
日本ゴアは、腹部大動脈瘤(AAA)の啓発を目的に、65歳以上の男性(以下、シニア男性)と30~40代男女(以下、子世代)を対象に「普段の生活に関するアンケート」を実施し、その結果を発表した。
1年に1回健康診断を受けている人が74.0%いる一方で、腹部エコーを受診している割合は18.7%と低迷
同調査は、多死社会と呼ばれる現代において、ますます重要視される健康寿命の延伸と、サイレントキラーと呼ばれる腹部大動脈瘤(AAA)の早期発見の重要性を啓発することを目的に行なわれたもの。
その結果、シニア男性の75.7%が「健康で活動的な生活」を理想と掲げながらも、腹部大動脈瘤などの命に関わる疾患へ注意している人は少なく、特別な検査を受けている人は限定的であることが判明。一方、子世代の半数以上が父親の「突然死」や「突然の体調悪化」を心配し、日々不安を抱えていることがわかった。
また、高血圧を気にするシニア男性は55.7%と半数以上であったが、高血圧がリスク因子となる「腹部大動脈瘤(AAA)」に注意している人は2.3%と低い結果となった。
なお、同社では、「この調査結果を踏まえ、“未病の段階”からの予防医療の重要性を広く啓発する活動を強化し、病気の恐ろしさを伝えるとともに、家族全体で健康を見守る文化の醸成に貢献したいと考えている」としている。
【調査結果】
・人生観に対する“理想”と“現実”のギャップが浮き彫りに!
まず、「あなたの“理想の人生”と“現在の生活”について、それぞれ当てはまるものをお選びください(複数回答可)」と質問したところ、どの項目においても、理想(濃い色)に比べて現実(薄い色)の値が低く、理想とする生活の実現に至っていない傾向が見られた。特に「経済的余裕」や「健康で活動的な生活」など、重視度の高い項目ほど理想と現実のギャップが大きい傾向がある。
具体的には、シニア男性(左グラフ)は「健康で活動的な生活を送れる」ことを最も重視しており(75.7%)、次いで「経済的に余裕がある」(63.3%)を理想としている。一方、子世代(右グラフ)は「経済的に余裕がある」ことを最も重視しており(75.5%)、次いで「健康で活動的な生活を送れる」(67.3%)を理想としている。
また、どちらの世代も「家族と頻繁に会う機会がある」「趣味に没頭できる時間がある」ことを重視しており、生活の質に関する要素が重要視されていることがわかる。
・世代によって異なる幸福感の違い。一方で共通点も?
続いて、「生活の中で「幸せを感じる瞬間」をすべて教えてください(複数回答可)」と質問。その結果、シニア男性にとって「健康で活動的に過ごす」ことは圧倒的に幸福感につながる要素(1位、72.7%)である一方で、子世代で同項目は2位(54.0%)となっており、自己実現(趣味)と健康のバランスを重視していることが判明。また、家族と過ごす価値については、ほぼ同じ割合で重要視していることがうかがえる結果となった。
この結果は、年齢や人生のステージによって「幸せを感じる瞬間」の優先順位が変化することを示しており、特にシニア世代では健康の重要性が著しく高まるといえる。
・「健康管理を怠りたくない」のに専門検査は受けていない矛盾
シニア男性に「あなたが“後悔したくない”と思うことを教えてください(複数回答可)」「ご自身の健康管理について、当てはまるものはありますか。当てはまるものを全てお選びください(複数回答可)」と質問したところ、以下の結果となった。
この結果から、「健康管理を怠ることを後悔したくない」と考える人が半数以上いる一方で、特別な検査を受けている人は限定的であることがわかる。また、1年に1回健康診断を受けている人は74.0%いる一方で、腹部大動脈瘤の発見に有効な「腹部エコー検査」を受けている人はわずか18.7%にとどまっており、意識と行動の乖離が見られる。
・シニア運動・食・睡眠環境は?
さらに、シニア男性に「ご自身の生活習慣を5段階で評価してください」と聞いたところ、運動、食生活、睡眠に対して、「非常に良い」と回答した人は2割以下という結果となった。自身の生活習慣について高く評価している人(非常に良い、まあまあ良いという回答した人)は、運動・食生活では約半数、睡眠については3割以下となっており、不眠大国と呼ばれる日本の現状がうかがえる結果となった。
・子世代と父親との健康コミュニケーション課題が明らかに
続いて、子世代に「父親との関わり方で心がけていることはありますか。当てはまるものを全てお選びください(いくつでも)」「父親の生活状況について気になることを教えてください。(いくつでも)」「Q8.父親の健康について不安に感じることはありますか。当てはまるものを全てお選びください(いくつでも)」という質問をしたところ、以下の結果となった。
この結果から、子世代の多くが「突然死」や「突然の体調悪化」を含む父親の健康に強い不安を持っていることがわかった。特に父親との心の距離が近い人ほど、この不安が顕著に現れている。また、父親の生活習慣では「社会との接点の減少」「偏った食事」「運動不足」が上位を占め、これらが子世代の不安を高めている可能性がある。
さらに、「父親の性格について、当てはまるものをお選びください(複数選択可)」という別の質問に対して、第1位「自分の考えを曲げない(57.1%)」、第2位「心配をかけたくないタイプ(35.0%)」、第3位「自身の健康に無関心(17.7%)」という結果が出た。この結果をさらに詳しく分析したところ、自分の父親の性格を「心配をかけたくないタイプ」だと思っている子世代ほど、普段の父親との関わり方について「定期的な連絡」「健康状態の確認」を心がけていることが判明した。
・物理的な距離、心的な距離は父親への不安ごとにどう関係する?
「定期的な連絡」をしている人(48人)は、「突然死」を心配する割合が52.1%と非常に高く、「突然の体調悪化」も75.0%と最も高い値を示している。「健康状態の確認」をしている人(51人)も、「突然の体調悪化」の心配が72.5%と高い傾向で、総じて、父親と積極的に関わっている人ほど父親の健康への不安が高く、特に「突然の体調悪化」と「突然死」への懸念が顕著に表れていることが表から読み取れる。
一方、父親との物理的な距離では、同居している人(56人)では、「突然死」の心配が28.6%、「突然の体調悪化」が48.2%という結果が出た。最も遠い距離(車や公共交通機関で2時間以上)に住んでいる人(53人)は、「突然の体調悪化」の心配が56.6%と最も割合が高くなっている。物理的な距離が離れているほど「突然の体調悪化」や「突然死」への不安傾向が高く、緊急時の対応に時間を要し、難しくなる等課題が生じる可能性がある。
・高血圧は気にするが、高血圧がリスク因子となる病気は知らない実態
「現在、気にしている病気をすべてお選びください(複数回答可)」という質問では、高血圧を気にしている人が55.7%と半数を超える一方で、高血圧の合併症である腹部大動脈瘤(AAA)を気にしている人はわずか2.3%にとどまることがわかった。
また、腹部大動脈瘤になりやすい要因に関する説明を読んでも、不安を感じる人(非常に不安を感じた、やや不安を感じたと回答した人)はシニア世代、子世代ともに4割程度に留まり、病気への危機感の薄さが浮き彫りになった。
これらから、腹部大動脈瘤についてのヘルスリテラシーの低さと、啓発活動を行なう必要性が見える結果となった。
・お互いの健康状況を把握していない家族は多数?
家族間で健康診断結果を共有しているのかどうかについての質問では、「毎回共有している」と回答した人はシニア男性で38.7%、子世代で16.7%という結果が出た。シニア男性と子世代ともに、健康情報の開示についてはそこまで必要性を感じていない人が多いことがうかがえる。
【調査概要】
調査対象:全国の30~40代男女300人、65歳以上の男性300人
調査方法:Webアンケート
調査期間:2025年1月31日~2025年2月3日
調査パネル:楽天インサイト
※ゴア調べ
構成/立原尚子