
音楽療法で認知症患者の抑うつ症状が軽減、レビューで示唆
音楽療法は認知症患者の気分を高め、抑うつ症状を和らげるのに役立つ可能性のあることが、新たなエビデンスレビューにより明らかになった。また、音楽療法により行動上の問題が改善する可能性のあることも示されたという。論文の筆頭著者である、ライデン大学(オランダ)医療センターのJenny van der Steen氏は、「この調査により、音楽療法の効果についての理解が深まり、特に、介護施設での認知症ケアに音楽を取り入れることの根拠が強まった」と述べている。この研究の詳細は、「Cochrane Database of Systematic Reviews」に3月7日掲載された。
この研究では、総計1,720人を対象に15カ国で実施された30件の研究データがレビューされた。このうち28件の研究データ(対象者1,366人)はメタアナリシスに用いられた。目的は、認知症患者に対する音楽療法が、感情的ウェルビーイング(生活の質〔QOL〕を含む)、感情障害や否定的な感情(抑うつ症状や不安など)、行動上の問題(全体的な行動上の問題や神経精神症状、特に興奮や攻撃性)、社会的行動、認知機能に与える影響を調べることだった。対象者のほとんどは介護施設に入所しており、個別またはグループでセラピーを受けていた。
その結果、5回以上のセッションから成る音楽療法ベースの介入は、通常のケアと比べて認知症患者の抑うつ症状をわずかに改善する可能性があり(標準化平均差−0.23、95%信頼区間−0.42~−0.04、9件の研究、エビデンスの確実性は中)、行動上の問題を改善する可能性のあることが示唆された(同−0.31、−0.60~−0.02、10件の研究、エビデンスの確実性は低)。一方で、音楽療法は興奮や攻撃性を改善しない可能性が高いことも示唆された(同−0.05、−0.27~0.17、11件の研究、エビデンスの確実性は中)。さらに、感情的ウェルビーイング、不安、社会的行動、認知機能についても改善しない可能性が示唆された(いずれもエビデンスの確実性は低~非常に低い)。しかし、他の治療法と比較すると、音楽療法は社会的行動を改善し(同0.52、0.08~0.96、4件の研究、エビデンスの確実性は低)、不安を軽減する(同−0.75、−1.27~−0.24、10件の研究、エビデンスの確実性は非常に低)可能性が示唆された。
Van der Steen氏は、「音楽療法は、他のグループ活動以上の効果があり、認知症の後期段階であっても魅力的で利用しやすい方法で気分や行動をサポートするのに役立つ」と述べている。同氏は、「介護施設の管理者は、認知症ケアに対するパーソンセンタード・アプローチの一環として、構造化された音楽セッションを組み込むことを検討すべきだ」と付け加えている。
共著者の1人である、アートEZ芸術大学(オランダ)のAnnemieke Vink氏は、「音楽療法は、薬を使わずに悲しみや不安を和らげる方法だ。われわれは、最近の研究の質の向上とエビデンスの蓄積により、音楽療法やその他の非薬物療法にさらなる注目が集まることを期待している。効果の大きさを見ると、音楽療法は薬物療法の代替手段として妥当であり、より患者中心的だ」と述べている。
ただし研究グループは、特に介護施設以外の地域社会での音楽療法の長期的な効果については、さらなる研究が必要だとしている。(HealthDay News 2025年3月7日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD003477.pub5/full#CD003477-abs-0001
Press Release
https://www.cochrane.org/news/music-based-therapy-may-improve-depressive-symptoms-people-dementia
構成/DIME編集部