
少子高齢化による労働力不足と急速な技術革新の時代において、民間企業における博士人材の活躍への期待が高まっている。
一方で、経済産業省の調査によると、日本企業の76.6%が博士人材を採用しておらず、博士人材の活用が進んでいない現状が明らかに*1。
*1 文部科学省「博士人材の民間企業における活躍促進に向けた検討会開催について」
そこでレバテックが運営する、ITエンジニア専門新卒向け就職支援エージェント、レバテックルーキーは、民間企業で働く・働いた経験のある博士人材212名と博士人材の採用を行う企業の採用担当者・責任者192名を対象に、博士就活・採用に関する実態調査した。
民間企業で働く約7割の博士人材が「進学して良かった」、一方で就職活動における課題は残る
博士人材が博士課程に進学しようと思った理由について、1位は「研究が好きだったから(57.1%)」となった。
「博士課程に進学して良かった」と回答した人*2は約66%で、その理由として「特定の分野について専門性を高めることができた(72.9%)」が最も多く挙げられていた。
次いで、「分析的思考力が向上した(46.4%)」「困難な課題を克服する忍耐力や精神力が身についた(41.4%)」と続く。
一方で「あまりそう思わない(23.6%)」または「全くそう思わない(10.4%)」と回答した人に理由を尋ねたところ、「就職先がスムーズに見つからなかった(50.0%)」や「博士課程で得た専門知識を仕事で活かすことができなかった(47.2%)」が上位に挙がった。
博士課程の進学により、専門分野の知識やポータブルスキルの向上を実感する人が多い一方で、就職活動やキャリア形成に課題を抱えるケースも少なくないようだ。
*2 博士課程に進学して良かったかという質問に、「非常にそう思う(35.4%)」「どちらかというとそう思う(30.7%)」と回答した人の合計を指す
博士学生採用で企業が重視する点、「論理的思考力」が「研究内容が活かせるか」を上回る
現在、博士課程の学生(以下、博士学生)の新卒採用を行っている企業が、採用時に重視するポイントとして、「論理的思考力(52.7%)」「研究内容が自社で活かせそうか(52.0%)」が上位に挙げられた。
研究内容との親和性だけでなく、博士学生が研究を通じて培った素養や能力も重視していることが分かる。
経済産業省は、博士人材の専門性と企業の業務とのマッチングの難しさを踏まえ、博士人
材が研究内容に直接的に関連する分野以外での活躍の可能性に目を向ける必要性を指摘し
ている*3。
博士学生は「専門分野」だけでなく、自身の持つポータブルスキルが活かせる企業を検討することで、キャリアパスの幅を広げることに繋がるのではないだろうか。
*3 経済産業省「博士人材の産業界への入職経路の多様化に関する勉強会議論の取りまとめ」