
健康でいるためには、毎日の食事管理が重要になる。食事内容はウェルビーイングな生活をする上でも欠かせないもの。しかし栄養バランスや節制、塩分や糖分、脂質などのチェックを含めると、毎日メニューを考えて調理するのがおっくうになることもある。せっかく楽しいはずの食事の時間が、日々のストレスになることも。それではウェルビーイングを満たしているとはいえない。
この度、食品メーカーやレシピ動画メディア運営会社等15社が参画する『ツジツマシアワセ(R)』プロジェクトの発表会が都内で行われた。
「食べたいものを楽しく食べて幸せになること」を全面的に肯定
ツジツマシアワセプロジェクトは2024年7月に発足。「栄養バランスを考えて食べること」そのものが、忙しい現代人にとって日々の重荷になっていることをふまえ、「好きなものを好きな時に食べて幸せになることを肯定し、偏った栄養バランスは前後の食事でツジツマを合わせればいい」という手法。「ツジツマシアワセ」を提唱し、生活者のウェルビーイング向上を目指すプロジェクトだ。味の素株式会社が発起人となり、この日は江崎グリコ株式会社、株式会社エブリー、キッコーマン株式会社、エスビー食品株式会社、株式会社J-オイルミルズ、ハウス食品株式会社が出席した。
“楽しく栄養バランス”普及プロジェクト事務局メンバーの味の素・山口卓也氏
「ツジツマシアワセ」を推進するのが、“楽しく栄養バランス”普及プロジェクト事務局。事務局メンバーの味の素・山口卓也氏はプロジェクト発足背景について、「人生100年時代と言われますが、健康寿命の延伸のためには日々の食生活の中での栄養バランスの実現が大事です。ただ、『栄養バランスを考える』ということが生活者の重荷になっている側面もあります」と語り、「私たちは、その生活者の重荷を軽減して、楽しく美味しく食生活を実現することをしながら、人々のウェルビーイング実現に貢献していきたいと考え、プロジェクトを発足しました」と説明した。
栄養バランスを考えた食事を毎日続けるのは難しいと感じる女性は8割
ツジツマシアワセの考え方は、「1食で栄養バランスを完璧にするのではなく、その前後の食事を柔軟に対応し、ツジツマを合わせていく」というもの。例えば、友達とハンバーグを食べて幸せを感じながらも、野菜が不足してしまった状況があったとする。「好きなものを食べて幸せを感じる」という状況を全面的に肯定し、その後の食事でツジツマを合わせる。プロジェクト参加企業が参加するウェブサイトでは、「栄養のツジツマを合わせたツジツマシアワセメニュー」を3000以上掲載しており、ツジツマを合わせるために必要なメニューを選んで実践することができる。
参加企業が考えるメニューには、栄養バランスのツジツマ合わせをする際に参考にできる5つのマーク『ツジツマシアワセマーク』を掲げている。例えば、「野菜を考えた栄養バランスをとりたい」という人には「野菜よし!」マーク、「塩分を考えた栄養バランスをとりたい」という人には「塩分よし!」マークなど、それぞれ、野菜、たんぱく質、塩分、飽和脂肪酸など、特定栄養素訴求型の4マークと、栄養バランスの良い「栄養ゴールデンバランス」マークの5つで、分かりやすく表示している。ウェブサイトでメニューを見る際に、自分が合わせたいツジツマから、マークを見てメニューを選ぶことができる。
ツジツマシアワセのプロジェクトは、味の素が開発した栄養素プロファイリングシステム「JANPS(R)」を活用し、好きなメニューを楽しみながら栄養バランスの整った献立を提案する。
山口氏は、「食べたいものを楽しく食べて幸せになるということを、全面的に肯定します。と同時に、JANPSによって栄養学的な根拠もしっかりある手法になっています」と語り、「こうした活動を広く生活者に浸透させていくために、食に関係する幅広いステークホルダーを中心とした協業プロジェクトという形で立ち上げました。現在までに15社と拡大しており、非常に社会的なインパクトの大きい活動になりつつある」と期待をこめた。
垣根を越えて「一緒にやらないと成り立たない」協業することで生活者が幸せになる
またこの日は、公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事の石川善樹氏がビデオ出演。料理や食事から見るウェルビーイングについて語った。石川氏はまず、ウェルビーイングが「客観と主観の2つに分けられる」と説明。「客観的ウェルビーイングは、健康や教育年数、GDPといった測定可能なもので、これまで取り組まれてきました。しかし近年注目を集めているのが、『主観的ウェルビーイング』。生活満足度や希望、人間の尊厳というようなキーワードになります」と語った。「この2つを見た場合に、客観的ウェルビーイングは世界の中では良好な状態にありますが、より問題なのはこの主観的ウェルビーイングの方。いろいろな指標における日本の国際ランキングの順位では、主観的ウェルビーイングを示す生活満足度が年々右肩下がりです」と現状を説明。「日本においてはビジネスや政策においても、この主観的ウェルビーイングをいかにして改善していけるのかに焦点が当たっています」と語った。
客観的ウェルビーイングと料理は注目されているといい、「家で料理をする人は体重が増えにくく、2型糖尿病にもかかりにくい」という研究報告も出ているという。「近年はこの料理が、生活満足度などの主観的ウェルビーイングと関連があるのではないかと言われるようになりました」と明かした。例えば日本を含めた世界142か国の調査では、「過去1か月に『調理が楽しかった』と答えた人は、そうでない人に比べて主観的ウェルビーイングが良好」という報告も出ているという。石川氏は、「料理は客観的ウェルビーイングのみならず、主観的ウェルビーイングの観点からも期待できる行動ということが示唆されています。『ツジツマシアワセ』ということは、栄養ある料理を楽しくすることを期待していますが、これは日々の生活に客観・主観両面からウェルビーイングをもたらす可能性があるということです」と期待した。
山口氏は他社と協業した理由について、「もともと、栄養プロファイリングシステムは当社のものではあるのですが、それをただ『当社のもの』としてやってしまうと、なかなか横に広がっていかない。(栄養バランスを考えること自体を負担に感じている)生活者にどういう風にアプローチするか。またその仕組み自体を、参加企業のみなさんの意見を取り入れて変えています」と語った。調味料や食品など通常では“ライバル”になる企業も参加しているが、「逆に垣根を越えて、『一緒にやらないと成り立たない』と思っています」とプロジェクト達成への思いをこめた。「当社は調味料メーカーなので、生活者の料理の中の一部です。料理といってもいろいろな分野があるので、メーカーさんも入っていただいて、このツジツマシアワセの仕組みを広げていただく。生活者や全体がツジツマシアワセになるということなので、協業は必要だと思っています」と語った。