
キーボードの心地よい打鍵感や堅牢性などから、ビジネスシーンを中心に支持を集める、レノボのThinkPadシリーズ。2025年3月18日には、2025年の新製品として、フラッグシップモデルのThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionや、軽量化に注力されたThinkPad X13 Gen 6を含む、計7モデルが発表された。
今回のThinkPad最新モデルは、これまでもユーザーから期待の声を寄せられていた〝1kg切り〟を目指すべく、涙ぐましい数々の工夫が施されており、ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionは約986g~、ThinkPad X13 Gen 6は約933g~に収められた。
本記事では、そんな最新ThinkPadについて、説明会で語られたこだわりポイントや、新製品の概要についてまとめていく。
生産性向上のためのワークツールとして33年歩み続けたThinkPadの歴史
ThinkPadシリーズは、1992年に展開を開始し、今年で33年の歴史を持ち、世界で2億台以上を出荷してきた、多くのユーザーに愛されるシリーズ。展開当初から、生産性向上のためのワークツールとしての地位を築き、「Purposeful Design」「Relentless Innovation」「Trusted Quality」という3つの哲学を大切に育ててきた。
とはいえ、〝生産性〟の意味は時代とともに変わっていく。PCは、作業効率化のためのデバイスから、コロナ禍を経て、オンラインコミュニケーションのためのツールになり、これからはAIのためのツールになろうとしている。
そんな時代の流れに合わせ、ハイブリッドワークやAI時代においても、一目でThinkPadだとわかるデザインや、愛されてきた堅牢性、キーボードの打鍵感を踏襲しながら、ユーザーの生産性向上に貢献できる〝相棒〟となり得るのが、今回登場した、新しいThinkPadシリーズとなる。
ThinkPad X13 Gen 6には1kgを切るための工夫が満載
ThinkPadシリーズ最新モデルの中でも、ThinkPad X13 Gen 6は、内部基盤の構造やキーボード設計、筐体デザインなど、細部まで軽量化が図られている。
ThinkPad X13 Gen 6の開発テーマとして、軽量化を理由として、何かを犠牲にしないこととしている。また、より進化をすることに気を配り、堅牢性といった維持しなければならない部分を守りながら、キーボードの打鍵感などを進化。実際、本体は約933gからとなっており、前の世代から約190gも軽量化が図られている。
■軽量化のために細部まで筐体デザインを変更
ThinkPad X13 Gen 6は、13.3インチのディスプレイを有する。これは前世代から変わらないが、ベゼル幅を狭額縁化されており、ディスプレイ上部は10.6mmだったのが、6.8mmに、左右は7.2mmだったのが、6.0mmに、下部は13.7mmだったのが、10.8mmまで細くなった。
特に上下を合わせた奥行方向で見ると、7.8mmも幅が削られている。本体の軽量化のため、まずはできるだけ製品をコンパクトに仕上げることに注力したとのことで、正面から見ると、ほとんどディスプレイといえるほど、ベゼル幅は細い。
Webカメラの配置も変更が施されている。従来は、プライバシーシャッターがカメラレンズの上にあり、これを左右に動かす形になっていたが、新たにカメラの横にプライバシーシャッターを配置した。これで、奥行方向の寸法が小さくなっている。また、この配置換えにより、プライバシーシャッターを動かす際の指の動きが大きくなり、操作しやすくなっている。
■ヒンジのデザインも変更して内部に部品を集約
ヒンジ部分も改良されており、これまでは蝶番のようなパーツを左右に配置していたが、新たに「ワンバーヒンジ」と呼ばれる、バーのようなデザインを採用。中に空洞ができるため、そこに部品を入れていくことで、本体の小型化が図られている。
具体的には、前世代ではディスプレイ上部のベゼルに搭載されていたアンテナを、ワンバーヒンジ内に格納。また、ディスプレイ背面に配置されていたディスプレイ基盤は、ワンバーヒンジに滑り込ませるように入っている。これにより、ディスプレイ側の厚みが薄型化された。
■メインボードも小型化
表面的なパーツだけでなく、内部に搭載されるメインボードも、小型化されている。ストレージをCPUの下に配置する、オンボードメモリをストレージの背面に両面実装するといったように、各パーツをパズルのように組み合わせることで、前世代から約30%の小型化、約50%の軽量化が実現した。
内蔵されるファンモジュールは約70%大型化しているが、素材を変更することで、約20%も軽量化された。
軽く、大きなファンを搭載することで、パフォーマンスは約10%向上、表面温度はマイナス18%、ファンノイズはマイナス12%といったように、排熱性能が向上し、安定して使いやすく進化している。
■ThinkPadらしさを維持しながらも改良されたキーボード
ThinkPadシリーズの代名詞ともいえるのが、心地よい打鍵感のキーボードだが、こちらは、関連部品の最小化により、30%の軽量化を実現した。
キーボードの内部にあり、キーキャップを支えるベースプレートという素材は、軽く、やわらかい素材に変更。やわらかい素材にすると、打鍵感に不安を覚えるが、シミュレーションを重ね、ベースプレートを支えるネジの位置と本数を調節することで、ThinkPadシリーズらしい打鍵感が維持されている。
また、キーキャップの下にあるラバードームは、構造を見直し、指が底についた際に、ふわっとした着地感を得られるように改良。長時間のタイピングでも、疲れにくく、使いやすいキーボードへと進化している。
説明会場では、前モデルのキーボードと新しいキーボードで、打鍵感の比較ができた。よくよく打ち込んでいると、わずかに跳ね返りの感触に違いがあることを感じられはするが、極端に変わったわけではなく、ThinkPadシリーズらしさはしっかりと維持されている印象だ。
■剛性を保ちながら軽量化された本体カバー
本体を覆うカバーにも改良が加えられている。背面カバーは材料を変更、キーボード側のカバーは30%以上の薄型化をすることで、軽量化された。
天板は強くて軽い、適切なカーボンファイバーを採用した。それぞれのカーボンファイバー自体は、やわらかく、しなるようになっているが、組み立てた際に、剛性が出るように設計されており、片手で持っても、あまりしなることなく、耐えられるようになっている。
■軽量化しても本体の堅牢性は維持
本体の素材、内部機構を変更し、軽量化に注力をすると、堅牢性に不安を覚えるが、ThinkPad X13 Gen 6の場合、衝撃テストや落下試験といった、200種類以上のHW検証テストをクリアしている。
また、700種類以上のソフトウエア互換テストとUX評価もクリアしている。