『ツァラトゥストラはかく語りき』や『権力への意志』などの著作で知られるフリードリヒ・ニーチェは、超人思想や実存主義で知られるドイツの哲学者です。 また、数々の名言を残したことでも知られています。 悩んだときに思い起こしたいニーチェの名言をまとめました。ぜひチェックしてみてください。
目次
フリードリヒ・ニーチェとは?
フリードリヒ・ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche)とは、ドイツの哲学者です。1844年、プロイセン王国でルター派の牧師の子として生まれました。ギリシャ古典学や東洋思想などの幅広い考えに関心を示し、近代文明を批判し、キリスト教の神の死を宣言しました。
ニーチェは多くの作家や思想家、哲学者たちに多大な影響を与えたことでも知られています。ハイデッガーやカミュ、フーコー、ドゥルーズなどの20世紀を代表する思索家たちもニーチェの思想から強く影響を受けました。

また、学生時代にキリスト教から離れ、徐々に反キリスト的な思想を持つようになったと言われています。優秀さを評価され、24歳でスイスのバーゼル大学の古典文献学の教授として招聘されましたが、頭痛などの慢性的な体調不良に悩まされ、1879年に教授を辞職。
その後、『ツァラトゥストラはかく語りき』や『道徳の系譜』などを執筆し、1900年に55歳で亡くなりました。
フリードリヒ・ニーチェを読み解く4つの言葉

フリードリヒ・ニーチェは生涯を通じて多くの著作物を執筆し、多くの言葉を生みました。その中でも次の4つは、ニーチェを語るうえで欠かせない言葉として知られています。
- 神は死んだ
- 永遠回帰
- 超人
- ルサンチマン
各言葉の意味から、ニーチェの思索の一端に触れてみましょう。
■神は死んだ
ニーチェを代表する著作の一つ『ツァラトゥストラはかく語りき』では、主人公であるツァラトゥストラは神の死を宣言し、人々に現実と向き合うように示唆します。
神を実際に見た人がいないならば、神の死もまた実際には誰も知り得ません。しかし、「神は死んだ」と宣言してしまうならどうでしょうか。神のいない世の中では、自分で物事を考えず、すべて神に頼っていた人も主体的にならざるを得ません。
また、キリスト教に頼り、教会が「これが真実だ」と教えるものを真実だと信じていた人も、これからは自分で真実を探していく必要が生じます。ニーチェは「なぜ生きるのか」「何が正しいのか」といった人の根本的な問いかけに対して、自分で考えることの大切さを説くために「神は死んだ」と宣言したのです。
■永遠回帰
『ツァラトゥストラはかく語りき』の中でニーチェは、魂も肉体と同じく、いつかは死ぬものと語ります。キリスト教をはじめとする多くの宗教では、魂は永遠に生き続けることを説いてきました。これは人間が本能的に永遠への憧れを持っていることの証拠ともいえるでしょう。
ニーチェは反キリスト教的立場から、魂の死を断定し、来世や永遠の命といった見えないものではなく見えるものに価値を置くことを主張します。そして、意味もなく同じことが何度も繰り返される「永遠回帰」を虚しいこととし、ありのままの世界を肯定するべきだと説きました。
■超人
意味もなく永遠に同じことが繰り返される「永遠回帰」においては、未来への希望は持てません。未来は過去の反復であり、新しい出来事、驚くような出来事は起こり得ないのです。
しかし、ニーチェはたとえ未来が過去の反復であっても、ありのままの生として肯定することを称えます。そして、無意味な人生であっても、「これが生か。それならもう一度!」と積極的に受け入れる人をニーチェは「超人」と呼びました。
超人は、神が死んだ世の中において新しい価値を与える存在です。ニーチェはいつか出現する超人に思いを馳せ、自らは未来を生み出す肥やしとなることを選びました。
■ルサンチマン
「ルサンチマン(仏語、ressentiment)」とは、強者に対する弱者の憎悪や復讐衝動などの感情が、内攻的に屈折している状態のことです。怨恨や遺恨、傷つけられた自意識と解釈されることもあります。
キリスト教的な考え方の一つに、自分を虐げる相手に対して力で立ち向かうのではなく、想像の中で報復する「奴隷蜂起」があります。ニーチェはルサンチマンそのものが創造的になり、価値を生むことで、本来すべき反応(=虐げる相手に直接立ち向かう)ことができなくなっていると指摘しました。
例えば、聖書に記された「汝の敵を愛せよ」や「貧しき者は幸いなり」といった言葉は、いずれも弱者が心の中で復讐を遂げ、実際の行動に出ないように抑制するための考え方ともいえるでしょう。このような支配者にとって都合のよい宗教的な価値観を、ニーチェは白日の下に晒し、断罪したのです。
フリードリヒ・ニーチェの名言

ニーチェの鋭い指摘はさまざまな分野において繰り広げられました。その的確な表現は、1世紀を過ぎた現代の人々にも響く力を持っています。
悩んだときや迷ったときに思い出したい10の名言をご紹介します。
■事実などない。あるのは解釈だけである
悲しいことがあったときは、ぜひこの言葉を思い出してみましょう。
もしかしたら悲しいと思っているのは事実ではなく、「悲しいことだ」と自分が解釈しているだけかもしれません。
■命さえ失わなければ、その経験は人をたくましく成長させる
経験を積み重ねることで人は成長します。しかし、度が過ぎた危険な経験は、命や健康を失うこともあるため注意が必要です。
チャレンジすることにためらいを感じたなら、この言葉を思い出してみてはいかがでしょうか。
■深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいているのだ
問題を乗り越えようと立ち向かっているときに、あまりにも没頭しすぎると問題そのものに引きずられてしまうことがあります。その問題が好ましくないときには、なおさら注意しなくてはいけません。
問題を直視するときには、この言葉を思い出し、自分を見失わないように鼓舞しましょう。
■悪とは何か?弱さから生じるすべてのものだ
何を悪とするかは人によって異なります。ニーチェのように「弱さからくるものすべて」と言い切ってしまうなら、世の中のほとんどのものは悪になってしまうでしょう。
「仕事をしたくないなあ」「今日は1日ゴロゴロしていたいな」と思ったときは、ぜひこの言葉を思い出してみてください。弱さは悪だと思えば、自分を奮い立たせようと思えるかもしれません。
■怪物と闘うときは、自らも怪物にならぬよう、気をつけなさい
悲しいことですが、悪意を持った人間はいます。悪意に気づかないようにするのも生きていく知恵といえますが、立ち向かわなくてはいけない状況もあるでしょう。
闘いの前には、ニーチェの言葉を思い出してください。自分自身が悪意をまき散らしていないか、相手と同じような怪物になっていないか、常に客観的な視点でチェックしてみましょう。
■孤独な者よ、君は創造者の道を行く
創造的な思考や作業は、周囲の理解を得られないことがあります。誰もが踏み込んだことがない領域だからこそ、孤独を感じるかもしれません。
しかし、創造的であることは孤独なことだと理解していれば、寂しさや不安を感じにくくなるでしょう。オリジナリティを追求するときに、ぜひこの言葉を思い出してみてください。
■人間は行動を約束することはできるが、感情は約束できない
「明日デートをしよう」と約束はできても、明日あなたのことを好きかどうかは約束できません。他人の感情は縛れないという事実を忘れそうになったら、ニーチェの言葉を思い出してみましょう。
■人が意見に反対するときはだいたいその伝え方が気に食わないときである
言い方さえ工夫すれば、相手からの賛意を獲得できるかもしれません。意見を受け入れてもらえないときは、意見そのものではなく、伝え方を工夫してみてください。
■自分について多くを語ることは、自分を隠す一つの手段となり得る
自分について知られたくないときは、積極的に自分の情報を相手に伝えましょう。相手はこちら側を探る必要がなく、与えられた情報で判断するようになります。
■愛されたいという要求は、自惚れの最たるものである
ニーチェの言葉の通り、人は感情を約束できない生き物です。「愛されたい」と考えることは、相手の感情を自分の思い通りにしたいという思い上がった考えなのかもしれません。
思いを代弁する名言を見つけよう

ニーチェは数多くの名言を残しています。
名言の中には、思いを代弁してくれるようなものもあるかもしれません。落ち込んだときや周囲からの賛意を得られないとき、ぜひニーチェの言葉を調べてみてください。
構成/林 泉







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