
マイナ保険証への移行が進む中、利用登録の解除を希望する人も多い。本記事ではマイナ保険証の解除申請の手順や、解除のメリット・デメリット、よくある質問について解説する。
目次
2024年12月に現行の健康保険証の新規発行が終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行が進んでいる。一方で、さまざまな理由によりマイナ保険証の利用登録解除を希望する人も一定数いるようだ。とあるニュースでは、2024年11月までに登録解除希望者が1万3000件余りに上ったことが報じられている。
本記事では、マイナ保険証の解除申請手続きの方法や、解除におけるメリット・デメリットを解説する。マイナ保険証に移行するのに解除して大丈夫か、など解除に関するよくある質問についても回答しよう。
マイナ保険証の利用登録の解除申請方法
マイナ保険証とは、健康保険証の利用登録をしたマイナンバーカードだ。利用登録をすれば、医療機関や薬局で健康保険証としての利用が可能になる。しかし、利用登録は必須ではなく、2024年10月からは登録後も解除ができるようになった。
まずは、マイナ保険証の解除申請の方法を加入している保険者別に解説する。
■国民健康保険加入者の場合
国民健康保険に加入している場合は、各自治体の国保年金課など担当の窓口で申請手続きを行う。自治体によっては、郵送での受付やオンライン申請も可能だ。各自治体で受付可能な方法が異なるため、お住まいの自治体に問い合わせてみよう。
なお、原則本人の申請のみの受付だが、事情がある場合には代理人による受付も可能(未成年者の場合は、同一世帯の世帯主もしくは被保険者などが申請可能)。解除申請に必要なもの、代理人の受付方法なども自治体によって異なるため、事前に確認の上、手続きを行おう。
■協会けんぽ加入者の場合
協会けんぽ加入者の場合は、加入している協会けんぽ都道府県支部に「マイナンバーカードの健康保険証利用登録の解除申請書」と「資格確認書交付申請書」の二点を提出する。
申請書は、全国健康保険協会のホームページから印刷が可能。その他に不明な点があれば、協会けんぽマイナンバー専用ダイヤルで問い合わせを受け付けている。
【協会けんぽマイナンバー専用ダイヤル】
0570-015-369(ナビダイヤル)
■共済組合加入者の場合
共済組合加入者が解除申請をする場合は、勤務先の共済事務担当に「マイナンバーカードの健康保険証利用登録の解除申請書」を提出し、その後に組合にて手続きが行われるのが一般的な流れ。組合によっては手順が異なる可能性もあるため、まずは共済事務担当に確認が必要だ。
任意継続組合員は、基本的に直接共済組合に解除申請書を送付する。詳しい受付方法や解除申請書については、所属する共済組合のホームページ等で確認の上、手続きしよう。
マイナ保険証の解除申請を希望する理由
2024年10月からマイナ保険証の利用登録解除の受付が開始され、2025年2月時点で5万8千件を超える解除手続きが行われた。解除を希望した人々は、なぜ一度は利用登録をしたマイナ保険証を不要だと判断したのか。ここからは、マイナ保険証の利用登録解除を希望する理由について解説する。
参考:毎日新聞|マイナ保険証の解除申請、累計で5万8000件に 1月は1万件超える
■持ち歩くのに不安がある
マイナ保険証を持ち歩くのに不安があり、解除を希望する声は多い。マイナ保険証には、顔写真や氏名、生年月日、住所、マイナンバーなどさまざまな情報が記載されている。さらに身分証明書として利用できるため、自治体サービスや民間オンライン取引での利用も可能だ。
便利である反面、だからこそ日常的に持ち歩いて紛失や盗難に遭うことを不安視する声もある。マイナ保険証の悪用や個人情報漏洩を心配し、リスク回避のために解除を希望するようだ。
■利便性を感じない・トラブルがあった
マイナ保険証に対して利便性を感じず、解除申請を行うケースも見られる。詳しい理由として、現行の健康保険証で十分、利用している医療機関がマイナ保険証に対応していないなどの理由が挙げられる。
また、マイナ保険証を利用してトラブルがあったため、解除したいとの声もある。例えば、マイナ保険証は、医療機関や薬局に設置されている専用のカードリーダーに読み込ませて利用する。しかし、カードリーダーの不具合や登録された情報の誤りなど、何らかの理由で診察や処方がスムーズに進まなかったトラブルが多数報告されている。
トラブルの事例は、次の通り。
- 保険資格が無効になっていた
- 該当の被保険者番号がなかった
- 氏名や住所に誤りがあった
- 負担割合に誤りがあった
- カードリーダーの接続不良や認証エラーがあった
このようなトラブルの発生や、マイナ保険証による利便性の向上を感じられないことも、利用者が解除を希望する理由だ。
■制度が信用できない
現行の健康保険証からマイナ保険証に移行する制度そのものに不安を感じ、解除申請を希望する人もいる。例えば、「マイナポイント付与を目当てに利用登録したが、必要性を感じない」「使い方やメリットが分かりにくい」「現行の健康保険証廃止は強引に感じている」といった声が上がっている。
■介護施設がマイナ保険証を預かれない
介護施設などにおいて、個人情報管理の観点からマイナ保険証を預かることが難しいという声もある。そのため、マイナ保険証を解除して健康保険証の代わりとなる資格確認書の交付を希望する人が多い。
ちなみに、資格確認書はマイナンバーカードの未取得者やマイナ保険証の利用登録をしていない方を対象に交付されるもので、基本的にマイナ保険証との併用はできない。ただし、高齢者や障害のある方など自身ではマイナ保険証の管理が困難な場合は、マイナ保険証を解除しなくても資格確認書の交付が可能。
マイナ保険証の利用登録解除にデメリットはある?
マイナ保険証の利用登録を解除することで、何かデメリットが発生するのだろうか。マイナ保険証の利用登録を解除するメリットとデメリットについて、事前に確認しておこう。
■マイナ保険証の利用登録を解除するメリット
マイナ保険証の利用登録を解除した場合、次のようなメリットが挙げられる。
- マイナンバーカードを持ち歩かなくて良い
- 資格確認書が交付される
- 従来と同様の手順で医療機関を受診できる
マイナンバーカードを携帯する必要がなくなり、紛失や盗難のリスクが回避できる。個人情報漏洩に対する不安も軽減されるだろう。また、現行の健康保険証、もしくは資格確認書で医療機関が受診できるため、カードリーダーのトラブルに悩まされることもない。
■利用登録解除のデメリット
一方で、マイナ保険証の利用登録を解除することによるデメリットも挙げられる。
- 自身の医療情報を確認できない
- 転居や転職による保険証の切り替えに時間がかかる
- マイナ保険証による手続きの簡略化が適用されない
マイナ保険証は、マイナポータルから自身の医療情報が確認できるが、利用登録を解除するとデータの参照ができなくなる。マイナ保険証では必要なかった、転居や転職による健康保険証の切り替え更新も必要だ。
また、マイナ保険証では不要だった医療費控除や高額療養費制度の手続きが必要になる。
マイナ保険証の解除に関するよくある質問
マイナ保険証の解除に関するよくある質問を紹介する。利用登録解除について疑問や不安がある方は、回答を参考にして検討しよう。
■申請手続きが完了するにはどのくらいかかる?
マイナ保険証の利用登録解除は、申請後1~2か月で手続きが完了する。申請日の翌月末に、システム上で解除される仕様となっている。手続き完了の連絡や通知はないが、マイナポータルにおいて、利用登録の有無が確認できる。
■マイナ保険証に完全移行したらどうなる?
2024年12月に健康保険証の新規発行が終了したことにより、厳密にはマイナ保険証への完全移行は実施されている。ただし、現行の健康保険証は記載されている有効期限まで、有効期限のないものも2025年12月1日までは利用可能。
マイナ保険証の利用登録をしない場合、手元にある健康保険証の有効期限内に資格確認書が交付される。2025年12月2日以降は、その資格確認書を利用して医療機関を受診できる。
■解除後に再登録できる?
利用登録を解除しても、再登録は可能だ。2025年3月現在、以下の方法で利用登録できる。
- マイナポータル
- セブン銀行ATM
- 医療機関・薬局に設置されているカードリーダー
■後期高齢者医療制度に加入している場合の解除申請方法は?
後期高齢者医療制度に加入している場合、各市町村の窓口で申請を行う。自治体により必要なものが異なるため、お住まいの地域の国保年金課後期高齢者医療制度担当に問い合わせよう。
■マイナポータルから解除申請できる?
2025年3月現在、マイナポータルからの解除申請はできない。マイナ保険証の解除を希望する場合は、加入している保険者の受付フローに従って解除申請する必要がある。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部