素早いエンジン回転の落ちとシフト操作で、クルマとドライバーが一体となる感覚
試乗したのは新しく加わった6速MT車。「RS」はMT車のみの設定で車両本体価格は419万8700円(消費税込み)。ドライブモードは「ノーマル」を選択。リニアで軽快な走りのモードだ。サスペンションとハンドルフィールは専用チューンされている。クラッチペダルを踏みこみ、シフトフィールをチェック。クラッチの反発力は強めだが、渋滞時に苦になるほどに重くない。シフトフィールはやや重め。ストロークは横方向が短く、手首の動きでシフトできる。 リバースは右下で特別な操作も必要なく、シフトできる。走り出し、シフトアップしていくと、ちょっと気になったのは、ギアの段数表示がないこと。いま何速に入っているのかの表示があると、スポーツ走行のときなどシフトの楽しさが加わるはずだ。
クラッチを慎重にミートさせて走り出す。アクセルペダルはやや重め。1速で5000回転まで引っぱってシフトアップ。エンジン回転計は8000回転まで刻まれている。レッドゾーンも6500回転からなので、余裕のシフトだ。1速40、2速70、3速105km/hに達する。1.5Lガソリンターボ、182PS、240Nmエンジンは、3200回転をオーバーするとトルクがグンと太くなり、加速が増す。
一方で、6速、1200回転からでもレスポンスは体感することができて加速していくので、緩慢な運転にも合わせてくれる。エンジン音は3000回転あたりから大きくなる。「ノーマル」モードから「スポーツ」モードに切り換える。このモードはダイレクトで力強い走りだ。いきなりホイールスピンをしながらスタート。心なしかエンジン回転の上昇スピードも速い気がする。クラッチも反発力は強いが、重すぎないので、小気味よくシフトできる。シフトダウン時にエンジン回転を合わせてくれるレブマッチングシステムも運転を楽しくさせる。素早いエンジン回転の落ちとシフト操作で、クルマとドライバーが一体となる感覚だ。
コーナー出口から加速の後は、次のコーナー入口での減速。このときのストッピングパワーもこれまでのシビックの走りとは一線を画している。フロントのディスクローターを大径化したRS専用ブレーキの効果は大きい。ハンドリングは、ノーマルモードでも全体に重め。コーナーでの切りこみに対し、抵抗が強く、スポーツモードは、格闘に近いほど抵抗は強くなる。
乗り心地も上下動の動きは小さく、ゴツゴツ感は伝わっていたので、車速を上げていくと、高い着座位置は不安を感じる。ポジションはボンネットが見えない位の低さのほうが安心感がある。GTレースのドライバーのようなポジションの低さが合っている。パワフルさではスポーツモデルの「タイプR」などには勝てないが、スポーツの雰囲気は十分に味わうことができる。
一家のファーストカーにはならないが、楽しく、実用性も兼ねたセカンドカーとして購入するのもいいかもしれない。例えば、自分が欲しいというと奥さんが認めてはくれるはずもないが、大学に入ったばかりの息子がクルマを欲しがっていて、「これなら5ドアで荷物も積めるし、最初はマニュアル車のほうが安全だから」と言い訳を並べれば、チャンスはあるかもしれない。
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https://www.honda.co.jp/CIVIC/
文/石川真禧照 撮影/萩原文博