トヨタのスポーツモデルづくりへの真剣さと本気度がわかる
そのままグラベルに突入するとFFらしさはさらに強まる。そこでクラベルモードにダイヤルをひねる。ここでは駆動力が前53、後47になり、FFらしさが消え、ニュートラルか若干のアンダーステアが感じられた。ニュートラルな感じは、ウェット路面でも使えそうだ。ちなみにサーキットなど用のトラックモードはダイヤル頂部を押してシフトする。このモードでは前60-30、後40-70で連続可変しながらハンドルの動きに応答していくれる前輪と、アクセルの動きに対応する後輪で、コーナーをクリアするという。
この動きとは別にドライブモードセレクトも使える。ノーマルでスタートしたが、スポーツ/エコ/カスタム(試乗車のハイパフォーマンスには標準)が設定できる。これはパワステ/エアコン/アクセルレスポンス/変速フィール/使用ギア段/シフトアップ/キックダウンの各タイミングを変化させる装備。メーター内の表示も変わる。印象に残るのは、メーター内の表示で、エンジン回転計や車速の表示デザインが変わるのだが、常にメーターの中心に表示されるのが、ギア段数。大きく、3とか4とか表示される。AT車なのでいま何速に入っているのか、つかみづらいので、これはとても使い勝手のよい表示だ。
サスペンションとブレーキも特別だ。しかも今回試乗した「RZハイパフォーマンス」と「RZ」は異なるセッティングなので、購入前から自分の使い勝手を決めておかなければならない。とにかく、すべてのプロフェッショナル的な要素でクルマが造られているのだ。
試乗車の「RZハイパフォーマンス」の場合、タイヤはミシュラン「パイロットスポーツ4S」、ホイールはBBS製、LSDは前後トルセン、フロントとリアのばね定数、スタビライザー径、ダンパー減衰力がきちんと算出されている。乗り心地は低・中速域では路面のゴツゴツ感は伝わってくるが、動きにカドがない。
スポーツモードを選択すると、これに上下動の硬さが加わり、ややソリッドな感じも伝わるが、乗り心地に不快さはない。フロントにアルミ対向4ポットキャリパー、リアはアルミ対向スポットキャリパーのブレーキと大径のベンチレーテッドディスクは、低温時でも鳴きがなく、効き味もガッチリだった。ハイパフォーマンスのスポーツマシンだがATということで扱いやすく、スピードやコーナリングを楽しめた。
このクルマだが、以前所有していた、MT車ではあったが当時はハイパフォーマンスカーだったが適度に電子化されていなかった「ランサーエボリューションⅤ」の走りの楽しさを思い出してしまった。適度にドライバーの意思がクルマに反映され、電子制御に過度に制御されない運転の楽しさを味わうことができた。
トヨタのスポーツモデルづくりへの真剣さと本気度がわかる試乗だった。456万円という車両価格は決して安くはないが、この車の開発にかけた時間や装備のレベルの高さを考えると納得できそうだ。
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https://toyota.jp/gryaris/
文/石川真禧照 撮影/萩原文博