
チェーン店などのアルバイトの時給は、昼間よりも深夜の方が高く設定されています。これは、労働基準法によって深夜手当の割増しが義務付けられているためです。
特に最近では、最低賃金が大幅に引き上げられているため、大都市では深夜の時給が1,300円を超えるところが多くなっています。
本記事では、アルバイトの深夜労働の時給が高い理由について、労働基準法のルールを踏まえながら解説します。
1. アルバイトの深夜労働の時給はなぜ高いのか?
アルバイトの時給は、昼間や夕方の時間帯よりも、深夜の時間帯の方が高く設定されているケースが大半です。
たとえば昼間の時給が1,000円~1,100円程度なら、深夜の時給は1,250円~1,400円程度に設定している店舗や施設がよく見られます。
深夜帯の時給が高いのは、労働基準法によって深夜手当の支給が義務付けられているためです。心身への負担が大きい深夜労働について金銭的な補償を行うとともに、過度な深夜労働を抑制する目的があります。
午後10時から午前5時までの間に働いた労働者には、通常の賃金に対して25%以上の深夜手当を支払わなければなりません。
たとえば昼間の時給1,000円なら、深夜の時給は1,250円以上とする必要があります。
2. 深夜労働の賃金の最低ラインは?
アルバイトの深夜帯の時給は高いように見えますが、深夜手当が加算されていることを考慮すると、実際には法律によって支給が義務付けられた最低ラインに過ぎないことが多いです。
アルバイトに対して支払うべき時給の最低ラインは、最低賃金法によって定められています。一部の業種を除き、都道府県別に設定された「地域別最低賃金」が適用されます。
上記の表は、地域別最低賃金額(2024年10月~)の都道府県別ランキングです。
地域別最低賃金額に深夜手当(25%)を加算した額は、最も高い東京都で1453.75円、最も低い秋田県で1188.75円となっています。
3. 深夜手当が適切に支払われていないときはどうすべき?
深夜手当が適切に支払われていないときは、勤務先に対してその旨を指摘し、未払いとなっている深夜手当の支払いを求めましょう。
勤務先が請求に応じない場合は、労働基準監督署に相談することが考えられます。
労働基準監督署は、深夜手当の不払いなど労働基準法違反が疑われる場合には、事業場に対して立ち入り調査(臨検)を行います。
実際に労働基準法違反が認められるときは、事業場に対して是正勧告を行います。是正勧告がなされれば、深夜手当が適切に支払われるようになる可能性が高いでしょう。
勤務先に対して直接深夜手当を請求したいときは、弁護士に依頼することも選択肢の一つです。ただし、少額の請求では費用倒れになるおそれがある点に注意を要します。
加入している保険に「弁護士費用特約」が付いていれば、ほとんど自己負担なく弁護士に依頼できます。保険会社に問い合わせて、保障内容を確認してみましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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