
高すぎだろガソリン!
いきなりこのような愚痴から記事を始めるのは気が引けるが、現実問題ガソリン価格は右肩上がり。一時的に安くなることはあっても、その後はドンと高騰してそのまま高止まり……という状況が続いている。
この分では、プライベートに車で移動する行為は「贅沢なもの」になってしまいそうだ。
そこで見直されているのが、二輪車である。それも、原付よりもさらに排気量の大きい「普通車免許では乗れないバイク」だ。実用的な速度を発揮することができ、なおかつ四輪車よりも遥かに燃費が良い車両である。
普通車免許所持者でも、小型二輪免許や普通二輪免許を取得するためにはそれ相応の費用がかかってしまう。しかし、昨今の燃料事情を考えれば「元は十分に取れる」と断言してもいいだろう。
その上で、ここでは「250ccトラッカー」を強く勧めたい。
2000年代に流行った「トラッカー」とは
西暦2000年前後、日本では「トラッカー」と呼ばれる種類のバイクが大流行していた。
トラッカーの定義は複数見受けられるが、アメリカではサーキットよりも小さな競技場を周回する「トラックレース」というものが頻繁に開催され、それに用いられるマシンを街中で乗り回せるように手を加えたもの……と解説すれば概ね間違いないか。90年代前半までの日本ではレーサーレプリカが人気を集めていたことを考えると、これはまさに「流行の大転換」である。
カウルのない鉄製フレームのシンプルな車体に搭載された低馬力の空冷単気筒エンジンは、高回転でぶん回す方向性の代物ではない。が、力強い低速トルクで確実に走り出し、オンロードだけでなく多少のラフロードも難なく走破できる器用さがトラッカーには備わっている。たとえ転倒したとしても、そもそもがシンプルな造りのため壊れる箇所が少ない。
さらに、排気量が250ccの場合は車検義務がない。我が国では250ccが車検が免除される最大排気量であり、それ以上のクラスと比較すると維持費の面で大きなメリットが発生するのだ。もちろん、250ccトラッカーは燃費の面でも優れている。
しかも、この車種の中古車価格は総じて安めである。空冷単気筒はそもそもが丈夫な造りのため、走行距離を重ねた車両でも日々の実用に足るパフォーマンスを発揮してくれることが多いのだ。
山道もスイスイ!
筆者が所有するトラッカーは、スズキのグラストラッカー ビッグボーイ2002年生産型である。
燃費は、街乗りでリッターあたり32~35kmといったところか。もちろん、これはカタログ値ではなく筆者の大まかな実測である。ハイブリッド車ほどの低燃費で、さらにグラトラBBには「いざとなれば自転車のように押して歩くことができる」という他に代え難いアドバンテージがある。
高速道路には軽自動車の料金で乗り入れることができ、低速トルクに優れているおかげでクラッチ操作にまだ慣れていない初心者でも扱いやすい。単身での行動で、冬の防寒対策ができていれば「これ1台」で何とかなってしまうのだ。
日本は山岳国である事情も考慮すべきである。
筆者の自宅も静岡県静岡市葵区の南アルプスを見据える位置にある。ここから県道(険道と呼ばれてしまっているが)を北上すれば、梅ヶ島温泉や口坂本温泉、そしてアニメ『ゆるキャン△』第3期の舞台になった井川にも行くことができる。こうした原付で行くにはいささかキツいところへ足を運ぶにも(それでも『ゆるキャン△』の志摩リンはヤマハ・ビーノで井川まで行ったが)、250ccトラッカーは力強い足として大活躍してくれる。