
会社や自治体の健康診断以外に、30代後半になると気になり出すのが人間ドック。とはいえ、金銭的負担や時間的拘束などで二の足を踏む人も多いはず。そこで人間ドックに関する疑問や適正な受け方を専門医に聞いた。
医療法人社団如水会
今村病院副理事長・内科医
日本人間ドック学会専門医
山下あきこさん
脳神経内科の臨床医として診療にあたりつつ、YouTubeなどを通じ、予防医学の啓発活動に努める。『「やめられない」を「やめる」本-脱・依存脳-』(小社刊)ほか著書多数。
見つけるチャンスを逃さないことが大事
会社の健康診断と人間ドック、その違いはどこにあるのだろうか。
「そもそも人間ドックの〝ドック〟は船の修理などを行なうドックと呼ばれる設備が由来。船をメンテナンスするように、人間の身体も予防医学の観点から、自ら定期的に検査をしようという考え方です。一方、会社の健康診断は、労働安全衛生法に基づくもの。一番の違いは、法的義務(=強制力)があるか否かになります」(日本人間ドック学会専門医・山下あきこさん)
さらに地方自治体では特定の年齢になるとがん検診も実施。定期健康診断と人間ドック、がん検診。どうチョイスすればいいのか?
「自治体のがん検診は対象年齢になるとそのがんの可能性が高くなるというエビデンスをもとに国が設定したもの。対象年齢に達したら必ず受診してほしいと思います」
ただ、がん検診は基本的に企業の「健診」には含まれず、オプション検査を選択するか、自治体検診、人間ドックで受診することになる。
「特に40歳以降はがんに限らず、生活習慣病など様々な病気のリスクが上昇するので、人間ドックは40代を目安に真剣に考えてほしいです。ただ家族にがんやくも膜下出血、脳動脈瘤などの罹患歴がある場合は、さらに若いうちから検査を考えるといいですね」
とはいえ、人間ドックは施設も、検査内容も、費用なども様々。一体どこで何を受ければいいのか?
「きちんと調べたいなら専門の施設で。また人間ドックは1度受診したら終わりではなく、定期的に受診し、経過をみるのが重要。ですから無理なく通える同じ医療機関に決めるのがおすすめ。データの比較ができますからね。ちなみに内視鏡検査は専門で行なっているところがいい。内視鏡検査は苦痛に思いがちですが、最新の医療機器を用い、専門医が行なうとスムーズで辛さが全然違います。麻酔も可能ですし、憂鬱で行かないより、少しでも快適に受診できる施設を探すことも大切です」
気になる費用は、一般的なコースで、3万〜5万円が目安。
「金額の多寡で診察の質に差が出ることはありません。ただ値段が高いところは最先端の医療機器を導入している可能性が高いのも事実で、それを安心材料とするのも選択肢のひとつだと思います」
最近は高級人間ドックも人気だが、検査に加えラグジュアリーな空間やホスピタリティという体験価値に投資するという考えもある。
「『何か見つかると怖いから』と受診しない人がいますが、怖いと思うなら、受けてほしい。今は多くのがんが早期発見で良くなりますし、検査もほぼ1日で終わります。年に1度は身体のチェックと覚悟し、足を運んでほしいですね」
「健診」と「検診」の違い
【健診】健康状態を調べる
労働安全衛生法により、年に1回の受診が定められている労働者のための「健康診断」。会社の業務を行なう際、健康状態に問題がないか確認するのが目的で、内容はごく基本的。このほか40〜74歳が受診できる、メタボ予防のための特定健康診査も健診に該当する。
【検診】特定の病気を早期に発見する
がんなどの特定疾患を早期発見するための検査で、自分の意志で受診を選択する自由診療。自治体が実施するがん健診などの「対策型検診」と、自費で検査を選択する「任意型検診」の人間ドックがある。
※1 当分の間、胃部X線検査については40歳以上、1年に1回の実施も可とされる。※2 肺、乳がん検診の問診では必ずしも医師が対面で聴取する必要はなく、自記式の質問用紙に記入することで、問診の代わりとしてよいことになっている。※3 喀痰細胞診の対象は50歳以上で、喫煙指数(1日本数×年数)が600以上の人。
年代・男女別おすすめ検査は?
国が推奨する5つのがん検診は、特定年齢の検査で、早期発見や死亡率の減少が証明されているため、受診はマストと考えたい。気をつけたいのは子宮頸がん検診。ほとんどのがん検診は40歳以降だが、子宮頸がんは性交渉経験のある女性はすべて罹患する可能性があるため、20代からの検診が推奨されている。また、自覚症状が出にくい肝臓や膵臓のがんを見つけるのは、人間ドックでも容易ではないが、定期的な血液検査や超音波検査で発見できることもある。家族歴があるなど、気になる人は、医療機関へ相談して検査を検討してみるといい。
※これらの検査を受けることですべての疾患が判明するものではありません
取材・文/高山 惠 イラスト/macco 編集/原口りう子
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