
高性能AIとして注目を集めているDeepSeek。優れた言語処理能力と低コストが魅力である一方で、情報漏洩のリスクなどの課題もあり、用途に応じた活用が求められる。
目次
AI技術の進化によって、企業や個人が生成AIを活用するのが当たり前になりつつある。そんな中、新たな高性能言語モデルとして注目を集めているのが、中国で開発された「DeepSeek」だ。ChatGPTに匹敵するといわれる言語処理能力の高さと、優れたコストパフォーマンスで世界中の関心を集めている。
この記事では、DeepSeekの概要に加え、他の生成AIとの違いやDeepSeekを使用する際の注意点について詳しく解説する。
DeepSeekの概要
DeepSeekの読み方は「ディープシーク」。近年急速に発展している中国のAIスタートアップ企業「DeepSeek」が公開した生成AIを指す。DeepSeekは文章生成から翻訳、コード生成など多岐にわたる機能を提供し、ビジネスから個人利用まで幅広い用途に対応している。
■開発企業
今話題の生成AIであるDeepSeekを開発したのは、AI分野で急成長している企業の一つである、中国のDeepSeek社。DeepSeek社は独自のAIモデル開発を進め、膨大なデータから学習して機能を構築する大規模な言語モデル(LLM)を作り出した。
これまで巨額の投資が必要とされていた高性能のAIモデルの開発を、低コストで成功させたことから注目されているスタートアップ企業だ。
■特徴
DeepSeekは「Mixture of Experts(MoE)」と呼ばれる、最新技術を活用したモデルを採用している。MoEとは、処理するタスクによって必要なモデルを使い分ける方法を指す。
この技術によって複雑なタスク処理の場合でもメモリの使用量を抑えながら、効率的かつ高精度の処理が実現する。また、DeepSeekはオープンソース化されているため、誰でもダウンロードして自由にカスタマイズできるのも魅力の一つだ。
DeepSeekの主要モデル
DeepSeekには複数のモデルが存在し、それぞれ特徴や得意分野が異なる。ここでは、特に性能が高いといわれているDeepSeekの主要モデルを2つ紹介する。
■DeepSeek R-1
DeepSeek R-1とは、2025年1月に発表されたDeepSeekの最新モデルだ。主に推論や数学などの分野を得意とし、特に計算の正確性はChatGPTにも劣らないといわれている。性能とコストのバランスが良く、使いやすいのが特徴だ。
■DeepSeek V3
圧倒的なパラメータのスケールを誇る、最新のAIモデルであるDeepSeek V3。高精度な文章やプログラミングのコード生成を得意とし、他にも翻訳や一貫性のある情報収集など対応可能なタスクは多岐にわたる。
さらに、直近ではGPT-4o級の性能を誇るDeepSeek V3-0324を公開。推論性能が大幅に向上し、よりスマートなツール使用能力を誇る。
DeepSeekのそれぞれの特徴を理解し、用途に合わせて最適なモデルを利用しよう。
他の生成AIと比較したDeepSeekの強み
DeepSeekはコストパフォーマンスの良さや性能の高さが特徴だが、他のAIと比べてどのような違いがあるのだろうか。他の生成AIと比較したDeepSeekの強みを見ていこう。
■コスト
利用コストの低さは、DeepSeekが急速に注目を集める理由の一つ。有料で提供されるOpenAI(オープンAI)の高性能モデル「o1」と同様の機能を、無料で利用できる点が大きな魅力となっている。
APIでの利用は利用量に応じて有料になるが、その場合の料金もChatGPTなどの他のAIサービスと比べて安価なため、企業にとっても導入しやすい。
高性能で大規模なAIモデルになるほど利用コストが課題となる中で、DeepSeekはその性能に対しリーズナブルな価格設定を維持している点で他のAIと差をつけている。
■性能の高さ
DeepSeekは文章の一貫性や論理性が強く、長文の生成を得意としている。例えば人気モデルのDeepSeek V3は、約6,710億の圧倒的な規模のパラメータを持ち、学習データは約14.8兆トークンにもなる。
このスケールの大きさにより、他のAIと比べて文法や構成の精度が高いと評価されている。同時に取り扱い可能な文章量が多いため、複雑な文章や長時間の対話にも対応可能。
中国の企業で開発されたDeepSeekは多言語に対応しているが、特に中国語の処理に強みを持ち、中国語圏で利用されているケースが多い。
■汎用性
DeepSeekは、文章生成、情報収集、翻訳やプログラミングのコード生成・修正など、幅広い分野のタスクに対応している。使用方法もWebサービスやAPI、スマホアプリやローカル環境など複数の選択肢があり、汎用性が高い点も注目されている理由だろう。
また、オープンソースであるDeepSeekは企業のシステムに組み込みやすいのも特徴だ。
DeepSeek(ディープシーク)の日本語での使い方を解説
他言語に対応しており、日本語でも利用が可能なDeepSeek。WebサイトやAPI、スマホアプリなどさまざまな方法で活用できる。ここでは、DeepSeekのそれぞれの使い方を解説する。
■Webサイト
公式のWebサイトを利用することで、ブラウザ上でDeepSeekの機能を試せる。DeepSeekのサイトを開きアカウント登録をするだけで、無料で基本的な文章生成や質問応答を利用可能。他のAIサービスと同様に直感的に操作できるため利用しやすい。無料利用の場合は一日の利用回数に制限があるため、短時間の使用や一度試してみたい方におすすめ。
■API
DeepSeekのAPIを活用すれば、開発者向けのアプリケーションや業務ツールと統合ができる。公式サイトにアクセスし、APIキーを取得して連携させる簡単な設定を行うと、チャットボットや文章自動生成ツールとしても応用できるようになる。APIでのDeepSeekの利用には、利用量に応じて料金が発生する点に留意しよう。
■スマホ
DeepSeekのスマホアプリは日本語に対応しており、どこでも手軽に利用できるのがメリットだ。Google PlayまたはApple StoreからDeepSeekのアプリをインストールし、アカウントを作成するだけで気軽に文章生成や情報検索ができる。
日本語以外にも複数の言語に対応しており、DeepSeek R-1など他のモデルに切り替えての使用も可能。
DeepSeek(ディープシーク)の危険性や問題点3つ
DeepSeekは性能の高さや利便性が注目されている一方で、リスクや問題点も指摘されている。情報漏洩のリスクや他言語の精度、最新情報の取得に関しては特に注意が必要だ。
■情報漏洩のリスク
DeepSeekに集められたユーザーのデータは、中国国内のサーバーに保管される。そのためDeepSeek上に入力した機密情報や個人情報などが、中国政府からの要請によって外部に提供される可能性がある点に注意しよう。
また、中国政府の規制によって、政治や歴史に関する回答の出力が制限される場合がある。
■他言語の精度の低さ
DeepSeekは中国で開発されたため、中国語での生成処理の精度はとても高い。日本語を含め他言語への対応も進んでいるが、中国語と英語以外の言語では出力内容の精度が低下する場合がある。
特に、専門的な分野の文章の生成やニュアンスを含む表現の翻訳は誤りが生じやすいため、生成結果を精査することが求められる。
■最新の情報の確認が必須
DeepSeekをはじめとする多くの生成AIは競争が激化しており、各企業が日々AIの精度や機能の向上に取り組んでいる。そのため状況が変わりやすく、仕様の変更やバージョンアップなどが定期的に行われるため、常に最新の情報を確認しておこう。
中国で開発され、注目を集めているDeepSeek。コストパフォーマンスと性能のバランスに優れており、WebやAPI、スマホなど多様な環境で利用できる。
日本語に対応しさまざまな用途で活用できる点はメリットである一方で、情報漏洩リスクや最新情報の確認などを意識しながら慎重に利用する必要がある。DeepSeekの特徴や使い方を理解し、用途に応じて適切に活用しよう。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部