
居住場所として「憧れの街」と「実際に選ばれている街」をそれぞれランキング化した場合、どれほどの違いが見られるのだろうか?
CHINTAIはこのほど、先日発表されたSUUMOの「住みたい街ランキング」と同社の「賃貸で人気の街ランキング」を比較し、「憧れの街」と「実際に選ばれている街」の違いを分析したレポートを発表した。
2つのランキングの相違点と共通点
1. ランキングで異なる評価となった「吉祥寺」「池袋」「大宮」
SUUMOの「住みたい街ランキング」では、上位にランクインした「吉祥寺」「池袋」「大宮」だが、CHINTAIの「賃貸で人気の街ランキング」では、それぞれ15位~17位と、トップ10圏外となった。
この3駅は都心アクセスの良さや商業施設の充実度から憧れの対象になりやすいものの、実際に住むには家賃の高さや混雑などがネックとなる傾向がある。CHINTAIのランキングでは、「家賃の手頃さ」「生活のしやすさ」「周辺エリアとの比較」が重視されるため、実際に住む街としては、よりコストパフォーマンスの高いエリアが選ばれる傾向にある。
2. SUUMOランキングの街=ブランド力×利便性
SUUMOの「住みたい街ランキング」TOP20に入るものの、CHINTAIの「賃貸で人気の街ランキング」には入らなかった街には、「知名度の高さ」「都心へのアクセスの良さ」「商業施設の充実」という共通点がある。
例えば、「横浜」「恵比寿」「東京」「渋谷」などは、ショッピングや外食の選択肢が豊富で、都心での利便性が高いため、憧れの街として支持を集めている。しかし、家賃や生活コストが高く、実際に住むとなるとハードルが高いことが、CHINTAIのランキングに入らない要因と考えられる。
3. CHINTAIランキングの街=お手軽感×住みやすさ
一方、CHINTAIの「賃貸で人気の街ランキング」では、「家賃の手頃さ」「生活インフラの充実」など、実用的な視点が重視されている。
例えば、「浦安」「新小岩」「平塚」「柏」などは、都心アクセスの良さに加え、比較的家賃が安いため、現実的な選択肢として人気を集めている。これらのエリアは「憧れの街」ではなく、「実際に住みやすい街」として評価され、コストパフォーマンスを重視する層からの支持が高い傾向がある。
4. 実際に住みたい街として評価される「柏」
SUUMOの「住みたい街ランキング」では19位の「柏」だが、CHINTAIの「賃貸で人気の街ランキング」では5位にランクイン。その理由は、「憧れの街」ではなく「住みやすい街」として評価されているためだ。柏はJR常磐線や東武野田線(アーバンパークライン)で都心アクセスが良く、家賃相場も手頃だ。
さらに、駅前の大型商業施設の充実や再開発による住環境の向上で、多くの人々から支持を集めている。こうした背景から、柏は「住みたい街」としてのブランド力こそ強くないものの、「実際に住む街」としての評価が高まっている。
「住みたい街」と「賃貸で人気の街」—なぜランキング結果が変わるのか?
各社のランキングが発表されるたびに、「前回のランキングと違う」との声が聞かれる。これは、データ取得方法や対象ユーザー層、不動産市場の影響によるものだ。今回は、「データ取得方法」「ユーザー層」「家賃相場の高騰」の3つの視点からその違いを分析する。
1.データ取得方法の違い:「憧れ重視」か「実需重視」か
SUUMOのランキングはアンケート調査に基づいており、「どこに住みたいか?」という理想や憧れを反映したデータだ。そのため、ブランド力があり、メディアでの露出が多い街が上位に入りやすくなる。一方、CHINTAIのランキングは実際の検索数や問い合わせ数を基にしており「どこに実際に住むのか?」という現実的な選択を反映している。
そのため、SUUMOでは「恵比寿」「渋谷」「池袋」などの「憧れの街」が上位に入るのに対し、CHINTAIでは「浦安」「新小岩」「平塚」「柏」などの住みやすいエリアが上位にランクインしている。
【ポイント】
SUUMO:「憧れの街」が選ばれやすい→知名度やブランド力が強いエリアが有利
CHINTAI:「実際に住む街」が選ばれやすい→家賃や住環境を重視したエリアが上位に
2.ユーザー層の違い:「購入検討ユーザー」か「賃貸ユーザー」か
SUUMOのランキングは、住宅購入を検討している層も含まれる。住宅購入層は、「一生に一度の買い物」として理想の街を考えるため、人気の高級住宅地やステータス性のあるエリアが選ばれやすくなる。たとえば、「吉祥寺」や「目黒」「鎌倉」などは、住環境の良さやブランド力から、持ち家志向の強い人々に支持されている。
一方、CHINTAIのランキングは、賃貸物件を実際に探しているユーザーの問い合わせデータに基づいている。賃貸ユーザーは「数年単位での住みやすさ」を重視し、家賃・通勤利便性・生活コストといった現実的な条件を基準に選ぶ。
そのため、SUUMOではランクインする「東京」「渋谷」「池袋」などの商業地が、CHINTAIでは選ばれにくく、代わりに「柏」「三鷹」「藤沢」などのコストパフォーマンスの高いエリアが上位に入る傾向がある。
【ポイント】
SUUMO:住宅購入層も含まれる→理想のライフスタイルやブランド価値を重視
CHINTAI:賃貸ユーザー中心→家賃や通勤利便性など、現実的な条件を重視
3.不動産市場の影響:家賃高騰でコスパ重視の街が選ばれる
近年、都心の人気エリアでは家賃相場が上昇しており、特に一人暮らしの若年層にとって負担が大きくなっている。例えば、「恵比寿」のワンルーム(1R)の家賃相場は約10万円前後(※)となっており、単身者には手が届きにくい価格帯だ。
一方、CHINTAIのランキングで上位に入るエリアは、都心へのアクセスが良好でありながら、家賃が比較的手頃なのが特徴だ。例えば、「浦安」の1Kの家賃相場は約5.5万円(※)で、都心部よりも大幅にコストを抑えられる。このように、実際に住む街は、コストパフォーマンスの良いエリアが選ばれる傾向にある。
※出典:CHINTAIネット(2025年3月7日時点)
【ポイント】
CHINTAIのランキング上位の街→都心に通いやすく、家賃が手頃なエリアが人気
実際の賃貸市場では「コスパ重視」の傾向→家賃の安さと住環境の快適さを優先
出典元:株式会社CHINTAI
構成/こじへい