
赤ワインはがん予防につながらない?
赤ワインには抗炎症作用と抗酸化作用のあるレスベラトロールが多く含まれているため、がん予防効果があると考えられてきたが、新たな研究から、そのような明確なエビデンスはないという結論が示された。米ブラウン大学のEunyoung Cho氏らの研究の結果であり、詳細は「Nutrients」に1月31日掲載された。
ワイン摂取量とがんリスクとの関連を調査した研究結果はこれまでにも複数発表されており、そのメタ解析の報告もあるが、赤ワインと白ワインを区別して検討した研究は少ない。そこでCho氏らは、2023年12月までに文献データベース(PubMedまたはEMBASE)に収載された論文を対象とするレビューを実施した。
包括基準は、赤ワインまたは白ワインの摂取とがんリスクとの関連を検討している前向きコホート研究または症例対照研究であり、ワイン摂取量を三つ以上のカテゴリーに分けて報告していて用量反応関係を解析できる研究とした。学会発表、症例報告、基礎研究、レビュー論文、および英語以外の論文は除外した。観察研究のメタ解析に関するガイドライン(MOOSE)に準拠し、42件の報告(コホート研究20件、症例対照研究22件)を抽出し、ランダム効果メタ分析を行った。
まず、ワインの種類を区別せずに、ワイン摂取量が最も少ない群と最も多い群のがんリスクを比較した結果を見ると、相対リスク(RR)0.99(95%信頼区間0.91~1.06)であり、ワイン摂取が多いことによるがんリスク低下は認められなかった。研究デザイン、性別、地域、報告年などで層別化したサブグループ解析でも、ワイン摂取によるがんリスクへの影響が見られる集団や条件は特定されなかった。
次に、赤ワインと白ワインを区別した解析を実施。その結果、赤ワインについてはRR0.98(同0.87~1.10)、白ワインはRR1.00(0.91~1.10)であり、いずれもワイン摂取による有意な影響は観察されなかった。
また、性別、がんの部位別に解析した場合、赤ワインについては、全て有意な影響は見られなかった。それに対して白ワインについては、性別の解析において女性では、摂取量とがんリスク上昇との有意な関連が観察され(RR1.26〔1.05~1.52〕)、部位別の解析では皮膚がんにおいて有意なリスク上昇が観察された(RR1.22〔1.14~1.30〕)。
赤ワインのがんリスク抑制作用が認められなかったことの理由について研究者らは、赤ワインに含まれているレスベラトロールは体に入るとすぐに代謝されてしまうためではないかと述べている。そして、「われわれの研究結果は、赤ワインを飲むことが白ワインを飲むことよりも、がんリスクという点で優れているわけではないという、重要な公衆衛生メッセージとなった」と総括している。
一方、白ワインの摂取量が女性のがんや皮膚がんのリスクと関連がある理由については「不明」とした上で、白ワインは赤ワインに比べて、紫外線に曝露されやすいシーンで飲む機会が多いことが関係している可能性を指摘している。研究者らはこのほかに、アルコールそのものは体内でDNAやタンパク質にダメージを及ぼす化合物に分解されるため、がんリスクの一因となることを指摘。2020年には世界全体で過度の飲酒が関連して74万人ががんに罹患し、これは全がん患者の4%を占めると解説している。(HealthDay News 2025年3月13日)
https://www.healthday.com/health-news/cancer/red-wine-protects-against-cancer-maybe-not
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.mdpi.com/2072-6643/17/3/534
Press Release
https://sph.brown.edu/news/2025-03-06/red-and-white-wine-cancer-risk
構成/DIME編集部