重厚感のある心地よい乗り心地
試乗は、ノーマルモードを選択してスタート。走りはじめからの動きは、EV的にいきなりトルクが立ち上がり、加速するというチューニングではなく、アクセルを踏みこんでも、ややゆっくり目に走り出す。そのままアクセルを踏みこめば、リニアに加速していくセッティングだ。これなら後席のVIPも不快な思いはしないだろう。
0→100km/hの加速は8秒台。ハイブリッドモデルよりやや遅いタイムだ。ハイブリッドと性能を比較してみると、最高出力はFCEVが182PS、HEVは180PS、最大トルクは両車ともに300Nm。車両重量はFCEVF2000kgに対し、HEVは2020kgなので、スタート時のダッシュを抑えてあるチューニングの差がわずかなタイム差になったのだろう。
ハンドリングで印象に残ったのは、重厚感のある乗り心地の心地よさ。これは床下とコンソール下に水素タンクを搭載したことで、重心と重量バランスが向上したため。しなやかな上下動での乗り心地のよさは、クロスオーバー、スポーツ、セダンの中でベストと評価したい。
燃料電池車で気になるのは燃料代だ。まず水素を充填するステーションが限られている。東京でも数は少なく、しかも営業時間が短い。充填に関しては、ステーションに行くと専任の資格を持った人しか充填できない。充填自体は、ホースをロックして充填するが3~5分で空の状態でも満タンになる。
価格についてだが「クラウンFCEV」のタンク容量は141L、5.6kgの水素が入る。水素の価格はステーションにより異なるが1100円(税抜き)や1760円(税込)とバラつきがあるので、利用する時は営業時間も含めてステーションに問い合わせてみるとよいだろう。
現状だと、満タンにして8000円程度。航続距離は「クラウンFCEV」で840kmを公称している。水素の価格に関しては今後、政府が普及に力を入れるというので、ステーションは多くなり(2025年までに350か所、2030年までに900か所の予定)、価格も1L、220円まで下がるといわれている。それまでにFCEVを試したいのなら、レンタカーで体験してみることをすすめたい。
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文/石川真禧照 撮影/望月浩彦