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「ハック」という言葉の由来は?常識を疑い、可能性を探り、具体的な行動に移すハッカー精神の源を探る

2025.04.08

「Hack Your Life – ハックで世界をちょっと面白く」
第1回:そもそも「ハック」とは何か?

「ハック(Hack)」という言葉を耳にしたとき、あなたはどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。一昔前は「コンピューターへの不正アクセス」や「システム破壊」など否定的なイメージをもって語られることが多いかもしれません。しかし実際には、ハックには“革新的なアイデアで既存の仕組みを変える”という創造性や実験精神が詰まっています。そこには最新のテクノロジーを駆使してシステムの可能性を押し広げようとする探究心と、常識を超えた視点で新しい価値を生み出すポジティブなエネルギーが存在するのです。

 本連載「Hack Your Life – ハックで世界をちょっと面白く」は、私たちの身近にある課題や仕事、そしてテクノロジーをハック的思考で見つめ直し、より便利で、より楽しいライフスタイルを提案していくシリーズです。第1回となる今回は「そもそも『ハック』とは何か?」をテーマに、その言葉の由来やハッカー文化の成立背景、現代における広範な意味合いについてテック寄りの視点で掘り下げてみたいと思います。

1.「ハック」の由来:MITの鉄道模型クラブから拡がった精神

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 ハック(Hack)という言葉の古い用例は多岐にわたり、「切り刻む」といった意味をもつことがあります。しかしコンピューター分野での「ハック」は、1960年代のMIT(マサチューセッツ工科大学)が大きな起源だと言われています。とりわけ有名なのが、MITのTech Model Railroad Club(TMRC)での活動です。

 TMRCでは、鉄道模型のレイアウトや制御システムをいかに面白く、高度にするかを競い合っていました。彼らは与えられたシステムをそのまま受け入れるのではなく、回路を改造し、マニュアルにはない挙動を生み出す工夫(ハック)を次々に生み出していきます。こうした「ハッキング行為」を行うことでシステムの奥深くに入り込み、新たな可能性を切り開く。その過程で培われたのが、独特の“ハッカー文化”なのです。

 当時のハッカーたちは鉄道模型に飽き足らず、大学に設置された大型コンピューター(たとえばDECのPDPシリーズなど)へと興味を移していきました。研究のために用意されたコンピューターを自由に触り、バグを発見しては修正し、遊び心あふれるプログラムを作る。その連続が“コンピューターを使い倒す”という姿勢を醸成していき、これが後の「ハッカー精神」の基礎を形づくったのです。

2. ハッカー文化の拡張:オープンソースと共有の精神

 MITのハッカー文化は、やがて学外にも影響を広げ、さまざまなテクノロジーコミュニティやスタートアップを生み出す母体となっていきます。その背景には「誰もが自由にシステムを触れるべきだ」という考え方がありました。これは現代のオープンソースやパブリックドメインの精神と深く重なります。

 とりわけ重要なキーパーソンとして挙げられるのが、リチャード・ストールマン(Richard Stallman)です。ストールマンはMITのAI研究所で活躍する中で、ソフトウェアが独占的に扱われることに対し危機感を覚えます。彼は「ソフトウェアのソースコードは誰もが自由に利用・改変・再配布できるべきだ」と考え、GNUプロジェクトやフリーソフトウェア運動を推進しました。いわば、ハッカー精神を社会的なムーブメントにまで高めた中心人物の一人といえるでしょう。

 この思想は後に、Linuxカーネルを開発したリーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)らにも受け継がれ、世界中のエンジニアたちがソースコードを共有しながら改善を重ねる“オープンソース文化”へと発展していきました。結果として、私たちの使うスマートフォンやクラウドサービスの多くがオープンソース技術をベースに成り立つようになり、ハッカー精神が現代のITインフラに深く根づいているのです。

3. 「ハック」=「不正アクセス」だけじゃない:クラッカーとの区別

 ハッカー文化が世界に広がる一方で、「ハッキング=不正アクセス」「ハッカー=犯罪者予備軍」というイメージも同時に定着してしまいました。その原因の一つには、メディアがコンピューター犯罪のことを安易に「ハッキング」と呼んできた歴史があります。実際には、ホワイトハット(善意のハッカー)とブラックハット(悪意のハッカー)の区別があり、前者はシステムの脆弱性を見つけ出して修正するセキュリティ・リサーチャー的な役割を担うことも多いのです。

 たとえば近年のセキュリティ業界では、企業や政府機関が自社システムの脆弱性を発見してもらうために「バグバウンティ(脆弱性報奨金)」という仕組みを導入するのが一般的になりつつあります。これはホワイトハッカーを正式に招き入れ、正当な対価を支払いながらセキュリティを強化するプログラムであり、ハッキング技術が社会にとって不可欠なものであることを象徴する動きといえます。

 もちろん「ハック」という言葉が指す行為はセキュリティ分野だけにとどまりませんが、「システムを巧みに扱う」という本来の意味合いを押さえる上で、ハッキングとクラッキング(不正行為)との区別は非常に大切です。私たちがここでいう「ハック」は、あくまでもクリエイティブかつ革新的な“問題解決”や“可能性の拡張”のことを指します。

4. スティーブ・ウォズニアック:ガレージからのイノベーション

 “ハッカー”という存在が一般社会に大きく認知されるきっかけとなった人物の一人が、Apple共同創業者のスティーブ・ウォズニアック(Steve Wozniak)です。彼は学生時代から機械いじりが大好きで、電話網をハックする“ブルーボックス”を作った逸話などが有名ですが、それは単なる悪ふざけではなく「システムの仕組みを徹底的に理解し、創意工夫で別の用途に転用する」というハッカー精神の表れでもありました。

 後にウォズニアックは、スティーブ・ジョブズとともにガレージからAppleを創業し、Apple IやApple IIといったパーソナルコンピューターの先駆けを生み出します。彼のハッカー気質がなければ、現在私たちが手軽に利用しているスマートフォンやPCの普及はもっと遅れていたかもしれません。ウォズニアックの成功が示したように、「ハッカー」は必ずしも社会の敵ではなく、新しい時代を切り拓く先駆者でもあるのです。

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