
3月は引っ越しの繁忙期だ。多くの人が新生活に向けて新居へと移り住むわけだが、では、引っ越しをする人はどんな理由から転居を検討し、また、住まい選びにおいてどんな条件を重視しているのだろうか?
積水ハウスはこのほど、過去3年以内に引っ越しをした20~49歳の全国の男女498人を対象に「住まい選びに関する調査」を実施し、その結果を発表した。
賃貸住宅検討層は、結婚や就職などの環境の変化により引っ越しを検討する人が6割以上
「賃貸住宅(集合)」への引っ越しを検討するきっかけとして、「結婚・離婚」が34.9%と最も多く、「就職・転職・転勤」が26.5%と、それに続く結果となった。「持ち家(戸建+集合)」への引っ越しのきっかけ上位は「部屋や設備のより良い家・物件に住みたいため」が37.3%、「家族が増えたため」が26.1%、「結婚・離婚」が17.3%となった。
このことから、持ち家検討層は長期的な視点を踏まえた引っ越しであるのに対して、賃貸住宅検討層は、結婚や新生活などの環境変化に対応するための引っ越しが多いということがわかった。
住まいを探す期間について、「賃貸住宅(集合)」に引っ越した人は、引っ越しの「1~3カ月前」(66.7%)が7割弱となり、比較的直近の環境変化のために、短い検討期間で住まい探しをしていることがわかる。「持ち家(戸建+集合)」に引っ越した人は「7カ月~1年前」が27.3%、「それ以上前」が32.5%で、あわせて約6割となり、長期的な視点で住まい探しをしている持ち家検討層は、検討期間が長くなる傾向となった。
住まい選びの3大条件は、住居形態問わず「立地」「価格」「間取り」
「住まい選びで重視するポイント」として、TOP3となった項目は「立地」「価格」「間取り」となった。他項目との差から見ても、これらの項目は住まい選びをする上で欠かせない条件であることがわかる。
持ち家で重視するポイントTOP3は「住環境」「日当たり」「居心地が良い・くつろげる」(住まい選びの3大条件「立地・価格・間取り」を除く)
TOP3に上がった項目を除いた「住まい選びで重視するポイント」を住居形態別に見ると、引っ越し後の現在の住まいが「持ち家(戸建)」の人では、1位に「住環境(自然が多い、街の豊かさなど)」(32.3%)、2位に「日当たり」(30.6%)、同率2位に「居心地が良い・くつろげる」(30.6%)という結果となった。
「持ち家(集合)」の人では、1位「住環境(自然が多い、街の豊かさなど)」(42.9%)、同率2位に「日当たり」「居心地が良い・くつろげる」「LDKの広さ」(すべて38.1%)という結果となり、「住環境(自然が多い、街の豊かさなど)」は、「持ち家(戸建)」と比べて10.6ポイント高いことがわかる。
「賃貸住宅(集合)」の人では、1位に「駐車場」(37.3%)、2位に「LDKの広さ」(32.5%)、3位に「家全体の広さ」(31.3%)という結果に。このことから、持ち家検討層は、より長期的な住みやすさや周辺の環境を重視する傾向があり、賃貸住宅検討層は、より利便性や空間の広さに重きを置いていることがわかる。
引っ越し後に家族間のコミュニケーションが増えた人は、「居心地の良さ」に満足している割合が高い
引っ越し後の現在の住まいの満足度を聞いたところ、「満足」と答えた人は2割強に留まり、「やや満足」と答え人は約5割となった。また、以前の住まいと比べて現在の住まいで家族やパートナー間でのコミュニケーションが増えたかという質問では、「増えた」(26.3%)「少し増えた」(16.3%)となった。
そこで、住まいへの満足度との関係をみてみたところ、家族やパートナー間でのコミュニケーションが「増えた」と回答した人で引っ越し後の住まいに「満足」と答えた人は42.7%となり、他の選択肢と比べて大きく差があることがわかった。
引っ越し後に家族間のコミュニケーションが増えた人は、「居心地の良さ」に満足している割合が高い
家族やパートナー間でのコミュニケーションが「増えた」と答えた人は、現在の住まいでの満足ポイントに「居心地が良い・くつろげる」を選択した割合が40.5%で、全体の30.1%に対し10.4ポイント高いことがわかった。
あわせて、現在の住まいに「満足」していると答えた人も、満足ポイントに「居心地が良い・くつろげる」を選択した割合が55.3%と全体に比べ25.2ポイント高く、どちらも他の項目と比較して最も差が大きい結果となった。「居心地の良い住まい」は、満足度を高めるだけではなく、家族やパートナーとのコミュニケーションを生む重要なポイントであることがうかがえる。
家族が集まる「リビング」に居心地の良さを感じる人が7割弱と最も多い
自宅の中で居心地が良いと感じる空間を聞いたところ、7割近くの人が「リビング」と答え、次いで「寝室」(42.2%)、ダイニング(20.1%)という結果になった。このことから、家族が集まる「リビング」や「ダイニング」で過ごす時間を心地よいと感じる人が多くいることが見受けられる。
住んだ後にわかった後悔ポイント1位は「収納」。意外にも住まい探しの際の重視度は低かった
続いて「住んだ後にわかった後悔ポイント」を聞いたところ、住居形態にかかわらず「収納」が1位という結果になった。「住まい探しで重視するポイント」では上位に挙がらなかった項目が1位になったことで、住む前に重視しているポイントとギャップがあることがわかる。
引っ越し後の住まいで収納が足りていないと感じる人は全体の6割以上
実際に、引っ越し後の住まいの収納について「足りていないと感じる」と回答した人は、全体の6割以上となった。収納不足は、多くの家庭において共通の悩みとなっていることが読み取れる。
「収納が足りていないと感じる」場所、「寝室」や「リビング」が上位に
さらに、収納が足りていないと感じる場所を聞いたところ、引っ越し後の住まいが「持ち家(戸建)」の人では「リビング」が29.6%と最も多く、続いて「キッチン」(22.0%)、「寝室」「玄関」(18.3%)も上位に。
また、「持ち家(集合)」の人は、特に「寝室」(31.7%)や「子ども部屋」(28.6%)の収納が足りていないと感じている人が多いことがわかった。「賃貸住宅(集合)」の人は「寝室」(30.5%)、「リビング」(29.3%)、キッチン(24.1%)という結果となった。
続いて、「収納に困っているもの」を聞いたところ、1位に「衣類(コート・アウター除く)」(25.7%)、3位に「コート・アウター」(19.5%)となり、衣類の収納に困っている人が多く見られた。「布団などの寝具」(24.5%)、「扇風機やストーブなどの季節用品」(19.5%)も上位に。滞在時間が長く物が集まりやすい「リビング」、衣類や布団収納のある「寝室」で収納に対する問題が顕著に現れた。
「持ち家(戸建)」では洗濯家事に関する後悔も
「住んだ後にわかった後悔ポイント」を住居形態別に見ると、引っ越し後の住まいが「持ち家(戸建)」の人では、3位に「室内の洗濯干し場」(10.2%)が入っており、こちらも「住まい選びで重視するポイント」とのギャップがある項目だ。
「持ち家(集合)」では、2位に「日当たり」「駐車場」(14.3%)が上がり、「住まい選びで重視するポイント」として上位に入っていた「日当たり」が後悔ポイントとしても挙げられる結果となった。「賃貸住宅(集合)」では、「価格(家賃)」が12.9%で2位、次いで「洗面・浴室設備」(12.0%)、「住宅性能(耐震・防音など)」(9.2%)と、設備面に関する項目が目立つ結果となった。
「室内干し」を行っている割合は64.1%
洗濯物を乾かす方法について聞いたところ、「室内干し(除湿器やサーキュレーター等使用の合計)」を行っていると答えた人は64.1%となり、次いで外干し(57.4%)、「乾燥機(洗濯乾燥機やガス乾燥機、浴室乾燥機の合計)」(39.0%)となった。
「洗濯に関する困りごと」では、洗濯家事のスペースが足りないと感じる人が多数
続いて「洗濯に関する困りごと」を聞いたところ、「室内に干すスペースがない、狭い」(25.7%)、「洗濯カゴの置き場がない、使いづらい」(14.9%)、「屋外に干すスペースがない、狭い」(14.3%)など、洗濯家事を行うスペースが足りず困っている人が多いことがわかった。
前述した「住まい選びで重視するポイント」として「室内の洗濯干し場」を選択した人は全体の6.8%に留まっていたことからも、室内干しスペースへの意識を高めることが、住んでからの満足度を高めるカギになるかもしれない。
<「住まい選びに関する調査(2024年)」調査概要>
調査期間:2024年11月13日~18日
集計対象人数:498人
集計対象:直近1~3年で引っ越しの経験がある20歳~49歳の全国の男女
出典元:積水ハウス株式会社による「住まい選びに関する調査(2024年)」
構成/こじへい