
生命保険の満期金や公営競技などで一時所得があった場合、税金計算はどうなるか。一時所得の計算方法や税金の支払い方、住民税への影響についてまとめた。
目次
毎月の給与やボーナス以外にまとまった収入を得たことがある人は多いだろう。所得税法では、所得は全部で10種類に分かれているが、これらの所得のうち一時的なもの(継続性がないもの)や偶発性の高いものは「一時所得」に分類される。たとえば、生命保険の満期金やコンテストで受賞した際の賞金、競馬等の公営ギャンブルで得た収入などが代表的な一時所得だ。
一定額を超えれば、一時所得も所得税の対象となるため、いくらからが課税対象となるか、税金はどの程度になるかの仕組みを知っておくと役に立つだろう。
本記事では、どのような所得が一時所得に該当するかの基礎知識と、税金の計算方法、また、所得税と同様、収入アップが税金に反映される住民税への影響についても解説する。
一時所得とは?該当する収入を知ろう
一時所得の税金について調べる前に、どのような所得が一時所得に該当するか具体例を見ておこう。
■一時所得は営利目的ではない継続性や対価の性質がない所得
国税庁によると、一時所得とは「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得」を指す。たとえば、会社員の副業収入は営利目的であり、ある程度の継続性もある場合が多いため、一時所得ではなく「雑所得」や「事業所得(個人事業主として開業している場合)」などに分類されるのが一般的だ。
また、「労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない」とも定義されている。そのため、企業の役員やセミナー講師といった労務・役務で得た報酬も一時所得には該当しない。土地や貴金属、各種権利などの資産を譲り受けた場合も「譲渡所得」に該当し、一時所得には含まれない。
※参考:No.1490 一時所得|国税庁
■一時所得の具体的な例
国税庁のホームページでは、以下の6つが一時所得の具体例として挙げられている。
(1)懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)
(2)競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます。)
(3)生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
(4)法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます。)
(5)遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
(6)資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的とされた支出に充てられなかったもの
※参考:No.1490 一時所得|国税庁
■生命保険の満期金は受け取り方によって一時所得か雑所得かが異なる
なお、上記の一時所得のうち生命保険の満期金は受け取り方によって所得の種類が変わる。全額をまとめて受け取る場合は「一時所得」、年金として複数回に分割して受け取る場合は「雑所得」に分類される。
一時所得には控除枠50万円があるが雑所得にはないなど、それぞれに税金の計算方法が異なるため、事前にシミュレーションをした上で受領方法を決めると良いだろう。
また、保険料負担者と保険金受取人が異なる場合は、満期金額から支払った保険料を差し引いた金額が年間110万円以上になると贈与税の対象となる。
一方、保険料負担者が死亡している場合は相続税の対象となる。
こちらのケースもそれぞれの税の種類に合わせて計算方法が決まっているため注意したい。
一時所得の税金を計算する方法
それでは、一時所得の税金計算の方法をSTEP1と2の順で見ていこう。一時所得は「総合課税」の一種であり、他の所得と合算した「総所得額」に所定の税率をかけて税額を求める。そのため、まずは一時所得の中で課税される部分(=課税額)を求め、次に一時所得の課税額を他の所得の課税額と合算した上で、決まった所得税率をかけ、税金額を求める仕組みだ。
■一時所得の税金計算・STEP1:課税額を求める
一時所得の課税額は、一時所得として得た金額から、その所得を得るためにかかった経費と特別控除額を差し引き、2分の1を乗じて求める。50万円の特別控除枠や経費が認められており、さらに課税対象は半分となるため、一時所得の金額がそのまま課税額となるわけではない点を覚えておこう。
一時所得の課税額=(一時所得の金額-経費-特別控除額)×1/2
■一時所得の税金計算・STEP2:総所得額に応じた税率で所得税を求める
一時所得の課税額を求めたあとは、総合課税の所得同士を合算して総所得金額を求め、下記の税率と控除額を当てはめて税金額を計算する。
所得税の金額=総所得金額×税率-控除額
国税庁がホームページで公開している下表を利用すると、該当する所得金額の税率と控除額を使用して所得税額が計算できる。
【所得税の税率】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
一時所得の税金がかかるのはいくらから?支払い方法や住民税への影響は?
一時所得の計算をする上で、具体的にいくらから税金がかかるのかざっくり知りたいという人も多いだろう。
所得税の税率は、他の所得との兼ね合いで異なるため、具体的な税金額は個々で異なるが、一時所得の金額が控除枠の50万円と経費を足した金額よりも多い場合は、税金がかかると覚えておくと良いだろう。
なお、所得税の確定申告はそれよりも低い金額で必要となるため注意したい。
■給与以外の所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要
給与所得者の場合、給与以外の所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要となる。給与以外の所得が一時所得のみの場合は、年間90万円以下であれば確定申告は不要だ※。
※(90万円-特別控除50万円)×1/2=20万円となるため
なお、個人事業主は一時所得の金額に関わらず毎年確定申告が必要となる。税金が発生するのは給与所得者と同じく、一時所得の金額が50万円と経費を足した額よりも多い場合だ。
※参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
■一時所得の税金はいつ支払う?
一時所得の税金は、所得税として確定申告をする際に納税額が判明するため、その時点で支払うことになる。住民税は翌年度の納税額に反映される仕組みだ。
■一時所得の税金の支払い方法
一時所得の税金(=所得税)を納付するには以下のような方法がある。
・振替納税
・ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)
・インターネットバンキング等
・クレジットカード納付
・スマホアプリ納付
・コンビニ納付(QRコード)
・現金納付
※参考:【税金の納付】|国税庁
■一時所得に税金がかかる場合の住民税はどう計算する?
確定申告によって税額が決まる所得税とは異なり、住民税は翌年度の税額に反映される。個人から申告された総所得金額(一時所得分も含む)を集計し、都道府県と市町村ごとに決まった所得割税率を適用後、均等割の金額を加えて求められるのが一般的だ。
課税状況は自治体窓口に直接確認するほか、翌年度の納税通知書、またはマイナポータルでも確認できる。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部