
MINI「ACEMAN」は、MINIのファミリーに加わった新顔だ。独自のフロントフェイスとエクステリアデザインを持った5ドアボディのコンパクトカー。昨年、フルモデルチェンジしたMINI「COOPER」がエンジン車もEV(電気自動車)もどちらも揃えているのに対して、この「ACEMAN」はEV専用。エンジン車は設定されていない。ちなみに、「ACEMAN」は中国工場製だ。
MINIのファミリーに加わった新顔はどんなクルマ?
バリエーションとして「S」と「SE」の2つが用意されていて、1基のモーターで前輪を駆動する点は一緒。走行可能距離(WLTCモード)に違いがあって、「E」が327km、「SE」が414km。さらに大きな違いは、急速充電の際の充電能力だ。「E」が70kWで、「SE」が95kWと違いがある。つまり、高出力タイプの充電器で充電する場合に、同じ条件ならば「SE」は「E」よりも早く充電が完了する。所要時間が短くなるので、この違いは大きい。誰でも、1日は24時間しかないわけだから。
機械として優れているか? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)
ボディの前半部分を見ると「COOPER」よりボンネットが高く、フェンダーのエッジ部分もなだらかにされていないことがわかる。「COOPER」とは違って見えてしまうが、運転席から見切りやすく、運転しやすさにつながっている。
加速やコーナリングなどは「COOPER」譲りの機敏なもので、ボディは違っていても走りっぷりは共通している。EVなので重いバッテリーが床下に配置されていることで重心が下がり、小さなボディですばしこく走るがゆえの前後左右への落ち着きのなさが皆無で、乗り心地は上質なものに仕上がっている。
路面からのショックもあるけれども、丁寧にカドが丸められており、他のコンパクトEV各車に差を付けている。この長所は「COOPER」のEV版でも変わらない。トランクスペースも「COOPER」より大きく、十分な広さが確保されている。
商品として魅力的か? ★★★★★5.0(★5つが満点)
サイズとして「ACEMAN」は「COOPER」5ドアより大きく、SUVの「COUNTRYMAN」よりは小さい。ただし「COOPER」の5ドアにはEVが設定されていないから、最小のMINIの5ドアEVとなる。丸型の有機ELパネルを使ったセンターディスプレイパネルや、走行+音楽+車内装飾などを7種類に設定できる「EXPERIENCES」などが特徴付けていたインテリアも「COOPER」と変わらない。独特の形状のヘッドライトはクーパーとの大きな識別点になっている。車名に「MINI」と付かなければ、外観からだけではMINIファミリーとは思えないだろう。
ただ、4輪のフェンダーの切り取り方が多角形なのは奇を衒い過ぎで、乗っているうちに飽きてくるのではないだろうか。MINIらしくない。リサイクル素材や再生可能素材などを積極的に活用しながら、エコ観点だけでなく魅力あるインテリアを造り出しているのも他のMINIと変わらない。4世代目として新境地を開いている。
同様に、もうスマートフォンを接続してApple CarPlayやAndroid Autoなどを経由しなくてもクルマにあらかじめダウンロードされているアプリをクルマのOSによって使える点も一緒で大きな進化ポイントだ。「ACEMAN」はSUVのような床の高さがなく、反対に「COOPER」のように低くもなく、中間の高さに着座位置が設定されていて乗り降りしやすい。派手さは控え目で、実はこういうクルマが長く乗り続けると実際には使いやすいはずだ。
MINIというファミリーのキャラクターを纏わなくても、1台のコンパクトEVとして完成度高くまとめられている。
■ 関連情報
https://www.mini.jp/ja_JP/home/explore/concept-cars/aceman-concept.html
文/金子浩久(モータージャーナリスト)