
物価高の今、しかし航空券は探せば安いものもある。それも、目玉が飛び出るくらいの安さのチケットだ。
LCC(格安航空会社)を指しているわけではない。むしろ、LCCは今や「割高のキャリア」として認識されているきらいもある。その理由については後述するが、最安値の航空券を探せばレガシーキャリアの便に突き当たることが多いのだ。
そして、預入荷物を考慮した上でとことんまで安く抑えるとしたら、高確率で中国のキャリアがヒットする。
実はLCCが割高な理由
筆者は今年中にはスペインへ行きたいと思案している。
ヨーロッパは東南アジアとは違い、まるまる半日旅客機に乗って移動しなければならない。その分だけ航空券代も高いが、できれば往復で10万円以内に抑えたい。そこで、Trip.comを使って東京―マドリードの往復便を検索する。今回は6月に旅行へ出かけることを想定し、調べてみた。
6月3日羽田出国、同11日羽田帰国の便が最安8万円台だったが、これは早々に売り切れ。代わりに提示された価格は、9万3150円だった。
運が良ければ東京からマドリードまでの便は往復9万円切り、そうでなくとも10万円までには収まるという認識で概ね間違いないだろう。そして、この便は中国国際航空のものである。
中国国際航空は社名通り中国のフラッグキャリアで、LCCではない。ということは、ちゃんと23kg×2の預入手荷物プランが備わっているということでもある。
LCCは、何もオプションをつけなければ文字通り最安値で利用できるが、預入荷物をつけた場合価格がレガシーキャリア以上になってしまうことがよくある。もちろん、機内食もない。無料で出てくるのは上蓋がビニール製のカップの水くらいだ。また、有料機内食の売上がなくなるのを防ぐため、機内に飲食物を持ち込むことを禁止している。
12、3年前はブームにすらなったLCCだが、実は海外旅行初心者にとっては使いやすいとは言えない移動手段なのだ。
北京で宿泊が必要な航空券
それと比べると、レガシーキャリアは非常に快適である。上記の中国国際航空の便も、マドリードまでストレスフリーな旅を楽しめる……と言いたいところだが、日程をよく見れば「ああ、やっぱりこれは値段相応だな」と悟ってしまう部分も数多く見受けられる。
まずは、出発時間。往路の羽田空港からの出発時刻は16時、マドリードへの到着時刻は現地時間の翌12時45分。これだけ見れば程良い頃合いかもしれないが、経由地の北京で12時間以上過ごさなければならない。北京への到着時刻は18時45分、北京からの出発時刻は翌7時で、その2時間前には北京の首都国際空港にチェックインしなければならないとすると、北京中心部のホテルで1泊して空港に戻る……という選択が取りづらいスケジュールであることはお分かりいただけるだろうか。空港周辺に良いホテルがあればいいが、いずれにせよ北京観光はできないと言い切ってもいいだろう。
そして、復路も当然ながら北京経由である。ここでもまた12時間50分の時間を過ごさなければならない。
預入荷物は北京で受け取り不要とはいえ、これはさすがに使いづらい……。ホテル代も考慮すると、実は下手に最安値の航空券を買うよりももう1、2万円高い航空券を選んだ方が(即ち、北京市内で宿泊する必要のないスケジュールの航空券を買った方が)いい気もする。
スケジュールがタイト過ぎる航空券
次に、上述と同じ6月3日から同11日までの東京ータイ・バンコク行きの往復券を調べてみた。すると、最安値でヒットしたのはやはり中国国際航空である。価格は往復3万1,830円。もちろん、23kg×2の預入荷物込みの料金である。
だが、これも結論から言えば使いやすいとは言えないスケジュールだ。
16時に羽田を出発して18時45分に北京着。そこからは、上記のマドリード行きとは逆に乗り継ぎのための猶予が極めてタイトになっている。1時間20分後の便に乗ってバンコクへ……という相当忙しいスケジュールなのだ。中国は乗り継ぎの乗客に対しても荷物検査が厳しいので、出発の30分前にはゲートにいなければならないことを考えると余裕はせいぜい30分。うひぃ、辛い!
筆者の経験から言うと、乗り継ぎの時間は3時間弱が一番いいかもしれない。2時間45分、或いは2時間30分、そのあたりだ。これなら長時間の待機を強いられることもなく、かといって急かされることもない。が、最安値の航空券でそのような「程よい乗り継ぎ便」はまずないと考えていいだろう。資本主義の原理原則でもあるが、皆が望むような人気商品はどうしても価格が高くなる。
話をまとめると、最安値の中国キャリアは出発・到着時刻が深夜だったり、乗り継ぎにかかる時間が長かったり逆に短かったり……という具合である。これに耐えられるか対処できる人であれば、東京ーマドリードの8万円台、東京ーバンコクの3万円台の往復便は最適かもしれない。
文/澤田真一
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