
女性の3人に1人が罹患する細菌性膣炎(BV)は、性感染症(STI)として再分類すべきとの研究結果が発表。パートナーの男性も治療することで再発率が大幅に低下、感染経路への新たな知見も。BVは放置すると深刻なリスクを伴うため、医療現場での対応見直しが急務となる。
細菌性膣炎は性感染症に分類すべき
世界中で約3人に1人の女性が罹患している膣感染症の一種である細菌性膣炎(BV)は、性感染症(STI)として再分類するべきことが、新たな研究で示唆された。BVは現在、女性の健康問題として扱われているが、女性だけでなくその男性パートナーの治療も行うことで、再発率が60%低下することが示されたという。モナシュ大学(オーストラリア)メルボルン性健康センターのCatriona Bradshaw氏らによるこの研究の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に3月5日掲載された。
BVは、膣内の細菌バランスが崩れたときに発症する。症状として、かゆみ、排尿時の痛み、異常な膣分泌物、不快な臭いなどの症状が現れることもあるが、無症状の場合も多い。BVを無治療で放置すると、深刻な健康リスクをもたらす可能性があり、例えば、世界保健機関(WHO)は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染やその他のSTIに罹患するリスクが高まるとしている。また、骨盤内炎症性疾患を引き起こし、不妊症につながる可能性も示唆されている。この点についてBradshaw氏は、「BVでは、炎症マーカー、炎症細胞、細菌由来の酵素や生成物に顕著な変化が見られ、それが生殖管の内層である上皮にダメージを与えることになる」と説明する。研究グループによるとBVに対しては、通常、1週間の抗菌薬投与による治療が行われるが、患者の半数が再発を経験するという。
この研究では、BVの女性、およびその女性と1対1の恋愛関係にあるパートナーの男性164組を対象にランダム化比較試験を実施し、女性のBV治療と同時に男性パートナーにも抗菌薬による治療を行うことで、女性でのBV再発率が低下するのかが検討された。対象者は、カップルの双方が経口抗菌薬による治療を受けるとともに、男性は陰茎に外用抗菌薬を1日2回、7日間にわたって塗布する群(81組、男性介入群)と、女性のみが経口抗菌薬による治療を受ける群(83組、対照群)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、12週間以内のBVの再発とした。
試験は、男性介入群に比べて対照群での治療成績が明らかに劣っていたため、150組のカップルが12週間の追跡調査を終えた時点で中止された。最終的に、男性介入群69組と対照群68組を対象に解析が行われた。その結果、12週間以内にBVが再発した女性の割合は、男性介入群で35%(24/69人、再発率:1.6件/人年)であったのに対し、対照群では63%(43/68人、再発率:4.2件/人年)に上ることが明らかになった。絶対リスク差は−2.6件/人年(95%信頼区間−4.0~−1.2、P<0.001)であり、男性介入群では再発リスクが63%低下していた(ハザード比0.37、95%信頼区間0.22~0.61)。
Bradshaw氏は、「本研究結果は、パートナーからの再感染が、女性のBV再発の多くに関与していることを示している。このことは、BVが実際にはSTIであることの証拠となるものだ」と述べたとCNNは報じている。
一方、論文の筆頭著者である、モナシュ大学メルボルン性健康センターのLenka Vodstrcil氏は、「BVを引き起こす細菌は、男性の、特に陰茎の皮膚や尿道に存在する可能性がある。これは、BVがおそらく性行為によって感染することを示唆している。また、治療後に多くの女性が再発する理由もこれだろう」との見方を示している。
BVがSTIとして再分類された場合、医師の診療アプローチが変更され、男性パートナーにも、自身がBV再発に関与していると説明することが必要になる可能性がある。メルボルン性健康センターはすでに治療プロトコルを変更し、BVが検出された場合には、男性パートナーも治療対象とするようになっている。また、医療専門家やこの治療に関心のあるカップル向けのウェブサイトも開発している。(HealthDay News 2025年3月10日)
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Abstract/Full Text
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2405404
構成/DIME編集部