
家計の負担増加につながる住宅ローン金利が上昇し始めている。日銀の政策金利が1年足らずで5倍になった影響でもある。
DIME読者の皆さんの中には、「変動金利型の住宅ローンを組んでいるが返済額が大きく増えないだろうか。急いで固定金利型のローンに借り換えないと。」と、不安に思う人がいるかもしれない。本記事では、理解を深めるための情報を詳しくまとめている。まずは慌てずに、住宅ローンの仕組みやリスクを理解してから行動してほしい。
政策金利の現在地。どこまで上がるのか見込みは?
日銀の政策金利(無担保コール翌日物金利の誘導目標)が、2023年まで長らく0.1%だったところが、2024年7月に0.25%、2025年1月には0.5%となった。たった1年足らずで5倍になった計算になる。
無担保コール翌日物金利の推移
出典:SBI証券
2025年1月開催の日銀政策決定内容では、“これまで示してきた見通しに概ね沿って推移”とし、政策金利が0.5%に引き上げられた。
この政策金利は正しく言うと、無担保コール翌日物金利の誘導目標である。金融機関の間で資金を融通し合う金利を誘導することで市場に流れるお金の量を調節している。
一般的に、金利が上昇すると市場で流通するお金の量が減少する“逆相関”になる。これにより、需要を抑制し、物価の上昇を抑える効果が期待できる。気になるのは、この先も金利は上がり続けるのか・・・というところだろう。
同経済・物価の見通しでは、この先も物価上昇が続くインフレ方向にあり“見通しが実現していくとすれば(中略)引き続き政策金利を引き上げ”と述べているため、政策金利上昇、ひいては住宅ローン金利も上昇するといえる。
実生活のイメージと異なっているように見えるが、需要の増加よりは、円安やエネルギー価格の高騰による原因のほうが大きいのかもしれない。
具体的な数値では、金融機関やエコノミスト、シンクタンクなどの予測をみると、この先2~3年で、1.0~1.5%に到達する予測が多い傾向にある。今後の経済状況によってどう変動するかわからないが、2024年(0.1%)比で10倍~15倍にもなった場合、住宅ローン金利も同じ道をたどるのだろうか。
住宅ローンの金利が決まる仕組み
住宅ローン金利の決まり方について理解しておこう。決定権は商品を提供する金融機関にあるので、必ず同じ理論になるわけではないが、固定金利と変動金利では以下の決め方が一般的だ。
●変動金利
短期プライムレートによって決まる。短期プライムレートとは、銀行が、融資しても問題ないと判断した企業に対する貸出金利のうち最も優遇される金利で、その融資期間は1年以内のもの。このレートは、日銀の政策金利の影響を受けやすい。
短期プライムレートは日銀のウェブサイトで確認できる
●固定金利
10年物の日本国債の利回りを基準に決まる。この利回りは「長期金利」と表現されることもある。国債は投資家が売買できるので、投資家の今後の予測により上下することになるが、その予測には日銀の政策金利の情報を見ている。変動金利の決定に比べてワンクッション挟まっているともいえる。
10年物の日本国債の金利は証券会社や投資情報サイトや財務省のページで確認できる。
政策金利が変更になった翌月2024年8月と最新のデータ2025年2月のデータを比較すると以下になる。
単純に数字だけで比較すれば、増加率は1.5倍ほど。政策金利が5倍になったからといって住宅ローン金利が5倍になるとは考えにくい。
双方の数字を毎月チェックするようにすれば、住宅ローン金利の上下の方向性がつかめる。変動金利型を契約していて、固定型に乗り換えようと思うならば、長期金利が下がったタイミングで、借り換え候補の銀行の固定金利をチェックするようにしたい。
実際の住宅ローン金利の推移はどこで調べる?役立つウェブサイト2選
本題となる住宅ローン金利について話を進めよう。契約している住宅ローンの金利は、提供元の金融機関のウェブサイトや窓口で確認ができるが、より統計的に調べたい場合は、以下の2つのウェブサイトが役に立つ。
グラフを見れば、政策金利上昇に連動して上がり始めていることがわかる。基準ベースでは不動だった変動金利もいよいよ上がり始めた段階で、固定金利は、全期間固定金利のフラット35で1.89%と2014年頃の水準まで上がってきている。
●イーローン
出典:https://www.eloan.co.jp/home/trendRate.php
5種類の金利動向がチェックでき、サイト内では各銀行の住宅ローン商品の情報も確認できる。推移グラフの銀行変動金利は、優遇前の基準金利である。
●住宅金融普及協会
出典:https://www.sumai-info.com/loan-knowledge/kinri.html
営利組織ではないので、各金融機関の基準金利、優遇金利が横比較でき、すぐに該当の商品ページが表示できる。広告のバイアスを避けて調べたいときに使える。地方別の検索はできるが、ネット銀行別など銀行種別による検索ができない。