
2025年1月、「少年ジャンプ編集部」X公式アカウントが、自社ブランド「Every Monday」のロゴTシャツを発表した。あのジャンプがアパレルはじめるって、どういうこと? 集英社の週刊少年ジャンプ編集部に話を聞いた。
さりげないデザインと“超限定”感
コンセプトは、週刊少年ジャンプの発売日である「月曜を着る」。少年時代、毎週の発売を楽しみにしていたファンは、心をくすぐられるネーミングではなかろうか。
筆者も数十年前、少しでも早くジャンプを読みたくて近所の駄菓子屋に走ったものだ、と思い出がよみがえった。
どうやら、同社のターゲットも、筆者と同じ30~40代男性、往年のジャンプファンという人物像らしい。第一弾として発表されたTシャツは、黒の無地にEvery Mondayのロゴというシンプルなスタイル。一見何の変哲もないようだが、「o」の位置におなじみの海賊マークが、小さく描かれている。
「派手なキャラクターシャツなどは着られない人が、『実はジャンプのブランドなんだ』と表現できるデザインを目指した」(編集部)。
ユニークなのは、“毎週月曜日に新作を発表し、水曜日には販売終了”という超期間限定の販売手法。上記のTシャツを皮切りに、これまでパーカーやトレーナー、キャップ、トードバック、ストレージBOXと、続々アイテムをリリースしている。
こちらは1カ月分の週刊少年ジャンプが収納可能なストレージBOX(3ボックスセットで販売)。前後を入れ替えて積み上げると、側面におなじみの海賊マークが出現する仕掛けとなっている。
「読者のなかには、長年ジャンプをコレクションする人も、お気に入りの号を保管したい人もいる。ジャストサイズで、部屋に置いても雑然としないようなクールな箱があったら良いなと思い企画した」と編集部は意図を説明する。
確かに、限定感のある専用ボックスを部屋に置けるのは、ファンにとってはうれしい。自分にとって特別な号を仕分けて保管しておくのも楽しそうだ。編集部は、アパレルとしてスタンダードなアイテムに加え、「ジャンプの読者ならこういうものがほしいかも」と思える、生活に紐づいた商品をラインアップしているという。今後のユニークなアイテムに期待したい。
なお、商品は数量限定なので、申し込みが多いアイテムは抽選販売となる。同社のアプリ「少年ジャンプ+」「ゼブラック」で、デジタル版週刊少年ジャンプを定期購読するユーザー限定だ。
作品だけじゃなくジャンプのファンを
「Every Monday」のルーツは2023年、セレクトショップ「BEAMS」とのコラボ企画にさかのぼる。週刊少年ジャンプ創刊55周年を記念し、連載する21人の作家が「EVERY MONDAY」をテーマにTシャツをデザインすると、予想通りの大反響となった。
一方、今回の「Every Monday」は、編集部によるオリジナルデザイン。「雑誌としてのジャンプのロゴや発売日を浸透させるのが、私たちの仕事」と、編集部は狙いを明かす。
「ONE PIECE」「SAKAMOTO DAYS」「アオのハコ」など、週刊少年ジャンプには人気作品がずらりと並ぶ。しかし、アニメやコミックで作品に出会った人は、それがジャンプで連載されていることを、知らないケースも多いという。
作品が愛されるのは素晴らしいことだが、紙の雑誌はいずれも購読者が減少するなか、編集部としてはジャンプブランドの育成も重要なミッションだ。
「アイテムの品質には自信がある。さりげなくジャンプファンの遺伝子を表現したい人に、手にとってほしい」と編集部。かつての購読者が、Every Mondayのアイテムをきっかけに、月曜日を待つ楽しさを思い出し、再びジャンプに戻って来るか。老舗マンガ雑誌ならではの渋いアプローチに注目したい。
取材・文/小越建典