
改修のため3年以上休館していた横浜市西区の「横浜美術館」が全館オープンした。ハード面の改修のほか、無料エリアの拡充、バリアフリー化、子ども向けエリアの新設などソフト面でも工夫を凝らし、だれもが思い思いに過ごせる美術館を目指している。休日に家族で訪れたり、仕事中の休憩に立ち寄ったり。「だれでもウェルカム」な横浜美術館の進化ポイントを紹介しよう。
たくさんのイス。公園のように、誰もがくつろげる無料エリアを拡充
誰でも入れる、横浜美術館の「グランドギャラリー」。
日本のモダニズム建築の巨匠である、建築家・丹下健三氏による設計で1989年に開館した「横浜美術館」。開館から30年以上が経過して空調設備等の更新が必要となり、2021年に休館。そして2024年までの約3年間で改修工事を行い、2025年2月8日(土)に全館オープンした。コンセプトは「みなとが、ひらく」。横浜開港の歴史になぞらえており、バリアもボーダーも飛び越え、どんな人も歓迎する美術館へと進化した。
丹下健三氏が建物に使った、御影石。
丹下健三氏の設計はそのままに、空間構築設計は、建築家の乾久美子氏とグラフィックデザイナーの菊地敦己氏が担当。丹下健三氏が使った御影石からピンクなど11色を抽出し、そのカラーチャートをもとに什器を製作している。
テーブルは車椅子が入れる高さのものも設置。
「ひらけた空間として、どなたでも来ていただけるようにするために、イスを館内に多く設置しました」と話すのは、横浜美術館の広報・高橋 未早さん。イスやテーブルは横浜市内の団体からも意見を聞き、障害を持つ人にとっての座りやすさも考慮してデザインされている。近くで働く人も、「ただ休憩しに公園のような感覚でふらっと来てほしい」と、高橋さんは言う。
無料で入れる「ギャラリー9」。
気軽に誰もが来られるように、無料でアートに触れられるエリアも拡充。「じゆうエリア」として、2階「グランドギャラリー」、「ギャラリー8」、「ギャラリー9」、「美術図書室」、3階一部エリアはチケット無しで無料で鑑賞可能。横浜美術館所蔵作品を中心に見ることができ、特に「ギャラリー9」は改修によって新設された開放感のある空間だ。現在はガラス作品が展示され、時間によって陽の入り方が変わるため、時間ごとに多彩な表情を見せてくれる。
高橋さん「『美術館はちょっと敷居が高い』と思われている人も多いので、アート初心者の方に気軽に来ていただけるようにしました」
子どもの知的好奇心をくすぐる仕掛けを用意。家族連れにアプローチ
展覧会の後半に設置された「子どもの目でみるコーナー」。
ターゲットは全世代だが、リニューアルにあたって特に注力したのは「家族連れ」。子どもに興味をもってもらえるような空間を増やし、2025年6月2日(月)まで開催中の横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ(一般 1,800円、大学生 1,500円、高校・中学生 900円、小学生以下無料)」では「子どもの目でみるコーナー」を設置。子ども用の小さなイスがあり、子どもがゆっくり観られるだけでなく、大人も子どもの目線でアートを楽しめる。
「ビビっと!びじゅつ探検カード」と、「こどもミッションシート」。
また、子どもが楽しくアート鑑賞できる仕掛けが「ビビっと!びじゅつ探検カード」。作品や建築の一部を切りとったカードを1枚選び、そのカードがどの作品・建築なのかを探して楽しめる。このほかにも5つのミッションをクリアすると美術館の楽しみ方やマナーを学べる「こどもミッションシート」が用意され、家族同士のコミュニケーションにも役立つ。
ビジネスパーソンにおすすめの作品も。「おかえり、ヨコハマ」
「おかえり、ヨコハマ」展示風景。横浜に住む戦後の女性のありのままを捉えた、写真家・常盤とよ子氏の作品たち。
横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」は、縄文時代から現代までの横浜の歴史とともに作品を鑑賞できる企画展。開港、関東大震災、第二次世界大戦、横浜美術館開館などの歴史を振り返ることができるため、歴史好きにもおすすめの内容だ。特に日本で初めてできた写真館が横浜と長崎ということもあり、横浜美術館はまだ写真が珍しい時代の作品も多く所蔵している。
「おかえり、ヨコハマ」展示風景。奈良美智氏、ルネ・マグリット、ピカソなど有名アーティストによる作品も。
横浜美術館 館長の蔵屋美香さんがビジネスパーソンにおすすめしてくれた作品が奈良美智氏の《春少女》。作品の前に立ち、焦点を合わせずにぼーっと観ていると、大きな少女が迫ってくるような感覚に誘う作品だ。子どもの頃、周囲のすべてが大きく見えた感覚を思い出し、忙しく働く日々の中で一旦立ち止まって、心を落ち着かせられるような体験ができる。
さまざまな仕掛けで、より多くの人にとって足を運びやすくなった「横浜美術館」。ここまでの大規模改修は横浜美術館にとって初めてのことで、30年以上前とは変わった、現代人のニーズに合わせた美術館へと進化した。特に平日の館内はとても静かでゆったりと過ごすことができ、心身をととのえるウェルネススポットとしてもぜひ利用してみてほしい。
・横浜美術館
HP:https://yokohama.art.museum/
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
取材・文/小浜みゆ
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