
マイナ保険証にはデメリットばかりではなく、もちろんメリットも存在する。この記事では、マイナ保険証のメリット・デメリットをわかりやすくまとめた。
目次
2024年12月2日より、従来の健康保険証からマイナ保険証へ移行する本格的な取り組みが始まった。しかし、世間ではマイナ保険証について「デメリットしかないのでは?」「なんとなく危険そう」など、ネガティブな印象を抱いている人もいる。
この記事では、マイナ保険証のメリットとデメリットをわかりやすく解説する。マイナ保険証は登録解除もできるため、理解を深めた上で判断しよう。
マイナ保険証とは
マイナ保険証とは、マイナンバーカードを健康保険証として使えるようにしたもの。事前の利用登録が必要だが、読み取りが可能なパソコンやスマートフォンだけでなく、セブン銀行ATMでも簡単に登録が可能だ。
■従来の保険証は新規発行停止へ
マイナ保険証への移行にともない、2024年12月2日より従来の健康保険証の新規発行が停止となった。
従来の健康保険証は、有効期限内であれば最大1年間の経過措置が設けられる。したがって、マイナ保険証がなくてもこれまで通り医療機関の受診や、調剤薬局での薬の購入は可能だ。
しかし、健康保険証の新規発行が停止となった以上、近い将来、従来の健康保険証が使えなくなることは確実といえる。早めにマイナ保険証の利用登録を行ったほうが良いだろう。
■マイナ保険証の登録率
2024年11月21日に公表した厚生労働省の資料によれば、マイナンバーカードを保有している9,499万人のうち、マイナ保険証の登録者は7,747万人とのこと。マイナンバーカードを保有している人の81%が、マイナ保険証に登録していることになる。
2024年12月1日時点で判明している日本の総人口1億2,374万人から、マイナ保険証の登録率を求めてみよう。この場合、日本の総人口のうち約62%がマイナ保険証に登録している計算となる。
マイナ保険証の登録状況に関する最新の資料は2024年11月のものであるため、同年12月2日以降の登録率が変わっている可能性は十分にあり得るだろう。
(参考:厚生労働省「マイナ保険証の利用促進について」)
(参考:総務省統計局「人口推計の結果の概要」)
■登録解除も可能
マイナ保険証は利用登録を促す動きが注目されがちだが、すでに利用登録済みのマイナ保険証の登録解除もできる。登録解除をすると「資格確認書」が発行され、有効期限内で医療機関の受診時に保険証として利用できる。
マイナ保険証の登録を解除する場合は、市区町村の役所窓口で手続きを行う。マイナポータルでの登録解除はできないため注意しよう。
マイナ保険証のデメリット4つ
マイナ保険証の気になるデメリットに注目してみよう。マイナ保険証の主なデメリットは次の4つだ。
・有効期限がある
・一部マイナ保険証が利用できない機関がある
・マイナ保険証の利用には登録が必要になる
・紛失時のリスクが高い
■有効期限がある
マイナンバーカードには発行から10年間、未成年者は5年間の有効期限があり、マイナ保険証の利用に必要な電子証明書にも5年間の有効期限が設けられている。
マイナンバーカードの有効期限が残っていても、電子証明書の有効期限が切れるとマイナ保険証は使えない。事前に電子証明書更新のお知らせが届くため、忘れずに手続きをしよう。
■一部マイナ保険証が利用できない機関がある
医療機関の利用者がマイナ保険証を利用するには、医療機関側がオンライン資格確認システムを導入している必要がある。オンライン資格確認の導入は2024年12月2日以降、原則義務化されている。多くの機関で導入されているものの、一部導入義務化の対象外となる機関もあるため注意が必要だ。
オンライン資格確認の導入義務化対象外となる例は以下の通り。
・施術者が全員高齢または視覚障害により、オンライン資格確認を使った療養費受領の資格確認が困難なあん摩マッサージ指圧、鍼灸師、柔道整復師がいる施術所
・廃止・休止の計画が決定しているあん摩マッサージ指圧師、鍼灸施術所、柔道整復師がいる施術所
など
(参考:厚生労働省「マイナ保険証の利用促進について」)
■マイナ保険証の利用には登録が必要になる
マイナンバーカードを持っているだけではマイナ保険証を利用できず、事前の利用登録が必要となる。マイナ保険証の利用登録は、ICカードリーダーを接続したパソコン、NFCの読み取りに対応したスマートフォンがあればマイナポータルから可能だ。
読み取り機器がない場合、セブン銀行ATMにてマイナンバーカードを差し込み、4桁の利用者証明パスワードを入力するだけで登録できる。
■紛失時のリスクが高い
マイナ保険証には住所や氏名、顔写真といった個人情報が含まれている。顔写真の加工やICチップへの細工といったセキュリティ技術は施されているものの、紛失・盗難時には少なからずリスクがあるだろう。
従来の健康保険証と同様に、紛失しないよう大切に管理する必要がある。
マイナ保険証を利用するメリット4つ
マイナ保険証の利用はデメリットばかりではない。主なメリットを次の4つに分けて紹介するため、ぜひ参考にしてほしい。
・過去の処方薬や健診結果をスムーズに伝達できる
・医療費が少し安くなる
・医療費控除の手続きが楽になる
・転職や引越し後でもすぐに保険証が使える
■過去の処方薬や健診結果をスムーズに伝達できる
マイナ保険証の情報提供に同意すると、医師や薬剤師は過去に処方された薬や特定検診の情報を閲覧できるようになる。
今までの健康保険証では、異なる医療機関を受診するごとに口頭で説明する必要があり、正確に伝えることが難しい場面もあったはずだ。
マイナ保険証を利用すれば、医師や薬剤師に必要な情報を正確かつスムーズに伝達できる。
■医療費が少し安くなる
マイナ保険証で医療機関を受診すると、初診料が20円、再診料が10円安くなる。劇的な割引ではないが、医療機関の受診頻度が高い人ほどお得になることは間違いないだろう。
■医療費控除の手続きが楽になる
マイナ保険証を持っていると、国税手続きのオンラインサイト「e-Tax」と、行政手続きのオンラインサイト「マイナポータル」を連携し、確定申告時の医療費控除の入力作業を簡素化できる。
また、高額療養費制度を利用したいときにマイナ保険証を提示すると、高額な医療費の立て替えや払い戻しの手続きも省いて制度を利用できる。
高額療養費制度を立て替えずに利用するには、「限度額適用認定証」を取得し提示する必要があった。しかし、マイナ保険証ではこうした手間をかける必要もない。
■転職や引越し後でもすぐに保険証が使える
就職、転職、引越しで健康保険証の切り替えが必要となった場合、状況によって一時的に健康保険証が手元にない状況が発生することがある。
一方で、マイナ保険証は手元にマイナンバーカードを残したまま切り替えの手続きが可能だ。就職、転職、引越しの後でも、すぐに健康保険証が利用できる。
マイナ保険証に関するQ&A
マイナ保険証に関するよくある疑問をいくつかまとめた。気になる項目があれば参考にしよう。
■マイナ保険証を作らないとどうなる?
「資格確認書」の発行により、マイナ保険証がなくても保険適用で医療機関を受診できるため、今すぐ不便が生じるわけではない。資格確認書の発行は、申請不要なケースと申請が必要なケースがあり、詳細は厚生労働省の公式サイトでチェックしておこう。
■マイナ保険証の情報提供に同意するとどうなる?
マイナ保険証を提示する際、読み取り機器に表示される「情報提供」に同意すると、以下の情報が診療に活用される。
・健康保険の加入状況(資格の有無)
・高額療養費制度の負担区分
・特定検診情報(喫煙歴などを記入した質問票や血液検査の結果など)
・他院での投薬履歴
■マイナ保険証はなぜ反対の声があるの?
マイナ保険証反対の意見には、さまざまな声がある。例えば「従来の健康保険証のほうが使いやすい」「個人情報の漏洩が心配」などだ。マイナ保険証の普及には、マイナ保険証の安全性やメリットについて、政府はより多くの国民から理解を得る必要があるだろう。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部