくくなると、小さな置時計よりもこういう大きな文字表示の時計のほうがいいし、ここまで文字が大きい時計もあまりないのだろう。意外なメリットだった。
問題なく使えそうなことがわかったところで、時間切れ。「明日の朝、10時にかけるから、テレビ電話の前で待っててね」と伝え、帰途についた。
自宅から通話してみた
翌朝10時、さっそく義母に通話。
問題なく会話を開始できた。TQタブレットを置いた机の位置が高く、最初は頭の上半分しか映らなかったが、自分で画像を見て位置調整(後でわかったが、高さを調整できる専用の台が別売りであるらしい)。大の猫好きで、YouTubeで猫の動画を見るのが何よりの楽しみだという義母に、わが家の愛猫と会話をしてもらった。
しばらく、生で猫と触れ合っていない義母は大喜びで、さかんに愛猫の名前を呼びかける。愛猫は、自分の名前が呼ばれているので、あたりをキョロキョロ見回して、声の主を探している様子。
それを見て義母も筆者夫婦も、声を揃えて大笑い。こんなに笑い合ったのはいつぶりだろう。TQタブレットを使ってみて本当によかったと、しみじみ実感した。
使ってみて気がついた課題
その後、何度か使用してみて気がついたのは、通信状況が不安定だと、つながりにくいこともあるということ。また義母から通話のリクエストがあってもプッシュ通知のため、仕事でスマホから目を離していると気がつかない。たまたまスマホアプリの「みまもり」機能で履歴をチェックして数時間後に気づいたが、すでに義母の就寝時間だった、ということもあった。
ただこれは、アプリの「通話の使い方」というタブの中の「タブレットから届く通話リクエストを常に表示したい」という欄をタップして解決方法がわかった。年齢でひとくくりにはできないが、90歳の義母が使えているということは、70代、80代であれば、問題なく使えるのではないだろうか。
取材をした時、TQタブレットを企画したTQコネクト株式会社取締役副社長の江部宗一郎氏は「アジャイルで開発に取り組んでいるので、使用されている方々の声を反映して、スピーディに進化させていきたい。タブレットはもちろん、スマホアプリもどんどんシンプルにしていく」と抱負を語っていた。これからの進化にも、期待したい。
TQコネクト株式会社取締役副社長の江部宗一郎氏。施設にいた祖母とコロナ禍で面会できず、コミュニケーションがとれないまま亡くなってしまった原体験から、TQタブレットを企画した
2025年、団塊の世代のすべての人が75歳以上の後期高齢者になり、これからの10年後には3人に1人が高齢者になるといわれている。TQタブレットは、高齢者とデジタル機器をつなぐ新たな架け橋になるかもしれない。
取材・文/桑原恵美子
取材協力/TQコネクト株式会社