
■連載/大森弘恵のアウトドアへGO!
フィンランドでは戸建てもアパートもサウナ付きが当たり前、街中や山の中にも公共サウナがあるなどサウナが生活に根付いている。サヴォッタはそんなサウナ大国、フィンランドのアウトドアブランドだ。
▲サヴォッタのサウナ「ヒイシ」はフィンランド語で”神聖な場”という意味を持つ
フィンランド人にとってサウナはただ汗を流すためのものではない。かつてはサウナ室で冠婚葬祭や出産が行われてきたほど神聖な場であり大切な文化。
海外で暮らすフィンランド人が気軽にサウナを利用できずに困っていると聞いたサヴォッタ社員が、テント作りの技術を用いて持ち運びできるサウナ用テントとストーブを贈り、それをベースに世界で初めて製品化したのが「ヒイシ」。
今でこそ多くのブランドがテント型サウナを販売しているが、「ヒイシ」はテント型サウナの元祖でもあるのだ(諸説あり)。
3月半ば、サヴォッタの輸入代理店であるアンプラージュインターナショナル(以下、UPI)がひっそりと「サウナ体験会」を開催。「ヒイシ」を使った北欧スタイルのサウナの楽しみ方を教えてくれた。
中温域のサウナはトリートメント効果が高い
「サウナは温度によって低温、中温、高温に分けられていて、日本では90℃以上の高温域のサウナが好まれています。フィンランド式サウナは60~80℃の中温域で時間をかけてじっくり身体をあたためるのが特徴。身体に負担をかけず、トリートメント効果も期待できます」(UPI/藤さん)
ストーブに載せたサウナストーンに水をかけて蒸気をあげるロウリュも行うが、時折、ウィスクを静かに振って香り高い蒸気でテント内を満たす。また違った心地よさだ。
邪気払いにも使われるウィスクはフィンランド式サウナに欠かせないモノで、毛穴が開き汗がにじんだ肌を、水を含ませたウィスクでマッサージすると美肌効果が期待できるとも。
中温域サウナは肌や髪が乾燥しづらく肌がしっとり。ガーゼで包んだフレッシュハーブをサウナに持ち込み、肌をマッサージすればその効果を高められる。
はちみつに黒ごまを混ぜた自家製スクラブ。肌に載せてやさしくこすれば余分な角質を落としてツルツルになる。
高温サウナの爽快感とはひと味違うやさしいぬくもりの中でゆっくりマッサージすればリラックス度も高まる。
「フィンランドのサウナでは過ごし方に決まりはありません。
植物の香りを楽しむ人、スクラブやハーブで全身をマッサージしている人が多いんですが、何をしなくちゃいけない、何分以上入らなくてはダメというルールはありません。熱いのが苦手ならサッサと出ても大丈夫」(藤さん)
ととのわなくても心地いい
日本では高温のサウナ→水風呂→休憩を繰り返して”ととのう”のが人気だが、テント型サウナは布一枚でできているので温度上昇には限度がある。
近年は断熱材入りの生地を用いたサウナもあるが、サヴォッタは天井部がコットン50/ポリエステル50の混紡素材、側面はポリアミド。難燃・防かび加工を施しているものの布一枚なので100℃に達することはまずない。
▲ロープの長さを調整する自在金具も付属しないほどシンプルな作り(UPIでは自在金具がつけられたイージータイプも取り扱っている)
サヴォッタはサステナブルな製品作りを信条としており、すぐ使えなくなって捨てることのないよう、丈夫な素材を用いてできるだけシンプルな構成を心がけている。不必要なモノはつけず、謙虚に製品を作ることで少しでも長く使ってもらえるようにしているためだ。
▲大切な友だちや家族と自然に溶け込むように静かにサウナ時間を過ごすのがサヴォッタ流
シンプルな構造ゆえ高温になりにくく、物足りないと感じる人もいるだろうが、この日は薪の代わりに国産木炭をくべて、日本人好みの90℃ほどに温度を上げたサウナを用意。
予熱を含めて4時間ほどで使用した木炭は約4kg。
コスト的には薪よりもやや割高だがよく乾燥していて煙はない。木炭の香りが白樺の香りを抑えがちだが、決してイヤなモノではなくどこか懐かしく落ち着く。
サウナストーンは重量があるし、水をくむなど準備にちょっと大変な面はあるけれど、大好きな景色の中でサウナ時間を楽しむと疲労感が吹き飛ぶ。テント型サウナの醍醐味だ。
冬は雪を踏み固めるなど設営により手間がかかるけれどサウナ後に雪にダイブすれば最高だし、今の時期は満開の桜を見ながら外気浴を楽しめる。
サーフィンやカヌーといった水辺の遊びでは夏でも身体が冷えるので相性よし。
UPIでは今後、各地でサウナ体験会を予定とのこと。
アウトドアヨガ+サウナなどサヴォッタらしいサウナの楽しみ方を提案するそうなので、北欧サウナ文化に興味があるならイベント情報をこまめにチェックしておきたい。
取材・文/大森弘恵